かつてない浮世絵体験:東京でのイマーシブ(没入型)展覧会

浮世絵の世界へ足を踏み入れよう:展覧会の見どころ
この展覧会はテーマごとに九つの空間に分かれており、それぞれ浮世絵の独特な観点を味わえるようにデザインされている。見どころの一つは「藍」(あい)の空間で、日本の伝統的な版画によく見られる深い青色へのオマージュとして、藍色が空間を覆っている。観客は北斎の有名な『冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏』の中に入り、流れるようなアニメーションによって波の動きを感じることができる。
「瀧」(たき)の空間では、北斎の作品『諸国瀧廻り』を展示している。鏡張りの壁とデジタル・プロジェクションが、とめどなく流れ落ちる水のイリュージョンを生み出し、作品の奥行きとダイナミズムを高めている。このアプローチにより、静的な木版画に動きが吹き込まれ、作品のスケールの大きさが感じられる。
浮世絵に描かれた女性像を讃える「麗」(うるわし)の空間では、喜多川歌麿の作品を展示している。歌麿が描いた女性の優美さと気品が、鮮やかな色彩、ダイナミックなアニメーション、音楽によって生き生きと表現され、観る者を江戸時代のファッションシーンへといざなう。歌麿は浮世絵界を代表する絵師となったが、その芸術性は生地の柄、髪型、顔の表情など細部へのこだわりによってうかがうことができる。
「彩」(いろどり)の空間では、北斎と広重の作品を通して日本の四季が紹介されている。春には繊細な桜、夏にはみずみずしい緑、秋には燃えるような赤と暖かい黄色の紅葉、冬には静謐(せいひつ)な雪景色が、巨大なパノラマスクリーンに次々と映し出される。
浮世絵の粋な側面に興味がある人には、ユーモラスな遊び絵や戯画を展示する「遊」(あそび)の空間があり、江戸時代の芸術の軽快で気まぐれな要素が紹介されている。この空間には、金魚すくいや輪投げといった日本の伝統的な遊びを体験できるインタラクティブなコーナーもある。この展覧会では、浮世絵の歴史的側面、特に江戸の町の描写についても掘り下げている。このセクションでは、浮世絵がいかに当時の日常生活、風俗、町の風景を記録する役割を果たしたかを紹介している。
侍ファンには、ドラマチックで激しい戦いを描き、この時代のエネルギーを感じられる武者絵を展示する「豪」(ごう)の空間がおすすめだ。
四季と伝統的な風景の発見
この展覧会の最も魅力的な特徴の一つは暖簾(のれん)で仕切られた空間で、暖簾をくぐると、日本の伝統的な屏風(びょうぶ)の裏側をのぞき見るように、さまざまな場面や絵画の空間が現れる。空間が静的ではなく一つひとつ展開していくことで、自ら発見する喜びを感じられる。この繊細で没入感のある仕掛けにより、来館者は親しみをもってインタラクティブに作品と関わることができる。それぞれの空間が新しい視点を示すことで、浮世絵が単に静的な画像ではなく、重層的な視覚効果を通して物語を語るものだということを改めて強調している。最後の空間「雅」(みやび)では、浮世絵の過去と現在を結びつけ、ポップカルチャーに与える永続的な影響力を探っている。浮世絵に繰り返し登場するモチーフの富士山が中央に映し出され、デジタル・プロジェクションが四季を通じて富士山をさまざまに変貌させる。環境に溶け込んだ静かな音楽が、色の移り変わりに合わせて流れている。

浮世絵に命を吹き込む:展覧会の背後にある理念
静止画に命を吹き込むのは決して簡単なことではない。この展覧会の企画制作を担当した株式会社一旗の代表取締役、東山武明氏は、浮世絵をアニメーション化するには、元の版画に忠実なビジュアルを保つため細部にまで細心の注意を払う必要があったと説明する。「浮世絵のアニメーション化は大変でした。オリジナルの作品の雰囲気を忠実に再現するため、3DCGアニメーションを駆使しながら、人物のすべての動きを手作業でつなぎ合わせなければなりませんでした」
東京そのものがそうであるように、この革新と伝統の微妙なバランスが展覧会のデザインの核となっている。「浮世絵を今の時代に合ったものにしたいと思いました」と東山氏は付け加え、現代の観客が浮世絵に親しめるようにすることの重要性を強調した。「私たちは、観客に違和感なく鑑賞してもらえるように、さまざまなテーマでこの展覧会を作り上げました。観客はオリジナルの浮世絵を鑑賞し、没入感とともに作品を体感することができます」
天王洲を会場に選んだのも、この展覧会と江戸とのつながりを強めるためだ。東京の新興アート地区として、このエリアは歴史的な芸術作品と現代アートをつなぐ架け橋となっている。「この展覧会は東京で開催されているため、江戸がどのようなところであったかを見て、その魅力を理解してもらいたいのです」と東山氏は説明する。「東京の新しいアートの中心地である天王洲は、私たちの展覧会にぴったりの場所でした」

東京での圧倒的な成功を受けて、「動き出す浮世絵展」はすでにその裾野を広げる準備をしている。「今年の夏、この展覧会が福岡と台湾で開催されるので、とても楽しみにしています」と東山氏は語る。その評価は海外にも広まっており、最近、日本文化を世界に広めるために政府が支援するクールジャパンアワードを受賞した。東山氏は「私たちにはまだたくさんの計画があり、発表するのが待ちきれないほどです」と興奮気味に明かした。この浮世絵への没入型アプローチは、日本の伝統芸術を再考する、より広いムーブメントの始まりに過ぎないのかもしれない。
この展覧会は、浮世絵の世界に足を踏み入れる貴重な機会だ。浮世絵を初めて体験する人にも、新たな視点から浮世絵を再発見する人にも、日本で最も有名な伝統芸術の一つである浮世絵を通して、視覚的に美しく、没入感のある旅を届けている。
提供:株式会社一旗
東山武明
動き出す浮世絵展 TOKYO
https://www.ukiyoeimmersiveart.com/tokyo写真/藤島亮
翻訳/浦田貴美枝