日常の国際交流:東京からグローバルなつながりを

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 東京は世界中の人と文化が交わる都市で、国際交流が日常生活の一部となっている。HelloWorldはこの環境を生かして、まちなか留学を提供している。日本人の参加者をすでに日本に住んでいる外国人とつなぐプログラムで、主に児童・子どもが対象だが、大人も参加可能だ。海外留学を一度の週末で体験できるという、留学の新たな形を提案するものだ。沖縄から始まったこのプログラムは、有意義な異文化交流体験に、長期間の海外留学や高いコストは必ずしも必要ではないという考えのもとに創設された。
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HelloWorldのまちなか留学プログラムの参加者は、日本に住む外国人の家でのホームステイを通じて国際交流を体験する Photo: courtesy of HelloWorld

拡大の場としての東京

 HelloWorldが成長しても、この考え方に変わりはなかったが、その規模と状況は変化してきた。東京にオフィスを構えると、地域限定で始まった事業は、より複雑な都市環境での実証の場へと移行した。HelloWorld事業連携推進室マネージャーの高橋優氏は、東京は魅力的な機会にあふれた街だと語る。「東京には、他の地域とは比べものにならないほど多くの外国人が居住しています。それだけさまざまな国のホストファミリーが多く、子どもや学生にとっては、自然な日常環境の中で異文化に出会う機会が多いということです」

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渋谷スタートアップサポートでHelloWorldの東京進出について話す高橋優氏

 HelloWorldの事業拡大にあたり東京が果たす役割は、単に都市の規模が大きいということだけではない。人、アイデア、組織等が高密度で集積している。東京には、ほぼすべての国や地域からの住民がいるほか、多くの大使館、インターナショナルスクール、大学があり、区市町村も近年グローバル教育と多様性を重視するようになっている。HelloWorldにとっては、幅広い年齢層や状況でプログラムを試行できる環境が生まれている。

 東京でHelloWorldは、学校、地方自治体、企業といった多様なパートナーと協力して、まちなか留学やまちなかENGLISH QUESTといった既存プログラムの範囲を拡大している。まちなかENGLISH QUESTは課題ベースの学習に重点を置き、参加者は文法だけにとらわれず、英語を使った問題解決やアクティビティといったミッションに挑戦する。高橋氏は「英語に自信のない子どもでも、コミュニケーションに目的があれば興味を持って参加するようになります」と言う。

 HelloWorldのデジタルプラットフォームであるWorldClassroomも同様の変化を反映している。学校向けに設計されたWorldClassroomは、AI支援型のスピーキング練習と、さまざまな国の教室をライブでつなぐオンライン交流を組み合わせる。国際交流にテクノロジーを統合することで、学校にとっての障壁を引き下げながら、教師の負担も軽減することを目指す。2025年現在、各地の教育委員会と連携して全国の数百の学校にWorldClassroomが導入されている。

ワークスペース以上のもの:NEXs Tokyoにおけるネットワーキングと戦略的支援

 HelloWorldの東京進出は、次の成長フェーズに向けて検討された戦略的一手だった。そのきっかけとなったのは、地域を超えた事業連携の創出を目指す東京都のスタートアップ支援事業、NEXs Tokyo連携事業創出プログラムである。HelloWorldは2023年にこのプログラムの第6期受講企業に採択され、ワークスペースや知名度向上以上の価値を得た。

 高橋氏は「私たちにとって、NEXs Tokyoはさまざまなステークホルダーとつながるきっかけでした。すでに教育、テクノロジー、社会的インパクトについて考えていた他のスタートアップ、大企業、自治体等のパートナーと関係づくりができました」と話す。こうした関係は、単なる教育サービスの提供者ではなく、グローバル志向のコミュニティの育成を目指す自治体や支援機関にとってのパートナーとして、自らの価値を明確に伝えることにつながっている。

