人に寄り添うAIで、誰もが生きやすい社会に
多様性に対応できない現場の課題を実感
大学時代に「世の中を変えるのはITだ」と感じ、1996年にNTTデータに入社した神谷氏。その後、インターネットが社会に浸透していくなかで、数々の新たなサービスや新規事業を創出し、その後は国際的なビジネスやM&A、アライアンスなどで活躍した。
神谷氏の起業への道を拓いたのは、35歳のときに生まれた子どもの存在だったという。「子どもが生まれたことで、世の中を変えるのはITではなく子ども達だという信念に至り、そこから『Nei-Kid』という子ども達と教師以外の大人が交流できるサービスを立ち上げました」と振り返る。2018年には、本サービスで経済産業省のグローバル起業家育成プログラム「始動Next Innovator」の優秀賞を受賞し、さらに神谷氏は小中高生向けのオンライン起業家教育「TimeLeap Academy」の立ち上げにも携わった。
しかし、特定の場で多様なあり方を受容しても、社会が多様な考え方を持つ人を受け入れずに個性的な人間が苦しみ続ける、という課題に直面する。
「日本の学校教育は正解があるとされ、皆を同じ基準で測る傾向が植え付けられます。でも人の考えや思いはさまざまです。多様なあり方を理解し、自分らしく生きることを許容する社会を実現したいと考えました」
インドの人材とともに、米国市場に挑む
I'mbesideyouの強みは、映像解析を活用して心の健康を守るAIの技術であり、国際特許を250件ほど出願し、米国・インド・日本で権利化している。
現在は、米国を中心にカリフォルニア州在住の日本人・インド人の移民向けに保険サービスとAIによるサポートを組みわせたサービスを展開。
AIサービスの1つは、ユーザーに寄り添うAIアバターサービス「AI Therapist」だ。「メンタルヘルスの患者は深夜に思い悩み自殺してしまう傾向があります。そんな人に向け、友達や家族、セラピストと話せない時間帯にも気兼ねなくコミュニケーションできる機会を用意しました」
もう一つは、対人のオンラインセラピーの様子を記録して診断を支援する「Therapist Success」というサービスだ。神谷氏は「セラピストが対話しているときに相手の様子を細かく記録することは困難です。心の状態を客観的に分析でき、報告などの業務負荷も大きく低減するため、セラピストからも高い評価を得ています」と話す。
同社はこれらサービスの基盤となるメンタルヘルス不調の検知エンジンの共同開発を、浜松医科大学や慶應義塾大学といった日本の研究機関に加え、インドの国立メンタルヘルス研究所(NIMHANS)、米国のNorthwell Healthとの共同研究を行っている。インドの学生からの人気も高く、2023年は、インド工科大学やインド経営大学院など39校から10,228人のインターン応募があった。神谷氏は、「インドは人口が多くITに対する抵抗感が少ないため、データの収集も比較的容易です。人材も豊富なインドとの研究・開発でプロダクトの品質を高め、メンタルヘルスの最大の市場であるアメリカで大きくマネタイズする戦略です」と語った。
世界に広く使われるサービスを東京から発信する
神谷氏は、日本は優れた製品やサービスを生み出す能力を持ちながら、文化的背景や教育の影響で、海外市場での成功に課題を抱えていると指摘する。I'mbesideyouも参加する、持続可能な新しい価値を生み出す東京都のイベント「SusHi Tech Tokyo 2024」への思いについて、神谷氏は次のように語った。
「日本では、自分らしさを伸び伸びと発揮しようとする人たちが、批判や抑圧を受ける傾向があります。また、英語を話せない人も多いため国際的な接点も限られています。SusHi Tech Tokyo 2024へ参加することで、東京発のスタートアップがグローバル市場で大きく進化できる可能性があることを世界に伝えられればと思います」
神谷渉三
株式会社I'mbesideyou
https://www.imbesideyou.comSustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo は、最先端のテクノロジー、多彩なアイデアやデジタルノウハウによって、世界共通の都市課題を克服する「持続可能な新しい価値」を生み出す東京発のコンセプトです。
SusHi Tech Tokyo 2024:
https://www.sushi-tech-tokyo2024.metro.tokyo.lg.jp/
画像提供/I’mbesideyou