クリエティブなコミュニティを広げる、Artedlyの取り組み

Read in English
 東京のカフェカルチャーが盛り上がりを見せている。こだわりのコーヒーやペストリーを楽しみながら、落ち着いて仕事ができるワークスペースとして活用できるようなカフェも増え続けている。そして、それらのカフェは活躍の舞台を広げたいアーティストにとっては重要な拠点でもある。発展を続けるアート業界では多くのギャラリーやアートイベントが意欲的な展開を行っているが、アーティストとアート愛好家を取り込んだ積極的なコミュニティ運営でカフェとアートを結び付けることに成功しているのがArtedlyだ。
sam.jpg
Artedlyは、展示の機会を求める独立系アーティストと店内にアート作品を飾りたいカフェを繋ぐ。

Artedlyとは?

 東京都内のカフェとデジタルアーティストや写真家とのマッチングを行う、それがArtedlyの提供するサービスだ。カフェや店舗にスペースを確保し、そこに展示する作品のスケジュール管理などのアレンジを行っている。スペースとアーティスト双方の結び付きを促進するために、提携スペースなどを会場にしたミートアップイベントも毎月開催している。

 このパートナーシップは三者にとって利点があるという。ギャラリーや事務所に属さず、自らでマネジメントを行うため資金力の乏しい独立系アーティストにとって、初期費用のかさむ展示会を自分で開催することはなかなか難しい。また、カフェなどのスペースは、新規の客層を取り込むためにも内装や装飾を変えたいと考えている。そしてなにより、東京でアーティスト活動を行う人々は、同じ目標を抱いた仲間たちと出会い、アイデアを交わしながら互いを高め合える場所を求めている。

 「Artedlyのアイデアを閃いたのは数年前のことです」と、設立者のイアン・ラッド氏は言う。「コロナ禍が押し寄せる直前に、都内のいくつかのカフェとの提携関係を築くことができました。状況が落ち着くのを待ちながらアプローチを少し変え、コミュニティづくりに重点を置いた活動を目指すことにしました」

Artedtly-The-Hive-Jinnan-Shibuya-1024x768.jpg
Artedlyは提携カフェで定期的にミートアップイベントを開催している。Artedlyの最新情報はInstagramかMeetup groupで確認することができる。

 Artedlyが提携するカフェ、Slow ECOLAB(スロウ エコラボ/2023年3月閉店)のオーナーのエレーネ・ケギネール(Hélène Queguiner)は「私自身アートが大好きですから、当店の壁がアーティストの皆さんの発表の場になればと思っていました」と語る。「うちはヴィーガンカフェとして営業していますが、ここで知り合った人々のあいだに友情が芽生えたり、新たなプロジェクトの起点になったり、そんなコミュニティスペースとしての機能を大切にしています」

 コミュニティを作るべく模索を続けてきたケギネール氏だったが、そのためには多大な時間を要することを知った。そんな折にArtedlyを紹介され、Slow ECOLABにとって理想的なソリューションだと直感したという。

 「展示アーティストのファンの方々が来店されたり、常連のお客さんが大好きなアーティストの作品を見て喜んでくれたりするようになりました」と彼女は言う。「特に素晴らしかったのはリサ・ナイトの展示をした際、彼女のワークショップを開催できたことです。東京のクリエイティブなコミュニティとの繋がりが一段と広がりました」

アーティストの活動を支援する

 現在のArtedlyは目指すビジネスモデルの第一段階にあるという。額装やプリント、そして輸送に関わるコストはArtedlyが負担している。つまり、カフェやアーティストに費用負担を求めていないということだ。毎月開催しているArtedlyのミートアップイベントの収益が、展示の費用に充てられている。協力アーティストたちはArtedlyのプラットフォームでプリント作品の販売をすることができ、そこからも多少の手数料収入が生まれている。

Artedtly-The-Hive-Jinnan-Shibuya-2-1024x768.jpg
カフェにとっては、新しい写真家やデジタルアーティストの作品と出会え、展示、搬入搬出などをすべて無料で完結できるという仕組みだ。

 協力アーティストのひとりである山下累は、「アーティストにとって理想的な発表の場を得ることは容易なことではありません」と言う。「私はカンガルイというブランド名でプリント作品を販売しながら、西アフリカやコンゴ民主共和国などに生息する、ウシ科の絶滅危惧種のマウンテンボンゴの救済活動を支援しています。Artedlyの協力を得たことで、都心の大きなカフェでの展示が実現し、カンガルイとしての活動をより広いネットワークに繋げることができました。自分の作品が展示されているのを見るのも嬉しかったですし、クリエイティブな活動をもっと拡大していこうという意欲がさらに高まりました」

Artedly-The-Hive-JInnan-Shibuya-3.jpg
Artedlyのイベントに参加すれば、受付をしているラッド氏に必ず会うことができる。

 日本国内でより多くのカフェと連携するために、Artedlyは規模の拡大を目指している。また、世界各地のアーティストと繋がりながら、東京での展示の機会を後押ししていきたいとも考えている。この段階ではじめてアート・マネージメントとしてのサービスの収益化を目指すとしているが、マネージメント・フィーは低額に留めるというのがラッド氏の考えだ。同社はあくまでアーティストとカフェとのパイプ役に徹し、展示するアートの選択権はカフェ側に持たせるという方針だ。

 「私がターゲットにしているのは富裕層ではありません。ゴールはアートの民主化です」とラッド氏。「恵まれたコネクションかよほどの資金力でもない限り、東京で展覧会を開くのはとても難しいことなのです」。

※本稿は『Tokyo Weekender』(2023年1月18日)に掲載されたものです。

取材・文/サマンサ・ロウ
翻訳/飯島英治
この記事にコメントする 

この記事を評価する

この記事にコメントする
ウェブサイト利用規約 個人情報の取り扱い

回答内容について個人が特定されることはありません。