ごみの山が豊かな森へと再生する。東京港に浮かぶ「海の森公園」が2025年3月にグランドオープン

都民や企業と一緒に森を作る
海抜30mほどの高台にあり、広大な草原や林を囲むように森が広がる海の森公園。ごみと建設発生土で埋め立てられた、東京港に浮かぶごみの山に苗木を植え、美しい森に生まれ変わらせる海の森プロジェクトとして、約20年前から整備が進められてきた。
世界的に見ても海を埋め立てて作ったごみの処分場を森へと再生させることは珍しい。先例のない取組であったため、整備の段階から都民や企業、NPOの方々に参加してもらい、理解してもらう仕組みづくりが必要であったと牧野氏は語る。
「都民の方々から愛されるような、自然と触れ合える公園にしたい。そんな思いがあり、私たちはコンセプトの1つに『都民参加による協働の森づくり』を掲げ、苗木づくりや植樹を都民の皆様や企業、NPOの方々と一緒に行ってきました。公園づくりに気軽に参加していただくため、募金やイベント形式での植樹祭の開催などさまざまな施策を行い、多くの方々が参加しやすい仕組みを作ってきました」

2007年から2015年の毎年春と秋に開催された植樹イベントでは、公募で集まった人々と企業が参加。この苗木の一部には都内の公園で採取したどんぐりから育てたものが使われ、そうした試みが参加者たちの森への愛着を強固なものとした。
「この時に使われた苗木は、都内の小学生や募集により集まった苗木づくりのボランティアさんによって育てられました。やはり、植物が豊かに生育していくためには、人の手が必要です。そして実際、自らの手で植樹したり、剪定作業をすることで、『愛着が増した』『森の完成が楽しみ』といった声が多く上がっています」
限りある資源を循環し、再生させていく
海の森プロジェクトには、もう1つの大切なコンセプトがある。それが資源循環型の森づくりだ。ごみの山を森へと生まれ変わらせるには、植物が生育できるような土壌を作る工夫があったと水内氏は言う。
「この土地は、ごみの悪臭問題をクリアにするため、1,230万トンのごみと建設発生土などを交互に埋め立てたサンドイッチ構造となっています。さらに植物が豊かに生きる土壌にするため、建設発生土や堆肥を配合した植栽基盤づくりを行いました。この堆肥は都内の公園の木や街路樹を剪定する際に発生した枝葉を利用して作られていて、本来ならごみとなるものですが、これらを有効に利用することで資源循環型の森づくりを行ってきました」

環境に配慮した視点を大切に、都民や企業と一緒に作り上げてきた資源循環型の森。海からの潮風が強く吹き入れる臨海部ならではの工夫もされている。
「樹木の生育には厳しい環境だったため、海に面するエリアにある『風の森』では、強風や塩害に強いクロマツやタブノキといった樹種を植えています。また、小さい苗木が風で倒れないよう、防風ネットを設置したり、樹木を密に植えたりと、定着した樹木が育つようにしています」
さらに、昆虫や鳥など生物が集まってくるような植栽も考えられているという。
「生きものにも配慮し、昆虫や鳥が棲み処や食べ物として利用できる樹種も植えています。すでにチョウやトンボ等の昆虫やヒバリやモズといった鳥類など多くの生きものが観察されています」
いつでも新たな発見に出会える公園を目指す

東京タワーや東京スカイツリーなど、都心部を一望できる特別な景観が広がる海の森公園。現在、グランドオープンに向け、インフラの整備、遊具の設置、ビジターセンターなどの整備が進められている。それまでは立ち入ることができないが、グランドオープンイベントなどのさまざまな催しをはじめ、この先の展開を楽しみにしてほしいと水内氏は話す。
「グランドオープン後も都民協働による森づくりは続けていきます。園内には、ピクニックやボール遊びができる大きな広場、生きもの観察ができるふれあいの林、家族や友人たちと楽しめるバーベキュー施設もあります。来園のたびに新たな発見ができますので、親子連れの方をはじめ、幅広い年齢層の方々が思い思いに楽しみ、何度も来園したくなるような公園を目指したいです」
東京都港湾局 臨海開発部 海上公園課
東京都は、100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"をコンセプトに、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取組を進めています。
都民をはじめ、様々な主体との協働により、「自然と調和した持続可能な都市」への進化を目指しています。
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写真/穐吉洋子