次世代型アニメスタジオが拓く、IP産業の新たな地平

 AIはアニメの制作現場にも変革をもたらしている。作業工程が大幅に短縮し、2分から3分程度のショートアニメなら1~2週間で制作できるようになった。株式会社TOKYO EPICが見据えているのは、さらにその先だ。東京発スタートアップは、IP(知的財産)ビジネスをどのように展開していくのか。
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IPビジネスのグローバル展開を目指す株式会社TOKYO EPICのCEO和田亮一氏

スマホで視聴する縦型アニメを制作

 TOKYO EPICは、アニメを制作することが最終目標ではなく、制作したアニメを起点としてゲームや音楽、グッズなどさまざまなメディアや商品を事業化し、世界に展開することを目指すスタートアップだ。CEOの和田亮一氏は、ビジネスへの思いをこう語る。

 「これまでアニメの制作には莫大な資金や大規模な仕組みが必要でした。そのため収益構造が複雑になり、どれだけ大ヒットしてもクリエイターに利益が十分に分配されないケースが多く発生していました。しかし近年、AIの進化によってアニメ制作にかかる時間や工程を大幅に短縮できるようになり、今までアニメを作りたくても作れなかった僕がこの事業を行っているように、クリエイター主導でIPを育てていく環境が整いつつあると感じています」

 取り組んでいるのが、PocketANIMEと呼ばれるショートアニメプロジェクトだ。

 「スマートフォンで視聴できる数分間の縦型アニメを中心に制作、配信しています。従来の横型アニメとは構図が大きく異なり、縦画面ならではの構図や演出の表現によって従来のアニメとは異なる没入感が得られます。近年、漫画を縦読みするWebtoonから世界的なヒット作品が続々と生まれています。PocketANIMEもその流れに続いてスマホに最適化した縦型ショートアニメという新たな市場を切り拓いていきたいと考えています」

TOKYO EPICが運営するPocketANIMEで制作されたショートムービー Movie: TOKYO EPIC

 和田氏はPocketANIMEを既存のアニメに置き換わるものではなく新たなフォーマットと考えている。

  「例えばSNSで公開した作品が大きな反響を呼べば、長編アニメや映画、ゲームへの展開、あるいはWebtoon化やROBLOXでの展開など、IPとしての多角的な連携が可能です」

 制作の全てをAIが担うわけではない。

 「クリエイターが考えた企画と脚本をもとに、制作を進め、カットごとの作画やカット編集などでAIを活用します。さらに声や音響などを加えた最終編集をクリエイターが担当します。やはり企画や脚本は人間が考えたものでないと人の心を動かすような作品は生み出せません。それが作品のオリジナリティにもつながります」

 AIの著しい技術進化に対応するためには、クリエイターが知識をアップデートし続けることも必要だ。また創作現場でのAIの活用には、著作権保護の観点から慎重な運用が求められる。

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「AIの慎重な運用を心掛けている」と和田氏

 「TOKYO EPICでは、文化庁や内閣府の指針に基づいて制作を進めています。また著作権侵害のリスクが指摘されるツールの使用は避けるなど、慎重な運用を心掛けています」

 AI ツールの適切な運用は、自分たちのアイデアが外部に漏れることを回避することにもなる。

カンヌで世界初のAI映画専門国際映画祭を開催

 世界でもAIを使った映画への期待が高まっている。2025年4月にはアップル社の元COOマルコ・ランディ氏が創設した世界初・世界最大のAI映画専門国際映画祭「WORLD AI FILM FESTIVAL 2026(WAIFF)」を、フランス・ニースで開催。53カ国から1,500本超のAI映画がエントリーした。

 2026年4月にはフランス・カンヌでの開催が予定されており、AI映画やAIアニメーションなど複数カテゴリーでの作品紹介が計画されている。

 それに先立ち、3月12日、13日に「WORLD AI FILM FESTIVAL 2026 in KYOTO」が開催予定だ。予選はブラジル、韓国、中国、そして日本で実施され、国内開催はWAIFF日本代表を務める和田氏が主導し、4月にカンヌで開催される本選につながる選考機会を創出する。

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「GLOBAL STAGE HOLLYWOOD 2025」のセッションに登壇した和田氏(中央) Photo: courtesy of TOKYO EPIC

スタートアップ支援が充実する東京

 こうしたTOKYO EPICの挑戦を支援しているのが、東京のスタートアップ・エコシステムだ。東京には、資金調達からコミュニティの形成、拠点の提供、そして起業家同士のネットワーク構築に至るまで、スタートアップを多角的に支えるエコシステムが存在する。

 オフィスとして使用している東京コンテンツインキュベーションセンター(TCIC)は、東京都が運営する起業家やスタートアップ向けの入居型創業支援施設。低廉な家賃で、設備も充実したレンタルオフィスを提供するだけでなく、常駐の起業支援メンバーが、創業期まもない入居者にワンストップの経営支援等を実施する。

 「TCICが提供するプログラムへの参加などが、投資家との橋渡しになり資金調達が実現しました。海外イベントへの登壇やマレーシアの私立大学とのパートナーシップ締結などのきっかけもいただいています」

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TCICは、コンテンツ・クリエイティブ関連産業に特化した東京都直営の創業・起業支援施設

 「東京は、スタートアップ支援の仕組みが整備されていてビジネスパートナーも見つかりやすい環境にあります。またアニメ界で『東京』は、世界に通用するブランドです。TOKYO EPICという社名を誇りに、今後グローバル市場で勝負していきます」

 東京から、PocketANIMEの挑戦が始まる。

和田亮一

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株式会社TOKYO EPIC代表取締役/CEO、WORLD AI FILM FESTIVAL(WAIFF)日本代表。映画「カメラを止めるな!」共同原作者。大学や研究機関・企業と連携し、創作と産業、教育を横断するプロデューサーとしても国内外で活動。

株式会社TOKYO EPIC

https://www.tokyo-epic.com

取材・文/今泉愛子
写真/藤島亮