 NEXs Tokyoは、スタートアップの急速な成長を後押しする一方で、サステナビリティや環境変化への適応力について考えるよう促した。急成長という明確な目標を持って東京へ進出したHelloWorldにとって、これは事業内容の調整だけでなく、事業拡大を後押しする新しい協働の形を発見する機会にもつながった。これらの協働関係によって戦略的選択肢が広がり、長年力を入れてきたアクセスのしやすさも大切にしながら成長を追求できるようになった。

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学生たちは、オンライン交流とAI支援型英語学習を組み合わせたHelloWorldのWorldClassroomプラットフォームを通じて海外の仲間とつながっている Photo: courtesy of HelloWorld

国外でも日常的な交流を

 東京が中心拠点とはなったが、HelloWorldが見据えるのは首都だけではなく、また日本だけでもない。同社は国内での拡大と並行して海外での機会も模索しており、台湾で進めている初期段階の取組などもある。高橋氏は、これは方針転換ではなく、企業としてのアプローチを自然に拡大する過程だとする。

 「東京では、国際化の進んだ環境で当社のモデルをブラッシュアップできます。そこから、どうすれば他の場所でも有効に機能するかと考えるのです」と高橋氏は言う。ここでも重視するのは、一歩通行ではない地域同士のつながりであり、オンラインであれ対面であれ、共通の体験を通じてコミュニティを結びつけることである。

 HelloWorldは、国際交流をローカライズや状況に合わせることが可能なものとすることにより、参加できるのが一握りの学生だけという場合も多い、従来の留学モデルの課題を回避したいと考えている。ここでの拡大とは、地理的な拡大というより、どこでも何度でも再現できることを意味する。

SusHi Tech Tokyoとイノベーションとしての教育

 東京都などが主催するアジア最大級のグローバルイノベーションカンファレンス、SusHi Tech Tokyo 2025にHelloWorldが出展したことも、教育を東京の幅広いイノベーションエコシステムの一部と位置づける上で新たな一歩を刻むこととなった。同社が参加した海外のテクノロジーカンファレンスと異なり、SusHi Tech Tokyoは、技術の進歩だけでなく社会的インパクトを重視しつつ、スタートアップ、行政、研究者が一堂に会するイベントである。

 初出展のHelloWorldは、EdTech製品だけでなく、体験プラットフォームとしてのサービスを訴求することにした。「来場者の方に、イノベーションとは人々の交流の方法を変えるものでもあると理解してほしいと考えました」と高橋氏は言う。同社は、特に海外からの参加者や大使館関係者の反応を見て、教育関連のスタートアップには、未来の都市に関する議論において果たすべき役割があるという信念を一層強めた。

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子どもや学生たちは、HelloWorldのまちなか留学プログラムを通じて日常的な国際交流に参加している Photo: courtesy of HelloWorld

世界のつながりのあり方を変える

 HelloWorldの活動の根幹は、グローバルな意識の形成において、既成概念を問い直すものだ。国際交流を特別な体験と捉えるのではなく、日常生活に取り込むことができる、取り込むべきものとして扱う。

 コミュニティや組織ネットワークが何層にも重なる東京は、この考え方を実証するための最適な場となっている。HelloWorldは、そこから徐々に活動範囲を広げている。有意義なつながりをつくるには、移動した距離よりも、どれだけ機会を創出したかが重要だという信念があるからだ。

 高橋氏は、「子どもたちが国際交流を当たり前のものとして育てば、世界に対する見方も、その中での自分の位置づけも変わります」と語る。

高橋優

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同志社大学でリベラルアーツを専攻し、カリフォルニア大学バークレー校で政治学を学んだ後、2023年にHelloWorld株式会社へ入社。関東支店の立ち上げメンバーとして、自治体・企業との連携を通じた事業拡大を担い、異文化間教育・国際交流プログラムを地域全体に拡大するため尽力している。

HelloWorld株式会社

https://inc.hello-world.city/

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Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo は、最先端のテクノロジー、多彩なアイデアやデジタルノウハウによって、世界共通の都市課題を克服する「持続可能な新しい価値」を生み出す東京発のコンセプトです。
SusHi Tech Tokyo | Sustainable High City Tech Tokyo

取材・文/リサ・ワリン
写真/藤島亮
翻訳/伊豆原弓