東京湾が変わる! 2100年に向けた一大プロジェクトが始動

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 新型コロナウィルスの感染拡大や気候変動問題など、地球規模で取り組むべき課題に直面するなか、東京都はどのような対策を打ち出したのか。2021年4月に公表された「東京ベイeSGプロジェクト」から未来の都市像を探る。
自然とテクノロジーが高度に融合した、未来の東京・ベイエリアのイメージ図

ベイエリアから発信する都市の未来

 感染症の脅威や温暖化など、普段の生活をも脅かしかねない地球の危機を前に、世界では今、様々な対策が始まっている。そんななか注目を集めているのが、都が発表した「東京ベイeSGプロジェクト」。都市構造から社会のあり方を見直すことで危機を乗り越え、50年・100年先を見据えた持続可能都市を目指す一大プロジェクトだ。

 舞台となるのは、東京2020大会の関連施設をはじめ、職・住・学・遊の機能がバランス良く並ぶ臨海副都心エリアと、広大な埋立地である中央防波堤エリアだ。日本を代表する物流ターミナルを備えているほか、水辺空間という「自然」にも恵まれた環境にあり、プロジェクト遂行に最適な場として選ばれた。

 こうした好立地を活かして目指すのは、デジタルテクノロジーによるゼロエミッションの構築だ。プロジェクト名に記される「eSG」には、ESG本来の概念(Environment=環境、Social=社会、Governance=ガバナンス)に加え、エコロジー=ecology、経済=economy、画期的技術=epoch-making等の意味合いも含んでおり、目指すべき都市像のイメージを表している。

 「持続可能性と経済を両立したポスト・コロナにおける都市モデルを描いたもの、それが東京ベイeSGプロジェクトです」と東京都政策企画局計画部東京eSGプロジェクト推進担当課長 柳沢雅宏氏は言う。

臨海副都心エリア(地図中央)と中央防波堤エリア(下) iStock.com/Barks_japan

2030年までに目指す中期的目標とは?

 実現に向けては中期的目標を見定め、段階を踏みながら取り組む構えだ。まずは2030年に向け、最先端テクノロジーの実装を進めていく。

 具体的な施策には、5Gによる通信インフラ網の整備をはじめ、風力発電や浮体式太陽光発電といったベイエリアならではの発電システムの設置、エネルギーマネジメントシステムの構築、ZEV(無公害車)を活用した域内交通などが挙げられる。

 新技術の開発に取り組むスタートアップ企業等を巻き込み、プロジェクトを推進していく考えだ。柳沢氏は、「コロナと気候変動という2つの危機を都民の皆さんと一緒に乗り越えていきたい」と語り、官民一体となったまちづくりに意欲を見せている。

ドローンや空飛ぶクルマなど、日本のデジタル技術を駆使した大規模な実装を展開

スタートアップ企業に解放された東京へ

 DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進しつつ域内使用エネルギーの100%脱炭素化を軸に、国内外のスタートアップ企業が集積する一大拠点を形成することが目標だ。グリーンやサステナブルをキーワードにした様々なアプローチに取り組める場として開放し、生み出された革新的技術によって、ベイエリアがつねに新しい価値を発信する世界のモデル都市となることを視野に置いている。

 また、プロジェクトの成果を世界に発信することで、さらなる投資を呼び込む好循環を実現し、世界をリードする「国際金融都市・東京」の実現にもつなげたい考えだ。

 そのほか、人々にとって魅力的な都市であるためには、当然ながら暮らしやすさや過ごしやすさといった快適性の追求も欠かせない。公園や緑地の整備はもとより、あらゆる場で緑を感じられる空間を創り出す。また、グリーンテックによる水質改善の取り組みを都としても後押しし、「泳げる東京湾」を目指すなど、ベイエリアならではの魅力創出にも尽力する構えだ。

 「地球規模の危機を前にしてできることは、未来の東京の姿を想像し、実現に向けた取り組みをひとつひとつ進めていくことです。今後も幅広い意見を聞き、時代や状況の変化に合わせて迅速に対応しながらプロジェクトを推進していきたいと思います」(柳沢氏)

 人類が目指すべき都市のあり方を東京から世界へ。歴史的転換期を迎えた今、東京都が打ち出す未来の構想に大きな期待と希望が膨らむ。

東京ベイeSGプロジェクト

東京・ベイエリアを舞台に、50年・100年先までを見据えたまちづくりを構想するプロジェクト。2021年4月に「Version1.0」を策定。

文/和田全代