アート×先進テクノロジーが問う、東京の都市課題との向き合い方
市民やアーティストが集まり、東京に社会実験を引き起こす拠点がCCBT
シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT](以下、CCBT)を運営する、東京都と公益財団法人東京都歴史文化財団は、オーストリアのリンツ市で約40年にわたって、アート、テクノロジー、社会をつなぐ取り組みを行っている文化機関アルスエレクトロニカと2023年4月より連携協定を締結、同機関で国際的に活躍する小川秀明氏がCCBTのクリエイティブディレクターに就任した。
小川氏は言う。「CCBTは美術館でもギャラリーでもありません。市民やアーティストが集まって、アートとテクノロジーを活用し、東京に社会実験を引き起こす拠点がCCBTです。東京という都市を捉え直し、街を未来の実験区として、複数形の『Futures』を探ります」
先進テクノロジーに対して、アートが担う役割
小川氏は続ける。「アートは、(人や社会に)課題を問いかけたり、対話を生み出す力を持っていると思います。日々進化していくテクノロジーをただ消費するのではなく、アートの力で意味を持たせ、(その結果)生まれたイノベーションを、東京という社会にどのようにインストールしていくのか。その策を講じていくためのプラットフォームこそがCCBTなのです」
市民、アーティスト、行政をつなぐプログラム
CCBTのコアプログラムの一つに、毎年公募により選出した5組のクリエイターがCCBTのパートナーとなり創作活動を行い、そのプロセスを市民に開放する「アート・インキュベーション・プログラム」がある。
2022年度には、渋谷の街を舞台にしたXR技術を用いた都市型展覧会の開催や、子どもから大人までが協働し世界にひとつだけの運動会を共創した『未来の東京の運動会』、「都市の地下空間」をテーマに、巨大な地下調節池などをスケートボーダー達が探索し、土木や建築をストリートの視点で切り取る作品の展示や、関連ワークショップなどを展開。2023年度は141件の応募があり、選定された5組のCCBTアーティスト・フェローが、それぞれの活動をスタートしている。
「CCBTはホワイトキューブ(現代美術用語で、美術館やギャラリーにおける展示空間)のためのアートではなく、都市の変容を促すために、社会に向けたアートを生み出すことを目指しています。行政システムの中に、あえて批評的な性質をもったアートを抱え込み、都市の課題解決のための戦略やポリシーを市民とともに考えていく。ここでのプロジェクトの一つひとつが、社会を巻き込んだ大きな都市実験であるという考え方もできるでしょう」
CCBTが取り組む実験の数々は、他都市でも応用できるイノベーションのための気づきやきっかけとなるだろう。東京が国内外のデジタル・クリエイティブの拠点となるべく、CCBTの担う役割に期待が高まる。
シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]
https://ccbt.rekibun.or.jp小川秀明
写真・イメージ提供/シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]