Commerce Connect Tokyo:
フィリピンと日本を結ぶ架け橋として、ビジネスチャンスを支え続ける

二国の経済交流を深めるPCCIJの活動
PCCIJは1976年に設立され、フィリピンと日本の友好関係を深め、ビジネス交流を発展させる役割を担ってきた。現在は法人個人合わせて60以上の事業者が加盟している。会員の多くは日本の中小企業であり、フィリピン航空やフィリピン・ナショナル・バンクなど、フィリピンを代表する企業も含まれている。
「PCCIJでは、フィリピンと日本の関係を盛り上げるためのイベントや、会員同士の交流会を開催しています。フィリピンの商工会議所や政府関係の方々が来日されるときには、在日フィリピン大使館と連携して交流会を企画することもあります」と、PCCIJの主な活動についてレイエス氏は説明する。
また、年に一度フィリピンへの視察を実施し、ビジネスマッチングも行っている。これまでは主に首都マニラを訪問していたが、2024年は初めてミンダナオ島で現地の団体とビジネスマッチングを試みた。
PCCIJの母体となるフィリピン商工会議所(The Philippine Chamber of Commerce and Industry)には、フィリピン全土から3万以上の事業者が加盟しており、PCCIJは必要に応じて、日本の会員企業とフィリピン企業との連携やマッチングをサポートしている。フィリピンでビジネスチャンスを広げたい企業にとって、本国との強固なネットワークを持つPCCIJは、重要な架け橋となっている。

成長するフィリピン経済と日本との連携
2020年、「コロナショック」による急激な景気後退に見舞われたフィリピン経済だが、主に個人消費に支えられ、翌年には急回復を遂げた。その経済成長率は近隣国を上回り、ASEAN諸国でもトップクラスとなった。
近年の経済成長について、「国内消費が一番大きな要因。若者人口が多いのも強み」とレイエス氏は語る。そして「フィリピン人口の約1割が海外在住であり、海外在住者からの本国送金によって経済が支えられている側面もある」と、海外で働くフィリピン人からの送金が、国内消費を支える重要な柱になっていることを示した。
実際に、在外フィリピン人労働者の送金額は、2002年から2022年までの20年間で約5倍となっている。2022年の送金額は約330億ドルに上り、名目GDPのほぼ1割に相当する。
また、フィリピンの国内産業ではサービス業がもっとも盛んで、特にBPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)産業が発達している。多くの欧米企業のバックオフィス業務がフィリピンで行われており、国民の高い英語力が強みとなっている。

一方で、日本は独自の技術力を持ちながらも、少子高齢化による労働力減少と後継者不足という課題に直面している。優れた技術が消えゆく前に、フィリピンをはじめとする海外の人材や企業に受け継ぐことで、その技術を存続させることができるとレイエス氏は考える。外国人労働者の受け入れに関しても、今後はさらに業界を広げて体制を整えていく必要がありそうだ。唯一のハードルと言えるのは「言葉の壁」だが、AI翻訳を活用することで、以前よりもスムーズなコミュニケーションが可能になるだろう。
「フィリピンの豊富な人材と日本が誇る技術力をうまく組み合わせれば、ベストパートナーになる可能性は大いにあります」
さらに、フィリピンでは人口増加によるゴミ処理や環境汚染も問題になっていることから、「ゴミをエネルギーに変える技術や浄水技術など、日本の環境技術をフィリピンで展開できれば、大きなビジネスチャンスになる」と、環境分野での連携に期待を寄せる。
人と情報が集まる東京は、可能性に満ちている
留学をきっかけに来日したレイエス氏は、学生時代を四国と愛知で過ごした後、東京に住み始めて30年近くになる。地方都市にも住んだ経験のあるレイエス氏にとって、東京という都市はどのように映るのだろうか。
「東京は交通が発達していて、すごく便利です。24時間何でも手に入るし、食べ物も美味しい」
渋滞による遅延が当たり前となっている車社会のマニラと比べて、東京の発達した交通インフラは驚くものがあるという。また、熱帯性気候に属し年間を通して温暖なフィリピンにはない、季節の移り変わりを感じられるのも大きな魅力である。
そして、レイエス氏自身が感じる東京の最大の魅力は「可能性」だ。「東京は、人と情報が集まる場所。世界中の人と出会える東京は、さまざまな可能性に満ちている都市です」

東京都に対しては、「民間企業同士の交流を促す仕組みがあるといい」と語るレイエス氏。「政府間の交流も大事ですが、民間レベルでの交流からビジネスチャンスが生まれやすい。また、フィリピン企業の東京進出やスタートアップを支援する施策があれば、お互いの経済成長をさらに加速できるでしょう」
2024年から制定された金融・資産運用特区だけでなく、たとえばIT特区など、多分野において経済成長を後押しする制度の拡充が有効だと提言した。
ビジネス拡大に一歩踏み出すサポートを
2026年の設立50周年に向けて、PCCIJは会員数の増加と組織基盤の強化を目指す。
これまでは人材サービスやフィリピンからの輸入を目的とする事業者が多かったが、最近ではフィリピンのマーケットを視野に入れた製造業や小売業の企業からも相談が増えているそうだ。
「フィリピンとのビジネス拡大を目指す企業が、PCCIJを通して一歩踏み出すきっかけを得られればうれしい」
経済協力をはじめとするアジア諸国と日本の関係強化は、今後ますます重要になるだろう。PCCIJはフィリピンと日本の架け橋として、これからも両国の経済発展を支える重要な役割を担っていく。