Commerce Connect Tokyo:
在日外国商工会議所に聞く、東京でのビジネスチャンスのつかみ方

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 海外発のスタートアップや企業が日本でビジネスを行う際に考慮すべきポイントは何か。在日カナダ商工会議所(以下、CCCJ)のエグゼクティブディレクターである石田紀子氏が、成功の秘訣を語った。
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CCCJのエグゼクティブディレクターを務める石田紀子氏。2025年に50周年を迎える同会議所には、35業種の400人以上が所属する。虎ノ門ヒルズ(東京都港区)に所在するCCCJのオフィスにて。

--エグゼクティブディレクターとして、この2年間はどのようなものでしたか?

 私がCCCJで働き始めたのはパンデミックの最中だったので、イベントが限定的でとても静かでした。日本政府が202210月に新規入国の制限を解除してからは、カナダから多くの人が戻ってきました。対面のイベントの数が増えたのもうれしかったですね。

--CCCJのユニークな点はどんなところですか?

 私たちは共通の目標に向かってお互いを助け合う、家族のような組織です。新しい会員は、既存会員の友人や同僚であることも多いです。日本のカナダ人コミュニティは比較的規模が小さく、出入国在留管理庁によると、在日カナダ人は約1万人です。そのため、つながりを築きやすく、互いに支え合う姿勢がありますね。

--東京で素晴らしい活動をしているCCCJのメンバーについて教えてください。

 新しく設立した「マーケット・アクセス・アドバイザリー委員会(MAAC)」は、カナダのスタートアップやビジネスを日本に誘致する上で、非常に重要な役割を担うことができると考えています。その中心となっているのが、消費財メーカー、レキットベンキーザーの日本法人代表取締役シャイレッシュ・シュクラ氏です。彼自身が豊富な知識と実践的な経験を持っており、20234月に開催されたMAACフォーラムには、経済産業省の対日投資担当官や群馬県知事を招き、日本に進出する企業や経営者が知っておくべきことを議論しました。日本は外国の企業や投資家の誘致を目指していますから、MAACは貴重な存在になると思います。

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東京で開催された、MAAC初のハイブリッド形式のフォーラム。CCCJの会員に加え、一般のビジネスパーソンにも最新のビジネス動向や政府の取り組みが紹介された。Photo: courtesy of CCCJ

--カナダのスタートアップエコシムテムから日本が学べる点は何でしょう?

 スタートアップに関しては、カナダは日本より進んでいると思います。カナダ人はリスクを取る覚悟があり、失敗してもそこから学んで軌道修正をします。すでに成功を収めているカナダ企業も多くありますが、カナダから東京に進出する企業が増えてほしいですね。

--ビジネス拠点として、東京のどんなところが魅力ですか?

 東京はあらゆるものが集まっています。アジアにおけるビジネスの中心であり、友好的な人々が多い大都市だということはよく知られています。東京には活気がありますし、さまざまなビジネスチャンスがあります。東京のユニークさは、都内の各駅にも見られます。たとえば、虎ノ門や大手町などのビジネス街、ファッションの中心である渋谷など、それぞれに個性があります。また、企業間だけでなく、東京都のような行政機関とも貴重なパートナー関係を構築できます。人脈を広げ、コラボレーションを促進するビジネス環境が充実しています。

--カナダのスタートアップが東京でビジネスをスタートする上で考慮すべきことは?

 最近思ったのは、文化について知ることは始まりにすぎず、それを真に理解することが大切だということ。物事が行われる方法を観察するだけでなく、なぜそのやり方なのかを掘り下げることが重要です。たとえば、日本では意思決定に時間がかかることがありますが、それはプロジェクトが進行していないとか、障害に直面しているということではなく、それがこの国独特のビジネスの進め方なのです。また、名刺交換や手土産などの慣習は、外国人には馴染みがないかもしれませんが、全体として日本はビジネスを行う上で卓越した場所であると確信しています。豊富なチャンスと充実した起業環境が待っています。

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日本の意思決定の複雑さや商習慣を理解することが、スタートアップ企業にとって重要だと石田氏は述べる。

--東京でカナダ企業が直面する最大の課題は何でしょうか?

 技術提携や経営参加を目的とする外国からの直接投資(FDI)を日本で促進する際の、最大の課題の一つは言語の壁です。日本語は日本でのみ話されていますが、英語はグローバルな言語です。政府は、日本での起業に必要な文書の翻訳を進めているようですが、外国から進出する個人や企業にとって、会社の登記や銀行口座の開設などの手続きは依然として困難です。そこで重要となるのが、サポートをしてくれる人々や団体との関係構築であり、私たちCCCJもその役割を果たしています。会員主導の組織なので、加入すれば地域のリソースにアクセスでき、CCCJの支援も受けることができます。

--カナダ企業や起業家の支援において、東京都に何を求めますか?

 文書の多言語化です。そこが非常に大きなハードルなのです。また、中小企業への財政支援を拡充してほしいですね。利益が大きくない場合でも、中小企業は日本の税制に合わせなければならず、大きな支障となっています。

--CCCJの今後のイベントや取り組みについて教えてください。

 私たちの活動の3本柱は、イベント、コミュニケーション、アドボカシー(支援)です。会員は常にネットワーキングに励んでいるので、イベントが開催できるようになったのはとても大きなことです。ゴルフコンペTPP カップや、「メープルリーフ・ガラ」の久しぶりの開催は、皆がとても楽しみにしています。コミュニケーションについては、ウェブサイト、季刊誌『ザ・カナディアン』、週刊ニュースレターの配信、SNSを活用しています。アドボカシーの面では、東京都や在日カナダ大使館、日本の官公庁や経済団体、各国の在日商工会議所と定期的に連絡を取り合い、会員がこの素晴らしい都市で成功するための適切なツールの提供をいっそう充実させていく必要があります。

在日カナダ商工会議所(CCCJ) www.cccj.or.jp
取材・文/マシュー・ハーノン
写真/アンナ・ペテク
翻訳/長沢光希