アメリカの味を東京で。人気焼き菓子店の挑戦
マイアミ出身のグラフィックデザイナー、グレゴリオ・ナバサが東京にやってきたのは、2009年のことだ。2004年から2006年まで米国でポップカルチャー系のインディーズ雑誌のデザイナーを務めたのち、日本への移住を決意するまでいくつかのデザイン会社で貴重な経験を積んだ。
グローバルなトレンドに目を光らせつつビジネスチャンスを窺ってきたナバサが2022年、ついに立ち上げたのがMONSTA SWEETS(モンスタースイーツ)だ。すぐに東京で人気のスイーツブランドとして噂になり、軌道に乗ることができた。
「世界各地のトレンドやニュースを眺めながら、東京でアメリカンスタイルのクッキーを作ったら面白そうだと考えていました」とナバサは言う。「たとえばアメリカでは今、クッキーブームのサードウェーブが起きています。最初のブームは1980年代、ショッピングモールを中心に広がりました。そして手作りドーナツやカップケーキ、手作りクッキーのトレンドが数年前にありました。コロナ禍になってごつごつとした表面に、さくさくとした食感のクランブルクッキーのブームが起こり、数えきれないほどのクッキー店がオープンしました。韓国でも、アメリカ・ニューヨークの人気店のルヴァン・ベーカリー風の大きなクッキーを真似る店が現われ、ネットを中心に話題が沸騰しました。そのスタイルがみるみるうちに広まって、似たような店があちこちでオープンし、韓国ではすでに一大ブームとなっています」
これが、もともと焼き菓子づくりが大好きだったというナバサがMONSTA SWEETSを立ち上げた背景だ。レシピに工夫を重ねながら、友人やX(Twitter)のフォロワーたちに試食を手伝ってもらい、味を完成させていった。日本では自家製の焼き菓子などを販売することが法律で禁じられているため、食品衛生責任者の資格を取得し、地元のケーキ店と契約を結んでキッチンを借り事業を開始、2022年5月に創業した。
「巨大で分厚いクッキーを思い浮かべながら、MONSTA SWEETS(モンスタースイーツ)というブランド名を閃きました。日本では"monster"の発音が、最後の「~er」が発音されず"monsta"になるので、そのまま活かすことにしたのです。日本向けにローカライズした英語ですが、日本語としても英語としても意味が通じます。そして、あるケーキ屋さんにお願いしてキッチンを使わせてもらえることになりました。どこで製造されたものか、商品に明記しなければならないからです。そうして自分でクッキーを焼き始めたというわけです。最初の1カ月間は、まさに目が回るようでした」
バラエティに富んだフレーバーやシーズン限定クッキーなどを交えて、毎月メニューを入れ替えている。ペパーミント・スプリンクル、チョコパイ、ジンジャーブレッド、レモングレイズ・クランベリー・マカダミアなど、色とりどりのクッキーが登場してきたが、どれも驚くほどの美味しさだ。MONSTA SWEETSのInstagramを見れば、ポップアップイベントやMIYASHITA PARKのOJIZO COFFEEでのクッキー販売に押し寄せる人々の行列の模様や、いつもの「完売!/SOLD OUT!」のサインなどが人気のほどを証明している。まだまだ小規模とはいえ注文件数は増加の一途で、特にネット販売が伸びている。都内では口コミで評判が広がっており、その勢いは止まりそうにない。
ファンからは「クッキーマン」の愛称で親しまれるようになったナバサだが、人気の高まりについてこう語っている。「OJIZO COFFEEから初めてもらったオーダーは50個でしたが、翌週にはそれが150個に増えました。ネット販売は絶好調で、今度は予約注文システムを始めようと考えています。前回のポップアップイベントでは、顔を出してくれた友人がお弁当屋さんを営む女性を紹介してくれ、今度そこで何か一緒にやろうという話が持ち上がりました。彼女はクッキーの写真を共同経営者に送り、別の店舗用にと、その場で100個も注文をしてくれました。さらに業界団体のクリスマスパーティー用の注文があった後、また別のクリスマスパーティー用にと200個の追加注文をしてくれたのです」
2022年末には横浜で開催された骨董市に出店して、イベント2日目を待たず、初日での完売となった。渋谷のクラブイベントに出店した際には、SNSでMONSTA SWEETSを追いかけてきた熱心なファンがやっと実物にありつくという感動的な場面も生まれたという。今後のポップアップやオンラインイベントについては、MONSTA SWEETSの各種SNSをご確認のこと。特に更新頻度の高いInstagramは要チェックだ。