安全な東京の舞台裏 ポリスミュージアムで警視庁の活動を学ぶ

外国人観光客も多く訪れる
中央区京橋にあるポリスミュージアム(警察博物館)は、警視庁が運営する施設だ。入場料は無料。来館者は平日で200~300人ほど、土日祝日になると1,000人を超えるという。その内訳について、警視庁総務部広報課広報センターの担当者はこう説明する。
「外国人観光客も増えています。日本人は幼稚園児や小中学生など団体も多いですが、外国人はお一人や少人数、またご家族というケースも少なくありません。SNSで興味を持ったり宿泊先のホテルで紹介されたりとさまざまです」
そうした外国人来館者のために英語、中国語、韓国語のリーフレットが用意され、館内の各案内板にも英語の説明が併記されている。
防犯意識を高めることが重要
では、館内を案内しよう。まずは警視庁のシンボルマスコット「ピーポくん」にちなみ「ピーポくんホール」と名付けられた1階。正面玄関前には実際のパトカーが、そして中に入ると白バイや警察航空機第一号「はるかぜ1号」などが展示されている。
「小学生以下のお子さん(身長制限あり)には警察官や白バイ隊員の制服を貸し出しています。また、大人も子どもも実際に白バイやヘリに乗って記念撮影ができます」
子ども用制服は100、120、140センチメートルの3サイズ。白バイ乗車服の時はヘルメットまでかぶることができる「おまわりさんなりきり体験」は、外国人にも大人気だという。
2階は「人と街をともにまもる」というテーマで構成されている。奥にある巨大な街のジオラマでは、歩行者や自転車にとっての危険な状況や、駐車中の車をのぞき込む不審な人物の様子が再現されている。ジオラマの周囲にはディスプレイが設置してあり、重要な防犯ポイントの説明が表示される仕組みだ。

その他に、防犯対策の重要性を学べる体験型ゲームがある。ユーザーはパネルに描かれた架空の住宅の様子を見て、「照明のない車庫」「カメラのないインターホン」など、泥棒に狙われやすいと思われるイラスト付きのカードを4枚選ぶ。
すると、重要度の順に付けられた点数の合計が電光グラフに表示され、自らの防犯意識がどの程度かがわかる仕組みだ。150点の満点を取るのは難しく、ライターは80点だった。

担当者は「警察の巡回活動に加え、犯罪や事故の防止には皆さんそれぞれの協力、防犯意識が不可欠です。ここではそういった意識を高めてもらえるような情報を提供しています」と話す。
その隣には、自転車走行のシミュレーションで、安全な走行を体験して学べるコーナーもあった。自分が事故に遭わないことも大切だが、歩行者にぶつかって加害者にならないよう注意が必要だということを改めて認識できる貴重な機会だ。
指紋採取や足跡照合も体験できる
「事件・事故を解決する力」がテーマの3階では、犯罪や事故が発生した際の警察の捜査活動がリアルに紹介されている。
まず興味をひかれるのが、指紋採取疑似体験のコーナーだ。コップやスマホなどの小物アイテムから1点を選び、ハケでこするとディスプレイ上に指紋が浮かび上がる。それぞれの違いを見極め、複数表示される指紋から同じ型を選び出すゲームとなっている。時間制限もあるため、これがなかなか難しい。

「足跡を照合せよ!」と書かれたパネルでは、表示される足跡を頼りに数種類ある靴から合致するものを選ぶ。他にもタイヤ跡を見て合致するものを探すコーナーなど、限られた時間で冷静な観察力が試されるゲームもあり、子どもはもちろん大人でも夢中になるような仕掛けが満載だ。
さらに「通信指令センターのしごと」と表示されたパネルでは、通信指令センターから管轄警察署への指示や捜査員の派遣、現場での捜査活動の内容などをリアルな音声で聞くことができる。刑事ドラマ以上の緊迫感が伝わってきて、まるで捜査現場にいるかのような疑似体験が可能だ。
歴史的に貴重な資料も展示
この他、「首都をまもる~警視庁の今とこれから」がテーマの4階では、プロジェクションマッピングで事件や事故の発生状況などを映像で見ることができる。「時代とともに~警察の歩み」がテーマの5階には、警視庁の前身が設置された1874年から今日までの歴史や、日本警察の礎を築いた川路利良(としよし)大警視に関する貴重な資料などが展示されており、こちらも外国人来館者が熱心に見入っているという。
さらに同階には、殉職した警察官の氏名や遺影、階級などを顕彰する一角もある。東京の治安を守るために命を賭した警察官の存在を改めて認識し、厳粛な雰囲気に包まれているこの場に立つことも、世界共通である防犯意識を高めることにつながるはずだ。
ポリスミュージアム(警察博物館)
撮影/藤島亮