人と街をつなぐ、高速道路の再生プロジェクトが発動!
この記念すべき大会のマラソン競技を、道路としての役目を終えて4月に廃止した東京高速道路(KK線)を主体としたコースで実施することが決定。選手たちの晴れの舞台となるKK線の歴史をひもとき、未来に向けたプロジェクトの詳細を明らかにする。

通行料無料の高速道路の誕生秘話
KK線は、1966年に全線の供用を開始した全長約2キロメートルの自動車専用の道路だ。ユニークなのは、民間企業が建設、運営し、しかも通行料が無料だったという点。なぜそれが可能だったのか。
「道路下を賃貸スペースとして活用し、その収益を道路の建設費と維持管理費に充てていたからです」と解説するのは、KK線を建設・運営している東京高速道路株式会社の常務取締役プロジェクト推進室長、花木万里子氏だ。
「KK線は、民間の活力によるインフラ整備、いわゆるPFI(Private Finance Initiative)の先駆けともいえる、画期的な事業スキームによって実現しました。KK線という呼び名は当時、日本では株式会社のことを現在のようなCo., Ltd.ではなくK.K.と表記していたことから、接続する首都高速道路と当社が運営する道路を区別する意味でこのように名付けられました」
賃貸スペースには約380の飲食店や物販店、事務所などが入居し、賃貸収入で公共インフラを無料で供用する仕組みが今も続いている。

江戸時代には舟運に利用されていた堀や川を埋め立てて、戦後急速に発達した車社会を支える道路として生まれたKK線は時を経て、首都高速道路の日本橋区間地下化事業に伴い廃止が決定。新たな道を歩むことになった。

みんなでつくる、人のための公共的空間
「KK線は、車のための空間から人のための公共的空間として生まれ変わります。私たちはこのプロジェクトを『Roof Park Project』と名付けました。最大の特徴は、既存の道路を壊さず、再生して新たな価値を提供することです」
このプロジェクトは、一人の専門家に委ねるのではなく、建築家やクリエイターなどさまざまな領域の専門家が、自らの領域を超えてアイデアを出し合いながら検討を進めていくという。
「共創プラットフォームによって検討過程もオープンにしながらプロジェクトを推進し、地域の方々をはじめこのプロジェクトに興味をもってくださる多様な人々に広く参加していただく機会を設けたいと思っています」

本イラストは検討内容をイメージ化したものです
ニューヨークでは、高架式の廃線跡を空中緑道として再生させたハイラインが多くの観光客でにぎわっているが、花木氏はハイラインと大きく異なるのは、過去との連続性だと指摘する。
「ハイラインは、廃線後ににぎわいが途絶えた場所に公共空間を整備し、新たなにぎわいを創出しています。Roof Park Projectは、京橋、銀座、新橋など江戸時代から歴史とにぎわいが続く魅力ある場所に公共空間を整備することで、周辺のまちと共に新たな価値や魅力を創出し、さらに未来へとつなげるプロジェクトです。この場所がもつ個性や可能性を最大限に生かしたいと思っています」
KK線から広がるパノラマビューに感動
KK線がもつ可能性は、これまで開催されたイベントでも証明されている。

「ウォーキングイベントに参加していただいた方たちからは、これまで見たことのない景色だとのご感想をいただきました。よく知っているはずの街が、この高さから眺めるとまるで違って見えます。新幹線が間近で走っていることに感動する方も多くいらっしゃいました。日比谷公園や数寄屋橋の交差点、国会議事堂など、KK線からの景色は見どころ満載ですので、デフリンピックのマラソン選手にも楽しみながら走っていただけると思います」
全区間の整備完了は、2030年代から2040年代を予定しているが、一部区間の早期開放を目指す。プロジェクトはスピードや効率を優先するのではなく、さまざまな人が関わり、対話しながら丁寧に進めることを大切にしている。
都心に位置する緑豊かで開放的な空間の中で、アートやスポーツなど、様々なことができる可能性を秘めた、訪れるたびに新しい発見がある場所に生まれ変わる。このプロジェクトが東京の新たな価値や魅力の向上につながることを期待したい。
花木万里子
KK線再生に向けた取組み(東京高速道路株式会社)
https://www.tokyo-kousoku.jp/project/写真/穐吉洋子