現代アートが伝える、歌舞伎町の魅力とは?
タワー内に展示中の現代アート作品は190点!
東急歌舞伎町タワーは、地上48階、地下5階の建物で、2つのホテル、BELLUSTAR TOKYO, A Pan Pacific Hotel(ベルスター トウキョウ、ア パン パシフィック ホテル)とHOTEL GROOVE SHINJUKU, A PARKROYAL Hotel(ホテル グルーヴ シンジュク、ア パークロイヤル ホテル)、エンターテインメント&レストラン(映画館や劇場、ライブホール、レストラン、バーなど)を有する国内最大級の超高層複合施設だ。土地の再開発にあたった東急株式会社は、戦後、大衆娯楽文化の発信地として発展した歌舞伎町が、今後は世界のエンターテインメントシティとしての存在感を高められるよう、計画を推進。計画の大きな柱となったのがタワー内の随所に展示された現代アート作品だ。
たとえば、ホテル グルーヴ シンジュクには、3人の作家、玉山拓郎氏、開発好明氏、鷲尾友公氏がそれぞれ3室ずつ手がけた客室「グルーヴルーム」を用意。滞在中は、作家の作品世界に思う存分、入り込むことができる特別な空間となっている。
アートプロジェクトを担当した同社新宿プロジェクト企画開発室の河添麻以氏に話を聞いた。
「本施設は新宿・歌舞伎町の文化を体験できる施設として、この街が紡いできた歴史・文化・できごと・記憶・人の営みを軸に据え、計画が進められてきました。その一つとして、若手から巨匠まで幅広い層の日本人作家26組に制作を依頼し、新宿・歌舞伎町の歴史や文化とのつながりがクリエーションのベースにある現代アート作品190点をタワー内に展示することにしたんです。190点のうち175点はこのプロジェクトのために新たに制作されたもの。地域の特徴を表現したアート作品を展示することで、地域の魅力や発信力をさらに高め、街を訪れる楽しみを提供することを目指しています」
同プロジェクトの監修として、国内最大規模の国際芸術祭「あいちトリエンナーレ」で地域との親和性が高いアート展示を長年経験してきた愛知県美術館館長の拝戸雅彦氏と東京・東品川の現代アートギャラリー、ANOMALY(アノマリー)が参画した。
商店街や訪問客とともに街を盛り上げる
開業前には、地元の歌舞伎町商店街振興組合や歌舞伎町二丁目町会と連携し、「歌舞伎町ブルーフェスティバル」を開催した。X(旧Twitter)で「#好きがつないでくれた」キャンペーンを展開。2023年4月6日から27日まで「#好きがつないでくれた」の投稿数に応じた青色のフラッグが街を彩ったほか、いつもは赤色の歌舞伎町一番街アーチが青色に点灯した。青はかつて小川が流れ、水が豊かな土地だった歌舞伎町をイメージした色だという。
開業後のにぎわいは予想をはるかに上回るもので、1階のタワー入り口に、成田空港、羽田空港との直通バスが発着することから、海外からの旅行客も多い。
2階エントランスにある大きな台座の上に展示したのは、人気アーティスト集団Chim↑Pom(現・Chim↑Pom from Smappa!Group)の作品『ビルバーガー』だ。シネシティ広場からエスカレーターに乗ってすぐという立地の良さから、待ち合わせスポットとしても注目度が急上昇。いつも大勢の人でにぎわっている。
多種多様な文化を育む歌舞伎町を探索
今後は、施設内のアート見学と歌舞伎町の街歩きを連動したツアーもスタートする予定だ。タワー内の現代アート作品は、ホテルや劇場、ライブホールなどを利用した人だけにしか見ることができないものも多いことから、ツアーが実現すれば、誰もがより多くの作品を楽しむことができるようになる。
河添氏は最後にこう締めくくった。
「歌舞伎町は、さまざまな顔をもつところも大きな魅力です。昼と夜ではまるで雰囲気が違いますし、大規模施設と個人店主が経営する小さな店が共存しています。来るものを拒まず、すべての人を受け入れ、人間が本音で生きる街。ここは古くから多様性が認められてきた街なんです。だから人を惹きつけるのでしょう。現代アートが、歌舞伎町の魅力を異なる角度から発信することで、これからさらに多くの人にこの街の魅力が伝わることを期待しています」
東急歌舞伎町タワー
https://www.tokyu-kabukicho-tower.jpホテル グルーヴ シンジュク、ア パークロイヤル ホテル
https://www.panpacific.com/ja/hotels-and-resorts/hotel-groove-shinjuku.html
ベルスター トウキョウ、ア パン パシフィック ホテル
https://www.panpacific.com/ja/hotels-and-resorts/bellustar-tokyo.html
写真/金子怜史