Next Generation Talent:
早稲田大学で学び、文化の壁を乗り越える
コミュニケーション能力が鍵
大学の歴史は1882年に遡るが、社会科学部は1966年、現代の社会課題を捉え、取り組むことを目的として設立された。TAISIプログラムはそのミッションの一環として、社会課題に対する多文化的かつ協調的なアプローチを学ぶことができる。
日本人とミャンマー人の両親のもとに生まれ、タイに9年間住んでいたウスイさんは、学士課程を修了したばかりだ。彼女はTAISIに在学中、貴重な経験ができたという。「2019年に初めて東京に来てここの学士課程に入ったのですが、私は日本人の子ですし、日本語に難はないので、特に問題はないと思っていました。でも実際は、国際的なコミュニティで育ったため、ある種西洋的な視点で物事を見ていたことに気づきました」
早稲田大学では、日本社会でより柔軟に物事を進めるため、社会の複雑さを理解することを学んだ。「一番印象に残っているのは、異文化コミュニケーションという授業です」とウスイさん。「その授業では、特に日本で異文化がどのように受け止められるかを学びました。また、日本ならではのコミュニケーションのスタイルを受け入れ、日本で育った人の一般的な視点を理解する方法を教わりました」
東京での学生生活を通じて、世界でも突出しているといわれる日本の接客業を体験したことも、貴重な教訓となったという。特に、言葉より日本人のボディランゲージを重視したことが非常に役立ったと言う。「東京で教わった最も大切なことは、ボディランゲージにも、たくさんのコミュニケーション・スタイルがあると知ったことですね」とウスイさん。
国際的な環境こそ最大の強み
留学生が日本人のメンタリティをよりよく理解するためには、まず自身の文化的規範と世界の他の社会の規範を知る必要がある。TAISIプログラムにとって東京が素晴らしい環境である理由はその点にある。ビジネス、留学、旅行の目的地として世界有数の人気を誇る東京は、世界中から多くの人々が集まり、異文化を学ぶのに最も適した国際都市だからだ。
「私が住んでいた寮の入居者は、80パーセントが交換留学生でした。彼らとは交流がさかんで、どんな些細なことでも語り合いました。さまざまな地域から来た人たちとの共同生活は、日本文化をより深く学ぶのに役立ったと思います。早稲田大学は日本で最もグローバルな大学のひとつで、英語で学ぶことができるプログラムの選択肢が多いのも魅力でした」。
そんなウスイさんは2024年4月から東京の人材紹介会社で働き始める。就職活動中、多くの日本企業や多国籍企業が、自分と同じような国際感覚をもった学生の採用に積極的であることがわかった。TAISIプログラムで学んだからこそ、さほど苦労はせず面接に挑むことができたと実感している。
ジャスミン・ウスイ
社会科学部TAISI
早稲田大学社会科学部の英語学位プログラム。「ソーシャルイノベーター」という、社会に変革を起こしうる情熱的なリーダーを育成する。学生は、「コミュニティと社会開発」「平和構築と国際協力」「経済と環境の持続可能性」「社会組織とビジネス活動」からなる4分野で、専門的かつ学際的な知識を身につける。同プログラムを専攻する学生の54%が留学生(2023年現在)。https://www.waseda.jp/fsss/sss/
写真/椎木・フーリオ・浩司
翻訳/深川美保