都市養蜂を通して、自然と共生する持続可能な街づくりを目指す

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 世界有数のショッピングタウン、東京・銀座。実はここから日本の都市養蜂が始まったといわれている。都市養蜂を通じて、東京の豊かな自然環境について国内外に発信し、人と人、人と街をつなげようと奮闘する「銀座ミツバチプロジェクト」の活動に迫った。
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老舗百貨店やラグジュアリーブランドの旗艦店が立ち並ぶ銀座は外国人観光客にも人気のショッピングエリア。Photo: iStock

都会はミツバチにとって住みやすい場所

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銀座のビルの屋上にある、ミツバチのための庭「ビーガーデン」。初春には菜の花、桜、5月はネズミモチ、6月はリンデン、8月はホーリーバジルなど、年間を通してミツバチの集蜜に適した植栽になっている。

 市街地のビルの屋上でミツバチを飼う「都市養蜂」が、都市緑化や生物多様性の保全・回復、地域の活性化につながるとして国内で注目を集めている。日本の都市養蜂の草分け的存在といわれているのが、2006年に中央区銀座3丁目にある紙パルプ会館の屋上で養蜂を始めた「銀座ミツバチプロジェクト」(以下、銀ぱち)だ。養蜂は緑あふれる山の中で行われるというイメージが強いが、都市部は大きな公園や街路樹などが点在し、環境への配慮から農薬散布が少ないため、養蜂に適した環境だとされている。

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地上45メートル11階建てのビルの屋上にある銀座ミツバチプロジェクトの養蜂場。最盛期には約25万匹のミツバチを飼育している。

 銀ぱちはミツバチの蜜源を増やすために屋上緑化を推進している。屋上緑化はヒートアイランド現象の緩和にも有効といわれており、銀座のある中央区の緑化助成制度とも重なったことから、区内の商業ビルや百貨店の屋上に次々と「ビーガーデン」が誕生。緑が増えたことにより、銀座に昆虫が増え、それを捕食するツバメなどの野鳥も集まるようになった。また、緑地を維持するために定期的に行われる種まき・苗植えや収穫などのイベントは、職業や世代を超えた新たなコミュニティ形成の場になっている。

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ミツバチは巣箱から約3キロメートル圏内が活動範囲。銀ぱちのミツバチはビーガーデンや皇居、浜離宮、日比谷公園などの花や街路樹から蜜を集めている。

新たな文化を生み出してきた街・銀座

 銀ぱちの養蜂場は銀座に3カ所、丸の内に2カ所あり、2022年のはちみつの総生産量は約2トン強。採取したはちみつは銀座の百貨店やレストラン、ホテル、バーなどに卸され、スイーツやカクテル、化粧品などに使用されている。希少な銀座はちみつを使ったこれらの商品はおみやげとして人気が高い。

 プロジェクトの開始当初から周辺の飲食業界は、「銀座ではちみつが採れたらおもしろい」と都市養蜂に賛同し、商品開発にも積極的だった。銀ぱちの養蜂担当の福原保氏は「流行・文化を生み出してきた銀座で始めたからこそ、おもしろいプロジェクトだと協力してくれる人が多く、事業を拡大できたのだと思います」と話す。

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左から銀座はちみつの「百花蜜」と「さくら蜜」。季節によって集蜜する花の種類が変わり、はちみつの色や味わいも変化する。

東京から世界へ、都市養蜂を広げる

 銀ぱちでは養蜂、屋上緑化事業のほかに、地域活性化、環境教育にも注力している。たとえば環境教育の取組としては、小学校への出前授業や屋上養蜂場の見学会、講演会を定期的に開催し、ミツバチの生態や都市の環境などについて伝えている。

 海外からの視察も多く、ラグビーワールドカップ2019の際には観戦とあわせて視察に訪れる人もいたという。「アクセスの良さが、国内外から見学者が多い理由の一つだと思います。養蜂場の見学と、観光やショッピングを組み合わせられるのも銀座という街だからかもしれません」と福原氏。

 銀座で始まったミツバチプロジェクトは現在、国内100カ所以上、韓国・ソウルや台湾・台北等にまで広がっている。20234月には、一般社団法人ミツバチプロジェクト・ジャパンを発足。「都市養蜂を通じて地域に根差した循環型社会を目指すミツバチプロジェクトをもっと国内外に広めるとともに、東京が自然と共生する都市を目指して動き始めたことを発信していきたいです」と福原氏は言う。人と人、人と街をつなぐミツバチプロジェクトの今後の展開にも期待したい。

銀座ミツバチプロジェクト

https://gin-pachi.jp
取材・文/小野寺ふく実
写真/伊藤智美
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