地球の危機を自分事に捉え、若者の未来を共創する
危機感を持つ世界の若者が模擬COPを設立
2023年11月30日から12月12日まで、COP28(国連気候変動枠組条約第28回締約国会議)がアラブ首長国連邦・ドバイで開催される。COPは1995年から行われている、地球温暖化対策を協議する国際会議だ。
2021年にイギリス・スコットランドのグラスゴーで開催されたCOP26は本来2020年に開催予定だったが、コロナ禍で1年延期となった。2019年からロンドンの大学院で学んでいた佐座マナ氏は、自分の未来にも直接関わる気候変動問題について、各国が協議する場が延期となったことに危機感を抱く。そこで、佐座氏ら世界の環境問題の若手専門家が中心となり、若い世代や開発途上国の人々の声がCOPに届く仕組みをつくろうと模擬COP「Mock COP」を立ち上げた。
Mock COPには、環境問題に取り組んでいる140カ国330名の若者(11~29歳)が参加。「若い世代がCOPで協議したら、どういう政策をつくるのか」をテーマにオンラインで話し合いを重ねた。佐座氏はMock COP26にグローバルコーディネーターとして参画。若者の意見をまとめて、COP26と各国首脳に「18の政策提案」を行い、世界中の注目を集めた。
さらに、Mock COPは若い世代からの政策提言にとどまらず、政策の実現まで携わることを掲げた。若者が中心となって政策実現に向けて行動し、大人がそれをサポートするシステムをつくった点でも大いに評価され、COP26では交渉の場への若者の正式な参加が実現した。
国際都市・東京から発信する意義
2021年に一般社団法人SWiTCHを立ち上げ、現在は東京・渋谷を拠点に活動している佐座氏。設立のきっかけは日本への危機感だったという。
「諸外国から日本は気候変動問題に対して、高いレベルで目標設定をして、世界にインパクトを与えるぐらいの役割を担ってほしいと期待されていました。しかし、日本は難易度が比較的に低い目標を設定することが多く、その期待も徐々に薄くなり、危機意識の低い国と思われ始めています。日本の国際的な立ち位置を上げるためには、一人ひとりの環境問題に取り組む意識を変えていく必要があると思います」
さらに渋谷にオフィスを構えた理由について、「渋谷という街は、世界中の人に知られています。今の渋谷は多くの人が行き交う忙しそうな街のイメージですが、ここがグリーンな街に変わったら、世界に大きなインパクトを与えられると考えたからです」と語る。
「日本の若者は社会を変えられると思っていないことが問題だと感じています。『自分で国や社会を変えられると思うか』という調査で『思う』と答えたのは、日本は18.3%ですが、アメリカは65.7%、イギリスは50.7%でした*。 地球環境問題は待ったなしですから、若者が社会を変えていると実感できる活動の場を増やすことが大切です。」
佐座氏は現在、意識改革を進めるために教育に力を入れている。渋谷区立の小学校を中心に、環境問題に関するワークショップを行っているほか、誰もが気候変動についての理解を深めることができるオンライン教材「チャレンジ1.5℃オンラインコース」を無料で提供している。
日本の若者、大人も環境問題を最優先課題と捉えて急いで実行に移す、それは国際的ポジションを上げることにもつながる。そのために注目度の高い都市、東京・渋谷から世界へ提言し続けることが重要なのだ。
佐座マナ
一般社団法人SWiTCH
https://switch.biohttps://www.nippon-foundation.or.jp/who/news/pr/2019/20191130-38555.html
取材・文/小野寺ふく実
写真/伊藤智美