Next Generation Talent:
柔軟に学べる環境が魅力、東京工業大学のGSEPコース

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 「The Global Scientists and Engineers Program (GSEP)」は、すべて英語で講義を行う東京工業大学(東工大)融合理工学系の学士課程。インド国籍のレイチェル・ドゥヴァッシィ・ムランカトゥパランビルさんは、ゲームデザインに携わることを夢見るGSEPコースの2年生だ。
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ムランカトゥパランビルさん。柔軟なコース選択と実社会とつながれることが東工大GSEPの魅力だという。

 ムランカトゥパランビルさんが履修するGSEPは、国際社会が抱えるさまざまな問題の解決や新たな価値創出のために、科学技術の分野にとどまらない包括的なアプローチができる人材を養成している。GSEPの学生は、学問の領域などにとらわれず、イノベーションや自由な発想、そしてコミュニケーションスキルを高めることができる。GSEPの講義はすべて英語で行われるため、海外からの留学生でも入学資格を満たしていれば、日本語能力の有無にかかわらず学位を取得できる。

 「現代社会では、ほとんどの仕事で複数分野の能力が求められるため、東工大の学際的な研究は魅力的です。まさに世界と学問がつながっているのです」とムランカトゥパランビルさんは話す。

 また、各学生に合わせたプログラム構成ができる点を彼女は評価している。「新しいことに興味を持ったら、それを学習に取り入れられるので、自由度がとても高いと感じます」。留学当初は航空宇宙産業に関わる職業を考えていたが、最近ではゲーム開発への興味が強くなっているそうだ。

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ムランカトゥパランビルさんはクラスメイトや東工大体操部のメンバーととても仲がいいそうだ。

ゲームとのつながり

 ムンバイで過ごした子ども時代、彼女が最初に出合った日本文化がテレビゲームだったという。そして将来は任天堂のような会社で働きたいと夢を抱いた。「子どもの頃は任天堂のゲームでよく遊んでいました。ゲームは友だち作りに役立って、夜な夜な一緒に遊びました。実は今でも友だちとゲームをするんです!任天堂のゲームは、わかりやすい設計なので、ゲームに慣れていない人でも楽しめると思います」

 ムランカトゥパランビルさんはインドの大学に入学したが、厳しい学究環境からひと休みして別の文化圏で学生生活を送りたいと考えていた。数年間、日本語を勉強していたこともあって、先生のサポートを受け、東京での進路について調べ始めた。

 「私は日本語能力試験(JLPT)のレベル3でしたが、専門用語のことを考えると、理工学をすべて日本語で学ぶことに不安がありました。東工大に英語で受講できる柔軟性の高い学士課程があることを知り、とても興味を持ちました」と振り返る。

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東京の暮らしにすぐに馴染めたという。

友人たちと過ごす、充実のキャンパスライフ

 ムランカトゥパランビルさんは、GSEPのクラスメイトと強いつながりを感じている。「ライバル心を持つこともありますが、私たちはいつも一緒に学び、助け合っています。馴染みのない文化の中で学習する留学生同志、互いを思いやる気持ちが強いのだと思います」と、その絆が日々のグループ学習の賜物だという。

 彼女にとって、体操部もまた大事な交流の場であり、日本人の友だちの輪を広げる場になっている。インドで高校まで体操部に所属していたそうだが、日本で部活動に参加することは新鮮な経験だったという。「日本の部活動の部員は、とても協力的でまるで小さな家族のようです。お互いの様子を気にかけ、学内にとどまらず、共通の趣味を持つほどの絆を築いています」

挑戦が成長のチャンスへとつながる

 東京での留学生活は、彼女にとって挑戦であると同時に成長の機会となった。最初は学生寮で過ごしたが、後に一人暮らしを始めた。一人暮らしの部屋は学生寮よりも家賃が高いため、アルバイトも始めた。インドでは、普通大学生はアルバイトをしないそうだ。彼女はカフェでのアルバイトを通じて、日本のサービス業に必要な敬語を学んだ。敬語は日本の若者にとっても難しいもの。習得すれば、就職活動にも役に立つ。

 海外のメディアが報道する東京は、日々の生活に追われる人ばかりの街のように映ることが多いが、実際はそうではないとムランカトゥパランビルさんはいう。「最初は圧倒されるかもしれませんが、しばらくすると自分の居場所が見つかって、東京を"故郷"と思えるようになります。日本語に自信がなくても心を開いて人と話してみてください。日本人は親切にあなたの話に耳を傾けてくれますよ」

レイチェル・ドゥヴァッシィ・ムランカトゥパランビル

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インドのムンバイ出身。東京工業大学のGSEPプログラム2年生で、卒業後はビデオゲーム業界への就職を目指している。大学では体操部に所属。趣味は、ドラム演奏とオリジナル漫画を描くこと。

Global Scientists and Engineers Program (GSEP)

東京工業大学で初の英語による学士課程教育プログラム。講義はすべて英語で進められ、日本語が分からない留学生に開かれている。工学の学士号を取得できる。
www.titech.ac.jp/english/admissions/prospective-students/explore-undergraduate/gsep
*英語サイト

東京工業大学(東工大)

www.titech.ac.jp
取材・文/橘高ルイーズ・ジョージ
写真/椎木・フーリオ・浩司
翻訳/スヴェンソン・華子