常に話題沸騰の新宿歌舞伎町は、進化を続ける東京の象徴だ
【寄稿】東京の街歩きを日課とし、取材の機会も多い中で、日々そこかしこで急速に変わりゆく様を感じる。とりわけ大きな変化を覚えるのが、歌舞伎町をはじめとする新宿界隈だ。この街を入り口に、さらに変わりゆく東京のこれからを考えてみる。
厚みを増す「新宿の街」
2023年4月に西武新宿駅近くに誕生した東急歌舞伎町タワーは、変化を続ける新宿の象徴だ。客引きのトラブルや治安の悪化など、かねてより「負の側面」も耳目を集めていた歌舞伎町。しかしこのタワーの出現で、このエリアは大きく変わるのではないか。隣接する800平方メートル超の歌舞伎町シネシティ広場では、音楽ライブやトークショー、パブリックビューイングなど多様なイベントに使われていて、街全体の雰囲気も足を運びやすいものになったように感じる。
また、タワー上階からの景色も素晴らしい。2015年の春に新宿東宝ビルに登場した巨大なゴジラも、小さく背中から丸見え。タワー内の2つのホテル両方に実際に泊まり取材したが、眼下に広がる新宿御苑や代々木公園、そして先の国立競技場。東京が緑多き街だと再確認できる。実に壮大で、東京のランドマーク、東京スカイツリーまで一望できる。改めて"東京"に惚れ込む。さらに渋谷方面を見ても、池袋方面を見ても、明治通りの眺めが素晴らしい。しばしばキラキラと輝いている。
この地域は、街としても面白い。タワーから少し北に歩くと、韓国料理、コスメ、韓流タレントをウリとする店が集中しており、大勢の若者たちが集まっている。職安通りと大久保から新大久保に広がるコリアンタウンだ。合わせて見ると、新宿の街が厚みを増した印象だ。
昼も夜も、外国人観光客の需要を満たせるエリアへ
東京に押し寄せる世界からの外国人観光客にとって、新宿はそもそも魅力ある存在だ。街全体が巨大な商業エリア。伊勢丹、小田急、京王などの大手デパートに加えて、家電量販店も軒を並べる。変わる歌舞伎町とコリアンタウン。高層ビル街の西新宿エリアと一体として考えると、かなり広い面積だ。銀座の何倍にも及ぶ。
日本に来る外国人観光客は、「日本は景色も食事もおいしいが、夜の時間の過ごし方の選択肢が少ない」としばしば不平を漏らす。旅館に入ったら夜静かに団らんを楽しむ日本人と違って、彼らはバーやクラブ、ダンスにくり出したがる。実際、夜の街ですれ違う外国人観光客は実に多い。国籍もさまざまだ。そうした需要を新宿が満たせるのではないか。さらに選択肢が増したからだ。
新宿ばかりでなく東京の街は変化し続け、止まることを知らない。虎ノ門には、新しい東京メトロ虎ノ門ヒルズ駅も出来たし、2023年10月には虎ノ門ヒルズ ステーションタワーが開業するなど商業ビル群がまだ増えつつある。神谷町や六本木も新しい街として再生しつつある。そして東京駅周辺も東京ミッドタウン八重洲が2023年3月に登場、日本橋口には2027年に向けて日本一の高層ビル、トウキョウトーチの建設も進む。街の魅力は多い方がいい。私は豊洲にもよく行くが、日本人も外国人観光客も実によく訪れているのを感じる。そこには2024年春に、万葉倶楽部株式会社が手がける温浴施設(箱根・湯河原温泉の湯を運搬して提供)が完成する。きっと面白いエリアになる。
世界の中で、東京ほど「ヘソ(中心)」が多い街はないのに、その魅力は増殖中である。その中で10年後の新宿はどうだろう。多分、まだ驚くほど変わる。いつだって東京は進化の途上なのだ。