Tokyo Embassy Talk:
スポーツで深まる絆―五輪がつなぐパリと東京

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 2024年7月26日から9月8日にかけて開催されるパリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会(パリ五輪)に向けた盛り上がりの中、在日フランス大使館政治部参事官で、大のスポーツ好きというロマン・リドー氏にインタビューすることができた。大使館による日本代表選手のサポートや、東京とパリという五輪開催都市間の親密な協力関係について話を聞いた。
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パリ2024オリンピック・パラリンピック競技大会のマスコット、オリンピック・フリージュとリドー氏。マスコットのモチーフとなった伝統的なフリジア帽は、フランスの芸術において、しばしば自由の象徴として用いられる。

東京2020大会の成功に学ぶ

 政治担当の参事官がスポーツ外交で中心的な役割を担っているというのは異例に思われるかもしれないが、在日フランス大使館の政治部はスポーツ協力活動にも深く関わっている。かつて15年間柔道をやっていたことがあり、情熱的なラガーマンでもあるリドー氏にとって、スポーツ外交は、まさにうってつけの仕事だ。

 生え抜きの外交官であるリドー氏が東京に着任したのは2021年。ちょうど日本でパラリンピック大会が開幕した頃だった。オリンピックの期間中はまだ母国にいた彼は、フランスの人たちは非常に感心していたと述懐する。「新型コロナウイルス感染症による安全上の制限がいろいろあったにもかかわらず、大会は大いに盛り上がり、みんな夢中になって競技の行方を追ったり、観戦したりしていました。日本には感服する思いでした。パンデミックの大変さはフランスでも十分に経験していて、東京大会を成功させるための苦労や努力を誰もがよく分かっていましたからね」

 フランスでは、冬季大会はこれまでに3回開催されており、夏季大会も今回が3度目だ。
 「前回パリでオリンピックが開催されたのは1924年のことですから、当然ながら事情はずいぶん変わっています。パリ大会が成功するとすれば、それは間違いなく東京大会のおかげでもある、といつも言っているのですよ。お世辞ではなく、本当にこれだけ大規模なイベントを行うにあたっては、東京とのやりとりが欠かせませんでした」とリドー氏は笑う。

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自身も柔道とラグビーが大好きだというリドー氏は、スポーツ外交と日仏の友好関係の推進に熱心に取り組んでいる。

 パリが2024年大会の開催地に決まって以来、大会の準備にあたる各種委員会と行政は緊密に連携し、インフラからサイバーセキュリティまで、さまざまなテーマでセッションや意見交換を行ってきた。「オリンピック、パラリンピックでは、いつも前後の開催国の委員会同士が密に連絡を取り合い、前回大会の成功に学んだり、デジタルコミュニケーションや観客の受け入れなど、幅広いニーズについて情報を得たりしています。もちろん、パリの組織委員会も、東京2020大会でよかったアイデアを真似ることはできるでしょう!」

日本選手のサポートと2国間の関係構築

 在日フランス大使館は、日本選手サポートの先頭に立ち、選手らの渡航、計画、トレーニングを円滑に進めるため、各部局を挙げて、スポーツ庁をはじめとする日本の政府機関と緊密に協力している。

 「ビザの発給や、日本選手の競技用具の輸送に必要な許可を取得するための税関とのやり取りといった基本的なことから、日仏の競技団体の橋渡し、フランスで行われる夏合宿の候補地探しの支援、そしてもちろん各種事務手続きの協力まで、私たちがお手伝いする内容は実に多岐にわたります」とリドー氏は明かす。

 在日フランス大使館はまた、オリンピック大会や文化交流、さらには包摂性(インクルージョン)など重要な価値観を推進するため、日本国内で多くのイベントを開催したり、イベントに参加したりしている。「国際女性デーには、大使公邸で日本とフランスの柔道代表選手らによる交流イベントを行いました。フランスの選手が大会で来日する際には、東京国際フランス学園といった学校でワークショップを開くなど、若い世代と触れ合う機会を設けることがよくあります」

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パリ五輪では、ヴェルサイユ宮殿やグラン・パレなど、パリの象徴的な場所が会場として使用される。Photo: courtesy of Paris 2024/Isabelle Harsin

パリらしさを極めたオリンピック・パラリンピック

 パリ大会は、東京などこれまでの開催都市から学んだベストプラクティスを継承しつつも、他とは決定的に異なる点が一つある。「パリ大会では、伝統を打ち破り、開会式をメインスタジアムではなく、セーヌ川で行います。オリンピックの歴史上かつてないユニークな試みで、素晴らしい体験ができるでしょう。ただし、これに伴い、セキュリティなど、まったく新たな次元の大きな課題も発生します」とリドー氏は指摘する。

 大会運営団体はまた、フランスの最も美しく象徴的な場所を競技会場として使用することで、フランスの長い歴史や豊かな文化と現代スポーツとを結び付けようとしている。「シャンゼリゼ通りやアレクサンドル3世橋がトライアスロンのコースになるほか、馬術はヴェルサイユ宮殿の庭園で、フェンシングはグラン・パレ、サーフィンはタヒチで行われます」とリドー氏が挙げた場所以外にも、現地または中継で観戦する人たちが楽しみにしている競技会場は数多くある。

 ブレイキンなど今年からオリンピックに加わった競技や、普段あまり目にすることのない競技を見るのが特に楽しみだというリドー氏。とはいえ、やはり長年の柔道愛好家である。「東京大会の一番の思い出は、フランスが柔道の団体戦で優勝したことですが、今回のオリンピックではきっと、日本が王座奪還を狙ってくるでしょうね。すごい戦いになりそうです」と語る。

ロマン・リドー

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モンペリエ出身の外交官。2016年、国立行政学院(ENA)卒業。2017年に外交官となり、欧州・外務省に配属される。2019年から2021年まで戦略・安全保障・軍縮・サイバーセキュリティ局副局長。2021年8月に政治担当参事官として在日フランス大使館に着任。安全保障や政府間協力関連業務のほか、主要なスポーツ大会を通じた文化的交流の支援にも深く関わっている。
取材・文/キアラ・テルスオロ
写真/藤島亮
翻訳/喜多知子