東京のカリスマバーバー、ジュリアン・アドラーとは?
ドイツから日本へ
アドラーはドイツ生まれだが、東京に来てからは、この街が第二の故郷になった。
「父はドイツ人、母は日本人です。14歳で日本に来て、日本が好きになったんです。野球が好きでしたしね。ヘアスタイリストになったのは、20歳のとき。東京の専門学校で資格を取り、ヘアサロンで修業しました。女性もカットしていましたが、メンズに興味がありました。メンズの髪型のほうが彫刻的で面白いと思ったんです」
成功への道
当時、メンズ専門にシフトするのは容易ではなかった。フェードカット(以下の画像参照)など、今のバーバーが提供するスタイルはまだ人気がなかったし、資金の準備や技術の習得も大変だった。それでも、アドラーは怯まず自分の道を進んだ。
「バーバーについて何も知らなかったのですが、日本ではほとんど情報が見つからなくて、YouTubeで探しました。すると、オランダのSchorem(シュコーラム)というバーバーショップが見つかったんです。日本では誰もやっていないメンズの髪型のチュートリアル動画を投稿していました。海外で道具を買い込み、見よう見まねで技を学びました」
2021年に自分の店をオープン
海外のバーバーから学んだ技を東京向きのスタイルにするには、当然ながら時間がかかった。
「最初は友達に練習台になってもらいました」とアドラーは振り返る。「下手でしたよ。フェードカットのつもりがバズカット(坊主)になったり。一人前の腕になるまでは、お客様の髪も割引価格で切らせてもらっていました」。その後、原宿のバーバーショップのマネジャーを経て、2021年にThe Chop Shopをオープンした。
海外でも有名に
仕事のベースは東京だが、台湾や中国、オランダ、スペイン、米国など、海外のステージで大観衆を前にカットすることもある。ロサンゼルスでは街頭でヘアカット・ライブを行った。
「過去最大の会場は横浜アリーナでしたね」とアドラーは言う。「大スクリーンのあるステージで2,000人の観衆を前にカットする羽目になって。たくさんの人が見守る中でカットするのは怖かったけど、ライティングのおかげで観客が見えなかったのはありがたかったです」
常に最新流行をキャッチ
ファッション関連は何でもそうだが、ヘアスタイルも人気が常に移り変わるし、流行り廃りも激しい。有名になり、自分の店も開いたアドラーも、その点はよくわかっている。
「バーバーショップとして唯一無二の個性が必要です。常に次の流行を考えること。特に東京では、他店の動向を見ながら、腕を磨いていかなければいけません。流行の変化はとても速いのです。原宿や渋谷は特にそうです」
客とのコミュニケーションを大切に
バーテンダーと同じく、バーバーも客とのコミュニケーションが大事だ。バーバーチェアにはありとあらゆる人が座り、くつろぎながら会話を楽しむ。バーバーという仕事のなかでアドラーが大好きな部分だ。
「お客様に恵まれています」とアドラーは話す。「ラッパーのジョーイ・バッドアスやF1ドライバーの小林可夢偉さんもお客様です。でも、僕にとってはどのお客様も興味深いんです。僕がまったく知らない職業の方もいて、とても勉強になります。バーバーとお客様は距離を取るべきとは思いません。友達のような関係になるべきです。僕は外国人のお客様から英会話を学びましたから」