東京の森と「とうきょうの木」商品を紹介するショールーム

 東京と聞いてほとんどの人が思い浮かべるのは、都市の明かりが煌々と広がり、鉄道網が複雑にうねり、群衆がせわしなく行き交う光景だ。しかし、この大都市の西側には、実に5万ヘクタール以上もの森がある。TOKYO MOKUNAVI(モクナビ)ショールームでは、都市部で東京の森林や「とうきょうの木」商品の認知度を高めるため、VR体験や木(材)製品の展示、ワークショップなど、訪れる人にさまざまなアクティビティを提供する。
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「とうきょうの木」で作られたさまざまな木製品が並ぶショールーム

テクノロジーとワークショップで東京の森とつながる

 新宿の中心街にあるTOKYO MOKUNAVIは、都心から西に約50キロ離れた多摩地域の森林や「とうきょうの木」商品の周知に取り組んでいる。2023年9月にオープンしたショールームは、東京都産業労働局が関係者と協力して進める取組である。

 東京都産業労働局農林水産部の森林課長の鐙(あぶみ)美知子氏は、「青梅市に多摩産材情報センターを置き、多摩地域で生産される木材に関する事業者向け情報を提供しています」と説明する。「しかし、一般の消費者に東京産の木で作られた木材製品や東京の森林について知ってもらえる場所を都心部に作りたかったのです」

 TOKYO MOKUNAVIでは、多摩地域の森で育てられた「とうきょうの木」から作られた製品を紹介している。

 ショールームには、木製のブラインド、椅子、コースターなどのさまざまな 「とうきょうの木」商品が展示されている。また、春の桜や秋の紅葉など、多摩の森の美しい風景を紹介する映像投影が目を引く。1回500円のガチャは、さまざまな木製品を提供しており、子どもにも大人も大人気だ。

 TOKYO MOKUNAVIでは、常設展示や企画展示のほかに、各種ワークショップや多摩地域で開催される現地イベントも用意している。ワークショップでは、これまでに、木彫り、こけし作り、木のたまごの色塗りなどを開催している。イベントでは、森の中でのシネマ上映会、林業体験、森林でのヨガ体験などのYouTuberとのコラボレーション企画を行っている。

 TOKYO MOKUNAVIのスタッフである武井富美子氏は「TOKYO MOKUNAVIのワークショップやイベントは、木の美しさを伝え、コミュニティを育んでいます」と話す。ショールームの企画は、家族連れ、特に小さな子どものいる家族に人気だという。

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TOKYO MOKUNAVIの目標と取組について話す鐙氏と武井氏

魅力的で役に立つ森林

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 TOKYO MOKUNAVIは、東京の森林や木材製品の良さを紹介している。例えば、東京産の木は軽量のスギやヒノキが多く、日本の高齢化社会を支える力になりうると武井氏は言う。「スギは本当に軽いので、スギでできた椅子や家具は、高齢者でも簡単に動かすことができます」

 ショールームでは、木製品を紹介するほかに、降水の貯留や水質の浄化、土壌の浸食防止、二酸化炭素の吸収など、森林の機能が人々の生活を支えていることを説明している。森は、ハイキングやキャンプなどのレジャー活動の場にもなる。

 鐙氏は「森に入ると、素晴らしいリフレッシュ効果が得られます」と話す。また、東京に所在する多くの企業が、CSR活動の一環として森林関連プロジェクトを手掛けており、東京都もそのような取組を支援促進しているという。

 さらに、東京の森には、シカ、サル、めったに見られないカモシカなど、多様な野生動物が生息している。カモシカは日本政府により特別天然記念物に指定されている。

 東京の林業には長い歴史があり、多摩地域の木材は江戸時代から首都の構築と再建に利用されてきた。近年では、多摩地域の森林の約60%が、建材用の針葉樹として使えるスギやヒノキに植え替えられている。

 現在、日本の森林の約40%は針葉樹林だが、国産材が安価な輸入材と競争していくためには、国や自治体による支援など、特別な施策が必要である。例として、東京都は多摩産材や国産材を一定量使用する施設を補助している。

 鐙氏は、「私たちは東京の木材や東京の森林の認知度を高めるため、都心部で注目される中高層ビルに多摩産材を利用してもらうよう懸命に取り組んでいます」と話す。

 こうした支援もあって、多摩産材の伐採と利用は、2006年度の2,900立方メートルから2021年度には1万6,000立方メートル以上に増加した。「今後も利用を拡大していきたいと考えています」と鐙氏は言う。

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TOKYO MOKUNAVIショールームでは、多摩の森の映像が来場者を出迎える

森林と林業が直面する課題に取り組む

 TOKYO MOKUNAVIショールームは、これからも東京都民にとって身近で関心の高いコンテンツを提供していきたいと考えている。鐙氏がテーマの候補に挙げるのが、花粉発生源対策である。東京に暮らす人々の約半数が、スギ・ヒノキの花粉症と推定されている。

 針葉樹が伐採されると、空いた土地にはさらに針葉樹の苗木が植えられることが多い。この際に、東京都は花粉の放出量が少ない品種に置き換えることにより、アレルギーの軽減を目指すと鐙氏は説明する。

 花粉のほかに、日本の林業には働き手の高齢化の問題もある。(比較的)低賃金で屋外での肉体労働であることから、若い働き手、特に家族を支える必要のある人からは敬遠されがちである。

 若者の間で林業への関心を高めるため、TOKYO MOKUNAVIショールームは、チェーンソーやハーベスタ(高性能林業機械)を使った木の伐採作業に挑戦するVRアクティビティを提供している。

 「以前は、木を伐採するには、多人数で作業する必要がありました。しかし、機械の導入によって、ハーベスタを操作して一人で伐倒、枝払い、輸送までできるようになりました。VR体験によって、若い人が林業をキャリアパスの候補として考えてくれたらと願っています」と武井氏は話す。

 東京の林業の明るい未来を思い描きながら、鐙氏はTOKYO MOKUNAVIからのメッセージを次の言葉に込めた。「東京の森へ行こう、とうきょうの木を使おう!」

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ハーベスタで木を伐採するシミュレーションゲーム

鐙美知子氏(左)、武井富美子氏(右)

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東京都産業労働局では、東京の森林と「とうきょうの木」の恵みを感じてもらうための情報発信拠点として、体験型ショールームTOKYO MOKUNAVIを運営しています。

東京都産業労働局農林水産部森林課長 鐙美知子

TOKYO MOKUNAVIスタッフ 武井富美子

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東京都は、100年先を見据えた"みどりと生きるまちづくり"をコンセプトに、東京の緑を「まもる」「育てる」「活かす」取組を進めています。
都民をはじめ、様々な主体との協働により、「自然と調和した持続可能な都市」への進化を目指しています。
https://www.seisakukikaku.metro.tokyo.lg.jp/basic-plan/tokyo-greenbiz-advisoryboard

取材・文/アナリス・ガイズバート
写真/穐吉洋子
翻訳/伊豆原弓