画像認識AI技術を活用し成長した、スタートアップ
AIを駆使して損害保険の支払い期間を数日に短縮
Tractableは台風などの風災による建物等の損害額を画像認識AIで自動算出するソリューションを提供し、社会課題の解決に取り組んでいる 。同社サービスの特徴は、圧倒的な効率化によるスピードと正確性だ。
ユーザーの必要な作業はスマートフォンを使った損害箇所の撮影のみ。東京オフィスとロンドン本社技術チームが連携してAI査定を行い、スピーディに損害査定プロセスを行う。「手続きや手間の人材不足で、従来だと2〜3ヶ月程度かかっていた保険金の支払いを、最短で当日中に行うことが可能になりました。迅速な支払いによる、被災者と当座の資金ニーズに素早く応え、早期復旧を支援しています」と堀田氏は話す。
Tractableは建物に加え、自動車の損害査定AIソリューションも提供しており、日本ではメガ損保4社すべてが導入し、パートナーとして名を連ねている。また、保険金支払いを迅速化するAIソリューションを世界のマーケットで提供。日本およびグローバルな事業展開が加速度的に成長したTractableは、2023年にソフトバンクビジョンファンドからの資金調達も行っている。
アメフトで培ったオーナーシップがビジネスでの強みに
堀田氏は米系企業2社でキャリアを重ねたのち、2019年、Tractableに入社。東京オフィスをゼロから立ち上げ、多国籍な人材をまとめ上げるチームづくりが待ち構えていた。国籍やキャリアや価値観も異なるチームのかじ取りで活きたのは、学生時代に力を入れていたアメフトの経験だった。
「私のポジションはクォーターバックで、チーム全体を俯瞰し、ゲームの戦略を立てる監督のような役割です。このとき培ったオーナーシップがビジネスでも強みになっています」
スタートアップのような急成長が求められる組織でのチームづくりで最も重要なのは、まさにチームを作り上げていく出発点ともいえる「採用活動」と話す堀田氏。「採用には時間をかけ、様々なアプローチを試み、異なる価値観を受け入れる受容性と物事の本質を考えられる力がある人かを見極めています」結果的に、採用した人材は多様性の中で新たな価値創造ができるチームの推進につながっている。
東京が秘める、グローバルな人材が集うアジアの拠点となる可能性
「アジアのために、様々な国籍のアジア人が協業する」という新たなチームづくりを思い描く堀田氏。ロンドンには「ヨーロッパのためにヨーロッパ人同士が協業する会社」が数多くあり、国籍を問わず優秀な人材はロンドンで起業し、ヨーロッパでビジネスを展開するそうだ。アジアで同様の道筋を築く場合、東京はその拠点となり得るポテンシャルを秘めている。
「『世界の都市総合ランキング』で、東京はロンドンやニューヨークとともに上位の常連です。現在アジアの働く場所はシンガポールに一極集中しているものの、都市の魅力を活かせば、東京にアジアの優秀な人材を集められる可能性は高い。
グローバル化というと日本から海外に出向く思考になりがちですが、逆の発想も持つ必要がある。すなわち東京がアジアのグローバル人材の拠点となって、多様性を実現すべく、東京からアジアや世界へ展開するグローバル化にもっと力を注ぐべきでしょう」
今春開催される、世界中の最先端テクノロジーやアイデアが集う東京都主催のイベント「SusHi Tech Tokyo 2024」に、堀田氏も期待を寄せている。「起業の場として東京に目が向けられ、環境整備とともに東京発のグローバル化が加速することを願っています」
堀田翼
Tractable
https://tractable.ai/jaSustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo は、最先端のテクノロジー、多彩なアイデアやデジタルノウハウによって、世界共通の都市課題を克服する「持続可能な新しい価値」を生み出す東京発のコンセプトです。
SusHi Tech Tokyo 2024:
https://www.sushi-tech-tokyo2024.metro.tokyo.lg.jp/
撮影/伊藤智美
画像提供/Tractable