Next Generation Talent:
テンプル大学で学ぶ、東京での経験をキュレーションする術

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 1982年に設立されたテンプル大学ジャパンキャンパス(TUJ)は、アメリカの大学教育をすべて英語で提供する日本初の外国大学の日本校だ。TUJアート学科専攻の4年生で、インド出身のタヘラ・ヴァジーヒさんは、TUJでの学生生活以外においても特別なものを得たという。それは彼女の興味に特化した、カスタムメイドの東京体験だ。
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「身の回りのことや街に興味があるなら、東京でユニークな何かを見つけられます」とタヘラ・ヴァジーヒさん。

あなただけの東京を見つけよう

 一般的な東京のイメージといえば、いたるところにポップカルチャーがひしめくハイテクな都市で、無機質な高層ビル群に囲まれた生活は光の速さで進んでいく、といった印象が少なからずあるだろう。それは日本の首都・東京の一面であり、魅力の一つでもあるが、1,400万人以上が暮らす東京にはもっと多くのことが秘められている。「一度、新宿駅でサイバーパンク風のファッションに身を包んでいる人を見かけたことがあります。確かに、街のいろいろな場所でハイテクな文化がにじみ出ていますが、私はシンプルな暮らしが好きです」とヴァジーヒさんは語る。

 東京のような国際都市でシンプルな暮らしを求めることは不思議に思えるかもしれないが、彼女は難なくそれを見つけた。「東京の暮らしをシンプルにするために重要なのは、安全な住宅環境です。食べ物がいつでも手に入り、自転車などの便利な移動手段があることなど、日常のシンプルなタスクをできるだけ便利な方法でこなせばよいのです。それから家族やあなたの周りの人たちと連帯感をしっかり持つことで、東京での暮らしが魅力的なものになります」

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ヴァジーヒさんは、東京のいたるところへ自転車で行けることが気に入っている。

東京で得る自由

 インド出身のヴァジーヒさんは、常に冒険心と芸術への情熱を持っており、いつか外国へ行ってみたいと思っていた。ある日、外国の大学を調べているとTUJの広告を見つけた。そこには大学学部課程12課程の中にアートがあった。さらに日本語と英語以外の言語の選択科目と一緒に、芸術理論と実践(後に彼女の楽しみとなった科目)もあった。それらすべてがヴァジーヒさんが探し求めていたものだった。彼女いわく「これまででいちばん簡単な申請方法」で入学手続きを済ませ、あっという間に東京にやって来た。まるで東京に呼ばれたかのようだったという。しかし、実際に東京へ来てみると、この大都市は清々しく思えるほど人に干渉しない街であることに気が付いた。

「初めて来日したときは学生寮に入ることが義務付けられており、留学生をサポートするレジデント・アシスタントや同じ志を持つ学生たちと出会いました。この安全な環境でみんなと一緒にこの東京を探検し、さまざまなことに挑戦することができました」。そしてヴァジーヒさんが望んだのは、街の声に耳を傾けることだった。

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東京は多様な人々が集まる街。さまざまな意見や考えを理解するには、まず彼らの声に耳を傾けることが大事だ。

「私は日本のおばあちゃんたちが、玄関の軒先にきれいな花を植えて華やかに飾り付けるといったような些細なことが大好きです。私が好きな場所の一つに、中古用品店が集まる下北沢があります。これらの店に並ぶ古いものを眺めて、それらの来歴に思いを馳せるだけでも私にとっては大きなインスピレーションになります。過去やさまざまな物の歴史について思いを巡らせることから新しい発想を得ています」とヴァジーヒさんは話す。彼女のような留学生は本当に魅力的なことに集中することで、自分にとっての東京とは何かに気づくのかもしれない。

望めばかなう、東京という舞台

 東京に住むと芸術的な感性が養われるのかと問うと、ヴァジーヒさんはしばらく考えてから答えてくれた。「そうなりたいと思うなら、そうなります。探しに行けば、見つかります」。ある意味、もっともな答えだろう。「私の友人は、いつもこう言います。あなたはいつも道ばたで面白いものを見つけるよね、と。それは、私が単にそれを気にしているからで、足下に落ちているボタンや折り鶴などを見つけることができるのです。つまり東京という街では、探し求めていれば、やがて見つかる瞬間が訪れます。逆に、探し求めていなければ、街はありふれたものに見えるのです」

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TUJアート学科のアートギャラリーに展示されたヴァジーヒさんの作品。このギャラリーはTUJの東京のキャンパス内にあり、一般公開もされている。

 ヴァジーヒさんはシンプルな暮らしを求めつつも、芸術に関する小論文の執筆や、自身の作品についての教授たちとの議論の合間に、さまざまなメディアを通じて自己表現をしたいと考えていた。また、テンプル大学の学生仲間からは人生についてのさまざまな視点を学んでおり、これらの興味を積極的に追求している。そして東京という街は、それに呼応するように彼女を後押しし、チャンスを与えてくれる。たとえば、ヴァジーヒさんが芸術の講義を聞きに行った際、仕事の口を尋ねたことでスタジオアシスタントの職を得たという。「そこには、私が本当に挑戦したいことがあったのです。私はプロのアーティストがどのように活動するのかを知りたかったので、本当にすばらしい機会を得ることができました」。自分が心から挑戦したいことが見えた時、東京はその舞台をすべてそろえてくれるようだ。

タヘラ・ヴァジーヒ

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TUJアート学科の4年生。インド出身、幼いころから絵を描くことに情熱を持つ。趣味は、彼女が尊敬する前衛芸術家の赤瀬川原平について学ぶこと、そして東京を自転車で巡ること。

学部課程アート学科

TUJは日本のキャンパスにてすべて英語で講義を行い、大学学部の専攻課程でさまざまな実習を提供。アート学科の学生は自分で選んだメディアで活動し、アーティストとしてのキャリアをスタートするために必要な社会史的な背景を学ぶことができる。
https://www.tuj.ac.jp/jp/ug/majors/art

テンプル大学 ジャパンキャンパス

https://www.tuj.ac.jp/jp
取材・文/ツェザーリ・ヤン・ストゥルシェヴィッチ
写真/ミヤジシンゴ
翻訳/スヴェンソン華子