Next Generation Talent:
より明るい未来へ!東京電機大学スペイン人留学生の挑戦

Read in English
 リカルド・マーサルさんは、東京電機大学(TDU)大学院システムデザイン工学研究科の修士課程の2年生だ。ロボットやAIの日常作業への応用について研究している。
sam-thumb-1600xauto-8294.jpg
リカルド・マーサルさん。足立区にある東京電機大学の東京千住キャンパスにて。

 マーサルさんの夢は、ロボットを使ってリサイクルシステムを作ること。そこには、利便性の高いシステムによって人類を救いたいという思いがある。「リサイクルをはじめとする毎日繰り返す同じ作業に対してシステムやロボットを導入し、人間が日常の中により多くの時間的余裕を見つけられるようにしたいです。私たちにとっていちばん大切なのは時間ですから」と説明する。

 マーサルさんは、大学の14階にある講義室から眼下に広がる東京の街並みを眺めている。目の前にそびえ立つ東京スカイツリー®が、北千住駅周辺に広がる建物の上にその象徴的で現代的な影形を重ねている。

 活気あふれる最先端のロボット工学研究室やメカトロニクスワークショップを有する東京電機大学は、マ―サルさんが期待するように、深刻な社会問題に対して、新しい技術的な解決策が誕生し得る最適な場所といえる。

S7C02866-thumb-1600xauto-8296.jpg
「東京は、正反対のものを完璧に組み合わせた都市です。都会的でありながら、静かで安全な街、そしてモダニズムと伝統が混ざり合った場所ですね」とマーサルさん。

無限に広がる可能性

 この聡明なスペイン人留学生は、情熱を注ぐのに最適な場所を見つけたようだ。「TDUは驚くほどフレキシブルで素晴らしい大学です。学生には創造性を発揮できる場が与えられています。挑戦してみたいアイデアが浮かんだ時は、たいてい教授たちはゴーサインを出してくれます。ここにはたくさんのリソースが身近にあり、高度な計算能力を備えたコンピューターもあるので、可能性を無限に感じられるのです。大きな科学技術分野の強豪大学の一員であることにワクワクします」

 マーサルさんがTDUに入学した経緯は、少し変わっていた。「私がアメリカの大学で勉強していた時、TDUの宍戸真教授と会う機会があり、宍戸教授とロボット工学についての議論を交わしたのです。その後、教授が私にTDUの大学院へ進むことを強く勧めてくれました!そして、今があるというわけです」

言葉の壁をうまく利用する

 マーサルさんの専攻するコースには留学生は少ない。講義はすべて日本語で行われるが、彼はまったく不便を感じていないようだ。「大学で受けている日本語の集中講義にとても助けられています。学びの機会として、言葉の壁をうまく使う方法も見つけました。たとえば、私が所属するゼミで使われる専門用語を、自動的に翻訳する特別なプログラムを設計しました。教授たちは、私が英語で調べたり、論文を英語で書いたりすることを認めてくれています。そして私が理解できないことがあると、常にみんなが優しく助けてくれます」

 さらに、マーサルさんは社会生活においても、言葉の壁を逆手にとって上手に活かしているようだ。「日本語を勉強中の私と、英語を学びたいという大学の友人たちとで、言語交流セッションをしています。お互いにメリットがあると同時に、楽しいひとときになっています。また、週末に通っているサッカークラブにもたくさんの友人がいます」

S7C02909-thumb-1600xauto-8297.jpg
北千住での学生生活は、大学の最先端の施設と、誰もが地元にいるような気分になれる静かな商店街が混在した環境にある。

日本式でやってみる

 「コース内の日本人学生と友達になることで、新しい文化や物事の進め方を理解するようになりました。系統的かつ注意深く仕事を進める日本人の典型的なアプローチが、素晴らしい成果を達成するための土台になっているのだと気づきました。ゼミ仲間の多くは、プロジェクトで次のステップへ進む前に時間をかけ、あらゆる角度からしっかりと確認します。それは欧米の結果主義とはまったく異なるので、目から鱗でした」

 また、マ―サルさんは、「東京での暮らしは本当に素晴らしい」と力説する。「各駅の周辺エリアは街の中に新たに生み出されたもう一つの街のような感じで、それぞれにユニークな特徴があります。北千住駅周辺の静かな通りでも、渋谷駅周辺の高層ビルが立ち並ぶショッピングエリアでも、東京は常に新しい何かを提供してくれます。まずは気軽に隣の駅を散策するだけでも発見があるはずです。私は、現代的なものと伝統的なものが混ざり合った東京が好きです。東京は巨大な未来都市であると同時に、そこには独特な歴史と誇るべき文化も息づいています。特にロボット工学を学ぶ学生にとって、東京は魅力的な場所です」

 しかしながら、SF映画『ブレードランナー』に出てくるようなテクノロジーが発達した東京の様相には、なお人間の力が基盤として必要だと彼は言う。「私は未来について研究しており、科学技術の最先端にいる立場からロボットや機械が持つあらゆる可能性を評価しています。しかし、東京での暮らしを通じて、ある事に気づきました。それは、人間の脳に勝るものはないということです。現代の科学技術は素晴らしいですが、伝統と文化をロボットが再現することはいつの時代でも不可能です。東京は私にそれを教えてくれました」

リカルド・マーサル

ricard_marsal.jpg
1999年スペイン・バルセロナ生まれ。アメリカのフェアモント州立大学で数学とコンピューター科学を専攻した後、2022年に東京電機大学大学院修士課程へ入学。大学院ではロボットが周囲の環境を認識できるようにするための研究を行っている。

Photo: courtesy of :リカルド・マ―サル

システムデザイン工学研究科(修士課程)

「技術で社会に貢献する人材の育成」というTDUの理念のもと、超スマート社会を先導し、魅力的な生活空間を創造していくことができる高度専門技術者を養成する。
https://www.dendai.ac.jp/about/graduate/shisutemu_dezain/

東京電機大学

https://www.dendai.ac.jp/
取材・文/氏家ジェシカ
写真/ミヤジシンゴ
翻訳/スヴェンソン華子