Next Generation Talent:
輝く未来へ! 上智大学でグローバルな視野で歴史を学ぶ

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 スイス出身のヤニック・ミュールハウプトさんが在籍するのは、上智大学の大学院グローバル・スタディーズ研究科グローバル社会専攻(GPGS )。ここで日本史への興味を追求し、輝かしい未来に向けて学びを深めている。
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上智大学のGPGSに在籍する大学院生のヤニック・ミュールハウプトさんは、日本の歴史と現代文化を研究している。

 ミュールハウプトさんと日本史との最初の出会いは、子どものころにスイスで見たテレビ番組、『風雲!たけし城』だった。これは、コメディアンであるビートたけし氏が出演するバラエティ番組。いまや、映画監督・北野武として国際的に知られている。そんなビートたけし氏が扮する殿様が用意した障害物を、出場者が身体を張って乗り越えていくというもので、世界的にヒットした。「ほとんどのクラスメイトが放課後にこの番組を見ていました。思い返せば、初めて日本史に触れた機会がこれでした!実は、この番組はドイツのテレビ局で放送されていましたが、スイスでも見ることができました。ドイツ語の解説と相まって、さらに面白かったことを覚えています」と振り返る。

 その後彼は、カナダで歴史と英語の学士号を取得した。「私は故郷のバーゼルの大学に入りましたが、東洋史を勉強するためにバンクーバーの大学へ移りました。そこで日本史への興味が湧いてきました。そして、大学卒業後、上智大学に入学するまでカナダとアメリカで過ごし、その間に多くの日本人と知り合いました」

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「学びの機会とリソースが豊富にある東京は、大学院の学位取得を目指すのに理想的な環境です」と語る。

大好きな浅草

 ミュールハウプトさんは、2年前から上智大学の大学院課程で日本語の勉強を始めた。彼は自主学習と言語コースの両方で努力を重ね、既に中級レベルの日本語を使いこなしているが、日本語ですべての講義を受けるには力不足だと感じていた。それを克服するためのコースが、多様なカリキュラムを英語で展開している上智大学のGPGSだ。彼が受講するなかでも特にお気に入りなのが、現代の日本が抱える社会問題に焦点を当てた講義だ。自身の日常生活に、文化的な背景や深い見識をもたらしてくれるという。

 ミュールハウプトさんは、大学で論文の指導を担当する日本史の専門家スヴェン・サーラ教授をとても尊敬している。修士論文では浅草の歴史について調査した。浅草は、伝統的な雰囲気が色濃く残っており、有名な浅草寺がある。「数年前に初めて日本を訪れた時、空港を出てから最初に印象に残ったのが浅草でした。宿泊先は浅草寺のすぐ隣で、思い出深いところです」

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大学の言語教育研究センターで講師のアルバイトを通じ、日本人学生との交流を楽しんでいる。

複数の観点で考える

 上智大学のプログラムは、さまざまな視点で探究できる多様な環境を学生に提供している。それがミュールハウプトさんの価値観とピッタリ合っているという。「最近は意見の"正しさ"にばかりフォーカスする傾向にあると感じます。一歩さがって別の人の視点で問題を見ることが解決のヒントになるかもしれません。成長することを例に挙げると、私はアジアの文化圏から来た人とあまり接触したことがありませんでした。ですから、お互いの文化をとおして学び合うことに興味があり、新たな視点を持つのに役立っています」

 彼は、日本史の教師になることを視野に入れ、上智大学の博士課程への進学を考えている。そこで、サーラ教授から有益なアドバイスを得たそうだ。「私がこの道へ進むとしたら、日本に住み続けることになるでしょう。教授によると、この分野で就職するチャンスは、ヨーロッパやアメリカと比べて日本にいる方がはるかに多くチャンスがあるというのです。日本の大学では、教育プログラムに国際的な視点を求める傾向が強まっており、英語のプログラム数も増えているそうです」

チャンスであふれる都市

 将来、東京で暮らすことを検討している人へのアドバイスとして、ミュールハウプトさんは、東京は若者にとって挑戦の場になるという。なぜなら、キャリアを築き始めた駆け出しの人への報酬は、大抵の場合、低いからだ。他方で、自治体などから、さまざまなサポートや手当が得られる可能性もある。留学生たちには、積極的に情報を集め、大学の学生課を活用することを勧めている。

 ミュールハウプトさんは、空き時間に上智大学の言語教育研究センターで英語とドイツ語の講師として日本人学生を教えている。また、幼稚園児や小学生を対象にしたサッカーチームのコーチもしている。これらの仕事は、単に学費を稼ぐだけでなく、日本人との楽しい交流の機会にもなっており、貴重な経験といえる。

 「東京は誰もが何かを見つけられる街であり、大学院生にとっての理想的な場所だ」と彼は言う。分野によって、多くのリソースがあり、豊富なアーカイブと情報にアクセスできるからだ。」彼の研究分野において、もう一つの大きな利点は、人びとが彼自身と彼の研究の両方に親しみと関心を寄せてくれることだ。「初対面の人には交換留学生だと勘違いされることがよくあります。そこで東京在住の学生だと伝えると、私の研究について質問したり、日本文化に対する私の考えを熱心に聞こうとしたりしてくれるんです!」

ヤニック・ミュールハウプト

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スイス・バーゼル出身。バンクーバーのブリティッシュ・コロンビア大学を卒業後、上智大学大学院グローバル・スタディーズ研究科に入学。日本史を学ぶ熱心な学生として、東京の歴史を次世代へ伝えるための文化の保存や建築の保存運動を提唱している。

上智大学大学院 グローバル・スタディーズ研究科

2006年に設立されたグローバル・スタディーズ研究科は、上智大学の地域研究、比較文化、グローバル社会などに関する取り組みを具現化している。グローバル社会専攻(GPGS)を含む4つの専攻があり、各分野の垣根を越えた学際的な枠組みとそれぞれの方法論を用い、専門教員の指導のもとで独自の分析を進めていく。
https://www.sophia.ac.jp/jpn/academics/g/g_gs/
取材・文/橘高ルイーズ・ジョージ
写真/ミヤジシンゴ
翻訳/スヴェンソン華子