Travel Tech Tokyo:
一風変わったこのホテルに東京のすべてが詰まっている
変わっていて、変わり続ける
「変わり続けることを約束するホテル」をブランドコンセプトに掲げる変なホテルチェーンは、先端技術を駆使したユニークな方法で快適、便利に滞在を楽しめることで知られる。先端技術の用途は、無人フロントで出迎えるロボットやホログラム、客室やロビーに備えられた便利な機器など、さまざまである。
「変」という日本語は変わったものを意味して使われることが多く、ホテル名の「変」を「変わっている」の意味に捉える人もいる。しかし、変更、変動、変身などの熟語に使われるように、「変」には「変化」の意味もある。
変なホテル東京 浅草田原町の統括支配人である伊藤史樹氏は、「ホテル名は、変わり続けるという私たちの約束を表しています。もちろん、ユニークな特徴を目当てに当ホテルを選択し、楽しみにしてお越しになるお客様もいらっしゃいます」と話す。
変なホテル第1号は、2015年に長崎のテーマパーク内に開業し、現在は国内20施設に加え、ソウルとニューヨークの2か所に海外展開するホテルチェーンとなっている。
比較的若いブランドである変なホテルは、現代の日本の社会的ニーズと、先端技術の国という評判を念頭に置いて設計されている。伊藤氏は「日本の人口減少に伴い、ホテル業界で働く人も徐々に減っていますが、インバウンド市場はかなりの規模になっています。開業当初から、人件費を抑えるとともに競争相手との違いを明確にするためにロボットを使用しました」と言う。
伊藤氏はさらに、「施設面でも運営面でも改善できる点はないかと常に目を配り、お客様のご意見を最優先にしています」と話し、最近マットレスの多くを外国人客の好みに合ったものに交換したことを例に挙げた。
外国人観光客に人気の浅草の施設
各地にある変なホテルの中でも、浅草田原町はとりわけ外国人観光客からの人気が高い。理由は簡単だ。
無人フロントではホログラムが宿泊客を出迎え、変なホテルの看板である恐竜のほか、忍者、武将、アニメの執事など日本文化を象徴するキャラクターが交代で現れる。その他、ロビーのプロジェクションマッピング、衣服のしわを伸ばすスチームクローゼット、旅先で買った物を限られた荷物スペースに収めるための真空包装機、クレーンゲームなども宿泊客に人気である。コーナースイートルームとルーフトップテラスからは、東京で一番高い建物である東京スカイツリーを望むことができる。
国内と外国の宿泊客の比率は施設ごとに異なるが、浅草田原町では80%以上が海外からの宿泊客だと伊藤氏は語る。ちなみに、銀座の施設も同程度の比率で、それ以外の東京の施設では外国人客は約半数だという。
国内と外国のどちらの宿泊客の間でも、変なホテルの評価は高い。「ホテル自体がおもしろいとおっしゃる方も大勢いらっしゃいます。それと同時に、最近では、名前ほどおかしなホテルではない、快適に過ごせて手入れも行き届いていたという肯定的なご意見を多数いただいております」
立地も魅力の一つである。「外国人観光客は、本当に浅草周辺を楽しんでいます」と伊藤氏は言う。浅草は、雷門で有名な浅草寺や伝統的な町並みをはじめ、さまざまな魅力で知られている。そのため、ホテルの共用スペースや一部の客室にも日本の伝統的なモチーフを取り入れている。
東京は先端技術と伝統を併せ持つ日本の玄関口
当然、宿泊客は東京の他の地域やそれ以外の場所にも足を伸ばす。伊藤氏は「浅草自体が大人気の観光地ですが、ここを長期滞在の拠点にして東京全体を楽しまれるお客様もいらっしゃいます」と話し、このエリアには羽田空港と成田空港のいずれからも直通電車でアクセスできると付け加えた。
国内20か所の変なホテルのうち7軒が東京にあるため、何をしたいかによって宿泊先を選ぶことができる。高級志向の銀座周辺、新宿・渋谷などの人気エリア、東京ディズニーリゾートや東京タワーなどの観光スポットにアクセスしやすいホテルもある。
「東京は日本の玄関口です」と伊藤氏は言い、さらに都内のホテルから富士山観光に出かける宿泊客もいると話す。「ここは観光客にとって、日本全国を楽しむためのスタート地点なのです」
また、東京はいかにも日本らしい古さと新しさが同居する街である。伊藤氏は「外国人観光客は、浅草のような歴史的エリアで『日本を感じる』ことができたとよく言います。その一方で、東京は観光客が日本の最新技術を体験できる場所でもあります」と言う。
変なホテルは、今後も引き続き知名度を高め、事業を拡大することに集中する。伊藤氏は、そのような取組の例として、ホログラム、プロジェクションマッピング、コンセプトルームに人気アニメキャラクターを使用するなどのコラボレーションを挙げている。
便利なテクノロジーとユニークな体験が用意された記憶に残るホテルを選ぶことは、東京観光のさまざまな楽しみ方の一つである。
写真/穐吉洋子
翻訳/伊豆原弓