社会を変革するグリーンビジネスの可能性
これからの時代、投資家に選ばれる企業とは
地球の環境破壊が進み社会は大きな方向転換を求められ、ビジネスの世界でもCO2の排出量削減など環境改善に取り組む動きは加速している。
「自然資本や環境資産という言葉があるように、自然環境を資産と捉える考え方がビジネスの世界でも常識になってきました。日本では過去に企業活動による公害問題が発生しましたが、時代は大きく変化しました。環境改善を推進する企業が増えているだけではなく、環境改善そのものを目的としたビジネスも生まれています」
グリーンビジネスは、あらゆる業界・業種の企業で取り入れることができる。
たとえば、サトウキビから砂糖を製造する新光糖業株式会社は、近年の台風の強大化を踏まえて、利益率の低さからあまり用いてこなかった、可製糖率は低いが繊維分が多く強風には強い新品種も受け入れ、さらに製造工程で生じる廃棄物を徹底して再利用する仕組みに変更するなど、より高度なゼロエミッションを実現。株式会社ゼロボードはCO2排出量を可視化するサービスを企業に提供することで企業のCO2削減に貢献している。
世界では、気候変動や生物多様性への影響を評価して情報を開示する枠組みの構築を目指した、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)*や自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)も始まり、日本でもプライム市場の上場企業にはTCFDに基づく情報開示を義務化した。
*TCFDは役割を終え2023年に解散。
「投資家はすでに企業の環境への取組を鋭い目でチェックしています。これからの時代はそういう企業でないと成長できないでしょう」と小林氏。企業のグリーンビジネスへの取組が進めば、環境は少しずつ改善していくことが期待できる。
若者が主役、DO!NUTS TOKYOの取組
東京都環境局と民間企業や団体によるサステナブル・ライフスタイルTOKYO実行委員会が共に運営する、脱炭素社会の実現に向けたアクションを生み出すプラットフォーム「DO!NUTS TOKYO」では副委員長を務めている小林氏。この取組には、18歳から20代までの若者にアンバサダーとして活動してもらうプログラムがある。
2023年8月には、東急電鉄株式会社が全路線で再生可能エネルギー由来の電力で運行していることをもっと広めるためのクラウドファンディングを若者アンバサダーが立ち上げた。11月には「みどりと生きるまちづくり」をテーマにしたプレゼンテーションイベントを開催。そこで、若者アンバサダーたちが「都市空間にARや生成AIを取り入れて緑化し、緑をもっと身近なものにする」などのアイデアを提案、まちづくりに詳しい有識者や東京都の担当者らと意見交換を行った。
「若い人たちは情報を扱うことがうまくITの最新技術にも長けています。ただこれまで自然と触れ合った体験が少ないのではないでしょうか。そうした体験を増やすことでさらに実践的なアイデアが出てくると思います。企業とのコラボを進めていけるといいですね」と小林氏は期待を込める。
こうしたアイデアはグリーンビジネスにもつながる。
「100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"」というコンセプトを掲げたプロジェクト、東京グリーンビズのボードメンバーでもある小林氏は「グリーンビジネスはまちづくりとも関連が深いんです。たとえば東京では周囲の緑を増やし環境に優しいまちづくりをすることで不動産の資産価値が上がりますから、ビジネスチャンスが見出せます。東京はグリーンビジネスの大きな可能性を秘めた都市です」
小林光
東京都は、100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"をコンセプトに、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取組を進めています。
グリーンビジネスやサステナブルファイナンスなどを含めた幅広い活動を通して、「自然と調和した持続可能な都市」への進化を目指しています。
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/tokyo-greenbiz-advisoryboard
写真/金子怜史