パラ夏冬二刀流・村岡桃佳が語る、誰もが暮らしやすい社会
夏季パラリンピック初出場で6位入賞
東京2020パラリンピックで陸上競技女子100メートル(車いすT54)に出場し、6位入賞を果たした村岡桃佳選手。
初めての夏季パラリンピックを振り返り、「無観客のため本来の歓声を味わえなかったのは残念でしたが、自国開催だったので、多くの日本人スタッフの方から激励の声をかけていただいたのはとてもうれしかったです。何より、目標としていた夏季パラリンピックへ出場できたことに喜びを感じました」と話す。
環境整備と連動して進めたい「心のバリアフリー化」
パラリンピックはオリンピックと同じ会場で行われるが、気になるのがバリアフリー環境だ。
「身障者用トイレやスロープが増設されるなど、大会ごとにバリアフリー化が進んでいると感じます。ただ、毎大会、大変なのが選手村から競技場までの移動です。バスで移動するのですが、車椅子のまま乗車できるスペースに限りがあり、バスに乗るために1時間待つこともありました。運営による増便措置に加え、時間に余裕を持って出発するなど、自分でも対策をしています」
東京都が運営する「パラスポーツの振興とバリアフリー推進に向けた懇談会」のメンバー(パラ応援大使)の一人であり、さまざまな国際大会に出場し、各国のバリアフリー事情を知る村岡選手は、東京の環境をどう思っているのか。
「多くの駐車場に身障者用の駐車スペースがあり、スロープも整備されているなど、先進国のなかでも東京はバリアフリー化がとても進んでいる印象です。ただ残念なのが、身障者用の駐車スペースに一般車が停まっていたり、スロープに自転車が置かれていたりして、利用できないときがあること。設備だけでなく、あらゆる人がお互いに思いやりを持って助け合う『心のバリアフリー化』も進んでいくと、とてもうれしいです」
さらに、スロープや点字ブロックの設置も特定の場所に限らないでほしいという。
「スロープや点字ブロックの設置が増えることで、私たち車椅子使用者だけでなく、ベビーカーや白杖を使用する方、そしてお年寄りも、『ここしか通れない』ではなく『ここを通りたい』と、自分自身で選択できる、より素敵な社会になると思います」
村岡選手はパラ応援大使として、各種イベントや取材で積極的にバリアフリー環境の改善を発信している。
パリ大会でのメダル獲得を目指して
競技と啓発活動双方に尽力する村岡選手。パリ2024パラリンピックに向けた次の勝負は、2024年5月に神戸で開催される世界パラ陸上競技選手権大会だ。ここで2位以内に入れば、パリ大会への切符が手に入る。
ソチ、平昌、北京の冬季3大会、夏季の東京2020パラリンピックと、実に4大会の出場経験がある村岡選手でさえ、パラリンピックはほかの国際大会とは異なる特別な思いを抱くという。村岡選手の夏季パラリンピック初となるメダルの獲得に、大きな期待がかかる。
村岡桃佳
写真/伊藤智美