Next Generation Talent:
豊富なプログラムで留学生の期待に応える東京都立大学

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 東京都立大学(都立大)は、東京都が運営する唯一の総合大学で、世界中から優秀な人材を集めるため、国際感覚やグローバルな視点を育むカリキュラム作りに力を入れている。そのカリキュラムの中には「東京グローバルパートナー奨学金プログラム」と「グローバル教養講座」がある。東京グローバルパートナー奨学金プログラムを利用し、ここで学ぶインドネシア出身の留学生ラハユ・ペルティウィさんに話を聞いた。
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将来は東京で研究者として活躍したいというラハユ・ペルティウィさん。東京都八王子市にある東京都立大学南大沢キャンパスの中庭にて。

周囲の親切と共にある学生生活

 「私は東京都立大学で勉強することが大好きです」。八王子市にある緑豊かな景色が眺められる教室でペルティウィさんは話し始めた。東京都立大学には、理学部生命科学科や都市環境科学研究科など、英語で講義が行われる幅広い分野の専攻科目があることが特徴だ。

 インドネシアの生物学者である彼女は茨城大学で短期研修に参加した後、常に日本へ戻ることを考えていて、日本の奨学金を申請した。彼女が利用している「東京グローバルパートナー奨学金プログラム」は、学生が留学により習得した知識や技術を活用し、東京ひいては世界の発展に貢献することを目的としたプログラムで、アジア諸地域や東京都の姉妹友好都市、東京都立大学の国際交流協定校からの留学生を対象としている。学生は授業料や往復航空券が無償となるほか、月額15万円の奨学金が支給される。

 「私が日本の大学を探していたときに、茨城大学の指導教員が都立大の大学院奨学金への申請を提案してくれました。そのプログラムを知ったときはうれしかったです。都立大の修士課程はとても楽しかったので、博士号もここで取得しようと決めました。日本には奨学金の選択肢がたくさんあるので、留学を考えている人は人脈などのネットワークをフル活用して探すことが重要だと思います」

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イスラム教徒のペルティウィさんは、ハラール(戒律による食事の規定)やサラート(毎日の礼拝)があるが、東京で困ったことはなく、他の国と比べて暮らしやすい街だと感じているという。

 現在、ペルティウィさんは東京都立大学の「進化遺伝学研究室」で最先端の研究を行っている。「研究室は設備が整っているうえに、英語を話す3名の指導教員がいます。教授陣のサポートのおかげで私は英語で論文を書き上げることができました」

 「来日する前は言語の面で不安がありました。日本人はあまり英語を話さず、外国人との交流をしないと聞いていたからです。でも、実際に来てみると、そうではないことがわかりました。都立大では、たくさんの素晴らしい友人ができました。彼らは英語を話し、優しく接してくれます。また、イスラム教徒である私の慣習を尊重しサポートしてくれます。私は毎日決められた時間に礼拝をしなければなりませんが、大学で出会った友人たちはみんな、礼拝のための静かな場所を見つけてくれます」

 彼女によると、東京はハラールフードを入手しやすく、日本ではサポートを受けながら安全に過ごすことができると実感しているという。東京都立大学からの奨学金を生活費にあてることができるため、学業に専念でき、余暇には友人との交流を楽しむ余裕もあるようだ。将来は日本で研究者になりたいという彼女は、大学などが取り組んでいるグローバル化を進めるため、世界に目を向けている新しい世代の学生に刺激を与えたいと語ってくれた。

著名な識者から学べる特別講義「グローバル教養講座」

 東京都立大学では、「東京グローバルパートナー奨学金プログラム」に加え、国際社会で活躍できる人材の育成に向けた取り組みを行っており、ペルティウィさんのような留学生たちの間で注目が集まっている。その一つが「グローバル教養講座」だ。東京都のグローバル教育に力を入れる取り組みで、講義は主にオンライン形式で行われている。これまでに登壇した講師には、歴史学者・社会人類学者のエマニュエル・トッド氏や、世界的ベストセラー『サピエンス全史』の著者であるユヴァル・ノア・ハラリ氏など、幅広い分野で活躍する著名人が名を連ねる。

 東京都と東京都立大学は、若者たちに新しい国際感覚を身につけてもらいたいと願いを込めて取り組んでいる。東京都が策定したグローバルな課題や急速な少子化の進行などに対応するための「『未来の東京』戦略」には、この講座に通じる考え方や提案が盛り込まれている。グローバル教養講座を担当する小黒健太郎事業推進担当課長は、このプログラムが次世代を担う日本人の学生にとってもクリティカルなものの見方や問題解決力を養うための気づきとなり、世界をリードする都市として、東京の国際競争力を高めることにつながることを期待しているという。

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グローバル教養講座のウェブサイト。講義は字幕付き。過去の講義は、誰でも無料で視聴できる。Photo: courtesy of 東京都立大学

伝統とのバランスがとれた最先端の都市で送る学生生活

 今後予定されているグローバル教養講座のテーマには、AI、ChatGPTや持続可能な開発などがある。東京都立大学は、コロンビア大学などの世界をリードする教育機関に所属する著名な研究者や注目される分野で活躍する経営者など、最新のテーマに関わる識者を集めている。大学側も未来のための取り組みを重視している。

 だが、日本には先駆的な考え方や最先端の施設があるだけではない。ペルティウィさんは言う。「来日する前は高層ビルと人混みばかりの東京を想像していたけれど、実際には街のあちこちに小さな伝統がいまも息づいていることを知って、うれしくなりました。浅草の浅草寺周辺の古い町並みや通学路で通りかかる鳥居など、日本らしい風景を見つけると、東京のような場所はどこにもないなと実感するのです」

ラハユ・ペルティウィ

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インドネシア生まれ。東京都立大学で修士号を取得。現在は、「東京グローバルパートナー奨学金プログラム」で引き続き東京都立大学大学院に在学中。

東京グローバルパートナー奨学金プログラム

東京都立大学大学院への進学を希望する優秀な留学生に向けた給付型プログラム。支援内容には入学料、授業料、往復航空券のほか、毎月給付される奨学金が含まれる。
https://www.thrf.ic.tmu.ac.jp/tokyogp/

グローバル教養講座

主にオンライン形式で行われる英語の講義は、日本語字幕付きで配信される。世界で活躍する著名な学者をはじめ、さまざまな分野で活躍する日本の先駆者たちから最先端の考えを学ぶことができる。登壇者にSiriの共同創設者でエンジニアのアダム・チェイヤー氏や建築家の妹島和世氏らも名を連ねている。
https://global-lecture.houjin-tmu.ac.jp

東京都立大学

https://www.tmu.ac.jp
取材・文/氏家ジェシカ
写真/椎木・フーリオ・浩司
翻訳/スヴェンソン・華子