東京でeスポーツが急成長!企業・学校で導入が進む
【寄稿】世界中で盛り上がりを見せているeスポーツ。東京でもさまざまな大会が開催され、国内外から多くのプレイヤー、観戦客が訪れている。eスポーツは特に若者の人気が高いことから、ビジネスにおいて多様な業界から注目されている。
世界中から人を集めるeスポーツ
日本のeスポーツが世界に比べて後れを取っていると言われて数年が経ち、急成長を遂げた日本のeスポーツは世界と肩を並べるレベルまで到達した。大会規模は年々拡大し、プレイヤー人口、ファン人口も右肩上がりで増えている。
特に昨年大きく増加したのが観戦客数。2022年10月に東京ガーデンシアターで開催された「RAGE VALORANT 2022 Autumn」は2日間で1万3,000人を超える集客を記録した。オンラインでの配信も行われ、こちらも同時接続者数が41万人とスポーツの国際大会並みとなった。2023年3月31日から4月2日に東京ビッグサイト(東京都江東区)で開催された「EVO Japan 2023」には約80カ国1,500人以上が参加し、3日間で3万5,000人が来場した。
Z世代を取り込む最適のコンテンツ
これまでスポンサーによる支援によって成り立っていたeスポーツチームの運営にも変化の兆しがみえる。みずからのチームをブランド化し、さまざまなビジネスモデルを提案しているのだ。人気eスポーツチームであるクレイジーラクーンは渋谷に拠点を構え、ゲーミングスペースとオリジナルグッズを販売するストアを展開。ストアはアパレルブランドと比べて遜色のない店構えと品揃えを誇っており、単なるファングッズの域にとどまっていない。
eスポーツは若年層の人気が高いため、飲食店にとっても新たな客層の開拓の一助となっている。これまで掘り起こしが難しかったZ世代へのリーチがしやすいからだ。英国風パブのHUBは、2023年1月から3月にかけてeスポーツのパブリックビューイングを敢行。高田馬場店と西武新宿店で12日間実施し、連日の満席を記録した。もともとHUBの客層は年齢層が高めだが、eスポーツのパブリックビューイングを行った日に限っては20代が中心となり、若者とのエンゲージの高さを再確認している。
パブリックビューイングと同様にeスポーツが身近になった事例として、ここ数年でeスポーツ施設そのものが飛躍的に増加したことが挙げられる。カラオケボックスやインターネットカフェなどはeスポーツと親和性が高く、ゲーミングPCや配信設備などを強化し、新たな顧客獲得に乗り出している。まったくの異業態からの参入もある。東京メトロは遊休地を活用するため、2021年に東京都北区にeスポーツ施設「eスポーツジム」を開業。トレーニングジムとしての位置づけで、ゲームをプレイするだけでなく、プロチームによる指導やゲームを通じた英会話レッスンなども受けられる。
部活としてeスポーツを取り入れる学校も増加
教育現場でのeスポーツの広がりも著しい。「全国高校eスポーツ選手権」や「ステージゼロ」など、高校生を対象とした大会が開催され、全国から多くの高校が参戦している。2022年に行われた「ステージゼロ」には2,060校6,728人の生徒が参加した。
特に目立つのが通信制高校の存在だ。通信制ゆえに通常の部活動がしにくい環境の中、オンラインで練習、活動ができるeスポーツは通信制高校の部活として最適と言える。今や通信制高校に通う生徒数は20万人を超え、高校生全体の約7.5%となっている(出典:文部科学省「学校基本調査」、2022年)。全日制高校でもeスポーツを取り入れる学校は増えており、私立高校を中心にeスポーツ部が発足している。
北米教育eスポーツ連盟(NASEF)の日本支部であるNASEF JAPANや全国高等学校eスポーツ連盟(JHSEF)など、eスポーツを教育と結びつける試みを行う団体もある。2019年に文部科学省が開始した、生徒一人に1台のパソコンと高速ネットワークを整備する取り組み「GIGAスクール構想」とも親和性が高く、eスポーツは教育から排除される対象ではなく、利用される対象へ変化する可能性を秘めている。
このように、さまざまな観点からeスポーツは文化、ビジネス面を支える事象となるポテンシャルを持ち合わせていると言えるだろう。特に若年層への理解、繋がりを持つには、有効な手段の一つであるのは間違いない。これらの現象は全国規模で浸透しつつあるが、その中でも東京都が牽引している。小池百合子都知事が実行委員会名誉委員長を務める「東京eスポーツフェスタ」は2020年から毎年開催(2021・2022年はオンライン開催)しており、東京の中小企業とeスポーツの関わりをバックアップ。eスポーツ産業への参入障壁の排除に積極的に取り組んでいる。