子どもの習い事送迎サービスで解決する、子育て世帯の課題
共働き世帯を救う新たなサービス
豊田氏が代表を務めるhab株式会社が提供するのは、エリアが近い習い事に通う子どもたちが相乗りして目的地へ移動する、新しいソリューションだ。
子どもたちが乗降する時刻や場所から、最適な運行ダイヤとルートを自動で設計、親やドライバーへアプリを通じて情報を配信する。車両のリアルタイムの位置情報と乗降時の通知は、LINEの「hab」公式アカウントで受け取ることができる。
豊田氏は複数の大手企業を経て、2020年に東急電鉄の親会社である東急株式会社へ入社。MaaS(利用客が複数の交通機関を効率よく便利に使えるようにするシステム)チームに所属し、新たな移動サービスを提供するアプリを開発する過程で、ある課題が豊田氏を起業へ駆り立てた。
「東急線沿線の利用客の声をヒアリングする機会があり、幼い子どものいる子育て世帯が習い事の送迎に悩んでいることが分かりました」。
送迎バスを利用できる習い事も一部あるが、ほとんどの場合は親が子どもの送り迎えを行っている。仕事との調整が必要になる場合もあり、大きな負担になっていたのだ。こうした親たちの悩みの声は、豊田氏自身の子どもの頃の記憶と重なった。豊田氏も自分の習い事の送迎のため、共働きの親がいつも苦労している姿に子どもながら気づいていたのだ。
「たまたま出会った送迎の課題と自分のキャリアがちょうど重なったことで、これは人生を賭けて挑戦したいと思いました」。こうして、東急の社員だった豊田氏は、習い事に通う子どもたちを相乗りさせて、目的地に送り届けるシェアリングサービスを提供する会社「hab」を副業として創業するに至る。
豊田氏は、2022年に東京都主催の起業コンテスト「TOKYO STARTUP GATEWAY 2022」で最優秀賞を受賞。2023年3月に実証実験を行うと、サービスの導入を待ち望む声が多く寄せられたという。現在、2024年1月の本格的なサービス開始に向けて準備を進めている。
東京には起業家をサポートする土壌がある
豊田氏が順調に事業化へのステップを歩めたのは、「TOKYO STARTUP GATEWAY」で起業を目指す同期やメンターたちとの出会いがあったからだ。「同期とはお互いに相談や進捗を報告し合っています。彼らとともに切磋琢磨することで、起業時の情熱を持ち続けられますし、お互いの刺激にもなっていますね。また、メンターは株主として支援してくださったり、事業に対する専門的なアドバイスをくださったりと、スタートアップの進むべき道を示してくださいました」
豊田氏は事業への想いをこう話す。「たくさんのユーザーの声を聞いて、小さな課題をとらえること。そして、それをどう解決できるかを考えるという、一歩を踏み出し続けること」。東京から生まれた新たな若手起業家の挑戦は、まだ始まったばかりだ。
豊田洋平
hab株式会社
https://habshuttle.comTOKYO STARTUP GATEWAY
https://tokyo-startup.jp写真/伊藤智美