Tokyo Embassy Talk:
インド人外交官が見つけた東京とインドの文化的つながり

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 インド大使館のアンヴィティ・チャトゥルヴェディ二等書記官は、元々日本とインドの関係に関心を寄せていたが、初めての外交の仕事を機に、ますます好奇心をかき立てられるようになった。現在は仕事とプライベートの両面で、丹念に二つの文化のつながりをたどっている。
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アンヴィティ・チャトゥルヴェディ二等書記官、インド大使館にて。インドと日本の文化的、精神的なつながりに深い関心を寄せている。

パンデミックのさなかに東京で学んだ日本語

 チャトゥルヴェディ氏は2019年にインド外務省に入省し、日本語を学習する機会を与えられたが、学習開始と時を同じくして新型コロナ感染症の世界的流行という不運に見舞われた。

 授業もすべてオンラインになったが、この事態に日本政府がどう対応するかに注目する機会となった。変化の一つは、短期間で効率よくデジタル技術が導入されたことだった。

 このような状況でも、チャトゥルヴェディ氏は立ち止まることなく、大使館での仕事に備えて語学学校で15カ月の日本語コースに全力で取り組んだ。日本語学習のおかげで、東京での生活に早くなじむことができた。身につけた日本語力を生かして東京のあちこちを探索し、さまざまな文化に挑戦した。例えば、ペスカタリアン(肉類を食べない魚菜食主義者)の彼女は、この街の国際色豊かなペスカタリアン・ベジタリアン料理を楽しんでいる。

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インドの高い経済成長率は世界中の注目を集めている。チャトゥルヴェディ氏は、ビジネス、経済、サステナビリティの分野でインドと東京が協力できる余地は大きいと考えている。

東京は文化の交差点

 しかし、東京で文化の交わりが感じられるのは料理の世界だけではない。

 東京の寺社にインド文化と重なる部分があることも驚きだった。「インドと日本の神仏の中には、共通の起源を持つものもあります。例えば、大黒天の起源はインドの戦いと繁栄の神であるマハーカーラですし、吉祥天の起源は女神のラクシュミーだと考えられています」。寺院に入るときに礼をしたり手を清めたりと、作法にも多くの共通点がある。

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台東区の護国院に鎮座する七福神の一柱、大黒天。Photo: Kuremo via Shutterstock

 ほかにもインド叙事詩「マハーバーラタ」を題材にした歌舞伎など、多様な文化の交差を楽しんでいる。物語のあらすじは知っているものの、登場人物の描き方の違いを見るのがおもしろいという。

 日本での印象深い思い出として、映画『窓ぎわのトットちゃん』を見たことを挙げる。原作は国内外の発行部数が2,500万部を超える黒柳徹子さんの自伝的小説で、著者が第2次世界大戦中にトモエ学園(目黒区自由が丘の小学校)で受けた型破りな教育の物語である。この原作も彼女のお気に入りで、厳しい時代にも楽しむことを忘れない東京の人々の暮らしが生き生きと描かれているという。チャトゥルヴェディ氏は、東京で日々の暮らしを楽しむ中で時折インドと東京のつながりを見いだし、東京の人や文化に温かい心を感じている。

<インドの魅力>

Q1. あまり知られていないインドのおすすめの観光スポットはありますか?

 アジャンター石窟群とエローラ石窟群です。1983年にユネスコの世界遺産に登録された最初のインドの史跡の内の二つです。アジャンター石窟群には仏像と仏教壁画があって、見事な建造物としても文化遺産としても目を引きます。

Q2. 今後のインドと日本両国の関係について読者にお知らせしたいことはありますか?

 インド太平洋地域、それ以外での地域で戦略的協力をより深め、B2B(企業間)とP2P(人と人)のパートナーシップ強化に取り組むことで、両国の文明的絆が発展すると考えています。そのためにインド大使館は、大使のリーダーシップのもと、日本インド中小企業促進室、日本インドスキル・コネクトなど、日本の中小企業のインド進出やスキル開発とナレッジ交換の向上を促す取り組みを行っています。また、2023年と2024年を印日観光交流年と定め、「ヒマラヤと富士山をつなぐ」というテーマの下、観光でのつながりも強化しています。

アンヴィティ・チャトゥルヴェディ

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2020年に東京に移り住み、2022年に東京のインド大使館で政治・広報・情報・テーマ別協力担当の二等書記官に就任。プライベートでは東京の図書館や緑地で読書と散策を楽しんでいる。
取材・文・写真/カサンドラ・ロード
翻訳/伊豆原弓