盆栽の価値に目覚め、文化的ルーツを探る東京の高校生

盆栽:入口は違えど同じ目標に向かって
700年頃の中国で「プンサイ」として始まった盆栽は、12~14世紀に日本に伝来し、徐々に全国に広まり現在の東京の地にも伝わった。
都立園芸高等学校では、盆栽部の部員が、この貴重な歴史ある芸術を生き生きと輝かせている。
盆栽部に入った理由について、田中梨七さんはミニ盆栽ワークショップに参加したときに興味を持ったと言う。また、吉岡璃子さんは、盆栽という他にはない珍しい部活動ができると思ったと言い、吉田湧一さんは自然が大好きだからと話す。
部員たちは週3回、放課後に水やり、施肥、剪定(せんてい)、植え替えといった基本的な盆栽管理の技法を学ぶ。

失敗を恐れず盆栽の手入れを楽しむ
生徒たちは入部するまでほとんど盆栽の栽培経験はないが、日々の管理や観察によって、盆栽技術が上達してきたという。
「初めて盆栽を扱ったときは、木の生命力を感じたことが強く印象に残っています」と吉岡さんは振り返る。「また、枝が無秩序に見えないように剪定するなど、盆栽の手入れが実はどれほど難しいのかを実感しました」
吉田さんも「枝の伸びる方向、葉の形、剪定のタイミングなど、木は予想以上に繊細でした」と話す。「枝を切る位置を間違えると、修復できないほどのダメージを与えてしまう可能性があります」
田中さんは「それに、水をやりすぎたり、日なたに放置したりしないよう注意しなければなりません」と付け加えた。
しかし、生徒たちは盆栽の圧倒的な難しさにひるむことなく努力を続け、恐れず進めば必ず大きな成果につながることを知った。
「以前は、盆栽の手入れができるのは熟練の職人だけだと思っていましたが、私にもできることがわかりました。しかも、本当に楽しいです」と吉岡さんは言う。「盆栽一つひとつに個性があるので、最適に成長させられると思う方向へ剪定するには、木のことをよく知る必要があります」

盆栽の歴史を尊重しつつ盆栽愛を分かち合う
生徒たちは、地域の公園で行われたワークショップで盆栽のインストラクターを務めた経験が、技能を実践する自信を大いに深めてくれたと話す。
吉岡さんは、ワークショップの参加者が盆栽を育てることに興味を示したのを見て、自分自身もこの芸術に対する思いを新たにしたと言う。
「盆栽に興味のある人はそれほど多くありませんが、このようなワークショップで、ぜひやってみてと呼びかけることができます」と田中さんは言う。「私たちが手入れしている木の中には樹齢50年以上のものもあり、1000年でも生きられるので、この歴史ある技を絶やしてはいけないという大きな責任を感じます」
吉田さんも「この歴史を未来の世代に伝えるのが私たちの役目です」と話す。「自分で始める前は、盆栽は年配の人だけの趣味だと思っていました。でも今は、あらゆる年齢の人のものだと理解しています」

世界のつながりを深める手段としての盆栽
1908年創立の都立園芸高等学校には、徳川家光公が愛でた2本の五葉松がある。江戸時代以前のものとされる2本はいずれも樹齢約500年で、1999年に日本盆栽協会より貴重盆栽に指定されている。

盆栽部の生徒たちによると、この芸術的技法は国際関係の促進にも重要な役割を担っている。
吉田さんは「海外の人たちに、私たちが東京で開催しているような盆栽ワークショップを経験してもらえたらと思います」と語る。彼は高校を卒業したら、ノルウェー旅行に行ってサイクリングと釣りをし、さらにインド、米国、欧州など世界中をバックパッキングしたいと言う。さらに、行った先々で人々に盆栽を教えたいと考えている。
一方、田中さんは「ソーシャルメディアを使って、効果的な写真や動画で海外の人たちに盆栽を紹介したいと思います」と話す。
吉岡さんは「世の中にはいろいろな盆栽があるので、出かけて行って自分に合った盆栽を見つけることをお勧めしたいと思います」とし、企業や美術館などが盆栽をテーマとしたイベントを積極的に展開して、国内外で盆栽への関心を広めてくれることに期待を寄せていると言う。
また、吉田さんは、盆栽への関心を拡大するにはソーシャルメディアが重要な手段になりうることは認めつつも、直接植物に触れることは、より自然な暮らし方を見つけるきっかけにもなると指摘する。「僕自身も友人に、スマートフォンを置いて盆栽の世話をするよう勧めています。現在のデジタル社会の中で、人々がゆったりと盆栽を手入れすることを覚え、生活のバランスを取れるようになったらいいと思います」

都立園芸高等学校盆栽部
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写真/藤島亮
翻訳/伊豆原弓