東京2025世界陸上、環境負荷低減と次世代育成に注力
1983年のフィンランド・ヘルシンキ大会から始まった世界陸上は、2025年9月の本大会で20回目の節目を迎えた。東京での開催は、1991年以来2回目だ。
本大会では、「東京ドリーム」「東京ブランド」「東京モデル」の三つのキーワードでビジョンを表現。三つ目の「東京モデル」では、持続可能な国際スポーツ大会の新しい世界標準を確立するという目標を掲げた。
生活用品でサステナビリティを実現
大会運営組織である東京2025世界陸上財団は今年4月、大会スポンサーや東京都と連携したサステナビリティプランを公表。この取組について、同財団の庄司直樹サステナビリティ企画調整課長に話を聞いた。
プランの一環として行われた取組の一つが、家庭の廃食用油を回収し、持続可能な航空燃料(SAF)の原料として再利用して、大会関係者の移動に伴う二酸化炭素(CO2)排出量の削減に貢献するというプログラムだ。同財団は東京都が実施する、2025年5月2日~10月31日のキャンペーンに協力。ブダペスト2023世界陸上のやり投げ金メダリストで、東京2025世界陸上ではアスリートアンバサダーを務めた北口榛花選手の協力を得て、周知を図った。
廃食用油は都内約80カ所で集め、回収促進に向けた工夫も行った。フライパンの油を直接ペットボトルに注ぐのは難しいため、東京都が制作した「江戸前じょうご」を都の明治公園ブースや世界陸上財団ブースで大会期間中に配布。「江戸前」という言葉には「江戸の流儀」という意味がある。油を無駄にせずに飛行機の燃料にすることは、サステナブルな社会を実現していた江戸の文化を体現していることから名付けられた。
庄司氏によると、国立競技場や練習会場等で使用されたペットボトルは回収されて、ワールドアスレティックスのグローバルサポーターである大塚製薬によって新たなペットボトルにリサイクルされる。パリ2024オリンピックなどでは会場へのペットボトル持ち込みが禁止されていたが、東京2025世界陸上では、9月の猛暑の中でこまめな水分補給を促すため、ペットボトルやマイボトルなどの持ち込みを認めた。
暑さ対策にも工夫
世界陸上財団によると、観戦者の暑さ対策の一環として、給水所、自動販売機、クーリングスポット、ミストエリアなどの位置を示した「暑さ対策ガイドマップ」を東京都と連携して作成し、競技会場周辺や大会公式ウェブサイトで周知した。
その他の暑さ対策として、「ミストクルー」と呼ばれるスタッフが会場周辺を巡回して冷たいミストを散布。選手の休憩用テントには内部の温度を下げる放射冷却素材を使用したり、空気中の水蒸気から水をつくる製水機を使用してミストを生成したり、競技運営補助者に対して熱中症のリスクを警告するウエアラブルデバイスを提供した。
「ワールドアスレティックスのAthletics for a Better World Standard(ABW基準)が作成されたのは昨年なので、世界陸上において、これに基づき大会運営が評価されたのは今回が初めてでした」と庄司氏は説明する。「この基準は、大会を120点満点で評価する内容です。本大会では、われわれのサステナビリティプランで最高評価の『プラチナ』を獲得することを目指しました」
次世代へ渡すバトン
多様性関連の施策としては、多くの人に夢や希望を届ける大会にするべく、子どもの大会参画に力を入れたという。陸上観戦や競技体験を通じ、子どもたちにスポーツの素晴らしさを感じてもらう取組だ。
ワールドアスレティックスの「Kids' Athletics」プログラムとも連携し、子どもたちにメダルセレモニーでの選手のエスコートをしてもらったり、東京都と連携して「こども記者」に選手らをインタビューしてもらったりなど、さまざまなユース企画を実施した。
これらのプログラムは、2024年8月の「こどもワークショップ」で子どもたちが出したアイデアを基に企画された。
「大会で活用されている最先端の環境技術に若者が触発されることも願っていました」と庄司氏は語る。
「私たちの目標は、大会の持続可能性に関する取組を通じて、これらの革新的な技術を世界にPRすることでした」
東京2025世界陸上競技選手権大会
東京2025世界陸上競技選手権大会
https://worldathletics.org/competitions/world-athletics-championships/world-athletics-championships-tokyo-2025-7190593写真/井上勝也
翻訳/遠藤宗生




