世界で躍動するブレイカーが見据えるパリ五輪
超絶技が繰り広げられる即興ダンスバトル
スケートボードやBMXとストリート生まれの競技が正式種目となった東京2020オリンピック競技大会。特にスケートボードは日本の選手が金メダルを獲得するなど大活躍し、これら競技の認知度を高め、競技人口の増加も期待されている。2024年10月には、東京2020大会のレガシーを継承する、有明アーバンスポーツパークも開業する。そして、次に注目を集めているストリート発の競技が、パリ五輪から正式種目となるブレイキンだ。
ブレイキンは、DJがプレイする曲に合わせ、創造性とスキルを選手が1対1で競い、審査員のジャッジにより勝敗が決まる競技だ。五輪の出場枠は各国男女各2名ずつ。日本は、2018年のユースオリンピックで男女とも金メダル獲得、さらに多くの国際大会で優勝を飾るなど、強豪国として知られる。その中で出場はもとよりメダル獲得をも期待されているのが、"Shigekix"こと半井重幸選手と"Ami"こと湯浅亜実選手だ。
日々の積み重ねがつながるパリの舞台
ふたりはブレイキンの魅力を「ダンススタイルに制約が無く、個性を自由に表現できるところ」と話すが、自身のスタイルで大切にしていることは、異なるようだ。
「僕の場合、ひとことで言えばダンスを音楽的に表現する『ミュージカリティ』。刀のように磨き上げたモーションを、違和感なく音楽を融合させることです。観客に『この音楽でこんな動きができるの!?』って驚いてもらえたら嬉しいです」と、笑顔で答えるShigekix選手。一方のAmi選手は「いつも意識するのが『綺麗で格好良く!』ということ。いかに高度な技でも、細部まで完璧でなければステージ上では披露しない。完璧になるまで練習して、自然な動作として身につけて本番に挑んでいます」と、力を込める。
ブレイキンへ強い想いを抱くふたりだが、パリ五輪は冷静に見据えている。Shigekix選手は「なにかを仕込もうとか小手先のことはしません。パリまでの1試合1試合に向き合い、結果を噛み締めながら成長していきたいです」、Ami選手も「先のことを考えすぎて不安になるよりも、日々の練習や目の前の大会に全力を尽くすだけ。そのひとつひとつが今後のステップにつながると思います」と静かに語ってくれた。
東京でも盛り上がる、都市型スポーツ
スケートボードやBMX、そしてブレイキンは、広い場所を必要とせず、個人で気軽に楽しめる「アーバン(都市型)スポーツ」と呼ばれる。順位だけでなく、個性を活かした表現を競うスポーツとあって、東京でも若い世代を中心にその人気は右肩上がりだ。また世界最高峰の1on1ブレイキンバトルイベント「Red Bull BC One」の日本大会などブレイキンの競技イベントから、東京都も助成する国内最大級のストリートダンスの祭典「Shibuya Street Dance Week」まで、さまざまなイベントが目白押しだ。
ブレイキンをはじめとした都市型スポーツの人気は、パリ五輪でのShigekix選手やAmi選手の活躍により、さらに盛り上がっていくに違いない。
Shigekix
Ami
写真/榊水麗