日常の国際交流:東京からグローバルなつながりを
拡大の場としての東京
HelloWorldが成長しても、この考え方に変わりはなかったが、その規模と状況は変化してきた。東京にオフィスを構えると、地域限定で始まった事業は、より複雑な都市環境での実証の場へと移行した。HelloWorld事業連携推進室マネージャーの高橋優氏は、東京は魅力的な機会にあふれた街だと語る。「東京には、他の地域とは比べものにならないほど多くの外国人が居住しています。それだけさまざまな国のホストファミリーが多く、子どもや学生にとっては、自然な日常環境の中で異文化に出会う機会が多いということです」
HelloWorldの事業拡大にあたり東京が果たす役割は、単に都市の規模が大きいということだけではない。人、アイデア、組織等が高密度で集積している。東京には、ほぼすべての国や地域からの住民がいるほか、多くの大使館、インターナショナルスクール、大学があり、区市町村も近年グローバル教育と多様性を重視するようになっている。HelloWorldにとっては、幅広い年齢層や状況でプログラムを試行できる環境が生まれている。
東京でHelloWorldは、学校、地方自治体、企業といった多様なパートナーと協力して、まちなか留学やまちなかENGLISH QUESTといった既存プログラムの範囲を拡大している。まちなかENGLISH QUESTは課題ベースの学習に重点を置き、参加者は文法だけにとらわれず、英語を使った問題解決やアクティビティといったミッションに挑戦する。高橋氏は「英語に自信のない子どもでも、コミュニケーションに目的があれば興味を持って参加するようになります」と言う。
HelloWorldのデジタルプラットフォームであるWorldClassroomも同様の変化を反映している。学校向けに設計されたWorldClassroomは、AI支援型のスピーキング練習と、さまざまな国の教室をライブでつなぐオンライン交流を組み合わせる。国際交流にテクノロジーを統合することで、学校にとっての障壁を引き下げながら、教師の負担も軽減することを目指す。2025年現在、各地の教育委員会と連携して全国の数百の学校にWorldClassroomが導入されている。
ワークスペース以上のもの:NEXs Tokyoにおけるネットワーキングと戦略的支援
HelloWorldの東京進出は、次の成長フェーズに向けて検討された戦略的一手だった。そのきっかけとなったのは、地域を超えた事業連携の創出を目指す東京都のスタートアップ支援事業、NEXs Tokyo連携事業創出プログラムである。HelloWorldは2023年にこのプログラムの第6期受講企業に採択され、ワークスペースや知名度向上以上の価値を得た。
高橋氏は「私たちにとって、NEXs Tokyoはさまざまなステークホルダーとつながるきっかけでした。すでに教育、テクノロジー、社会的インパクトについて考えていた他のスタートアップ、大企業、自治体等のパートナーと関係づくりができました」と話す。こうした関係は、単なる教育サービスの提供者ではなく、グローバル志向のコミュニティの育成を目指す自治体や支援機関にとってのパートナーとして、自らの価値を明確に伝えることにつながっている。
NEXs Tokyoは、スタートアップの急速な成長を後押しする一方で、サステナビリティや環境変化への適応力について考えるよう促した。急成長という明確な目標を持って東京へ進出したHelloWorldにとって、これは事業内容の調整だけでなく、事業拡大を後押しする新しい協働の形を発見する機会にもつながった。これらの協働関係によって戦略的選択肢が広がり、長年力を入れてきたアクセスのしやすさも大切にしながら成長を追求できるようになった。
国外でも日常的な交流を
東京が中心拠点とはなったが、HelloWorldが見据えるのは首都だけではなく、また日本だけでもない。同社は国内での拡大と並行して海外での機会も模索しており、台湾で進めている初期段階の取組などもある。高橋氏は、これは方針転換ではなく、企業としてのアプローチを自然に拡大する過程だとする。
「東京では、国際化の進んだ環境で当社のモデルをブラッシュアップできます。そこから、どうすれば他の場所でも有効に機能するかと考えるのです」と高橋氏は言う。ここでも重視するのは、一歩通行ではない地域同士のつながりであり、オンラインであれ対面であれ、共通の体験を通じてコミュニティを結びつけることである。
HelloWorldは、国際交流をローカライズや状況に合わせることが可能なものとすることにより、参加できるのが一握りの学生だけという場合も多い、従来の留学モデルの課題を回避したいと考えている。ここでの拡大とは、地理的な拡大というより、どこでも何度でも再現できることを意味する。
SusHi Tech Tokyoとイノベーションとしての教育
東京都などが主催するアジア最大級のグローバルイノベーションカンファレンス、SusHi Tech Tokyo 2025にHelloWorldが出展したことも、教育を東京の幅広いイノベーションエコシステムの一部と位置づける上で新たな一歩を刻むこととなった。同社が参加した海外のテクノロジーカンファレンスと異なり、SusHi Tech Tokyoは、技術の進歩だけでなく社会的インパクトを重視しつつ、スタートアップ、行政、研究者が一堂に会するイベントである。
初出展のHelloWorldは、EdTech製品だけでなく、体験プラットフォームとしてのサービスを訴求することにした。「来場者の方に、イノベーションとは人々の交流の方法を変えるものでもあると理解してほしいと考えました」と高橋氏は言う。同社は、特に海外からの参加者や大使館関係者の反応を見て、教育関連のスタートアップには、未来の都市に関する議論において果たすべき役割があるという信念を一層強めた。
世界のつながりのあり方を変える
HelloWorldの活動の根幹は、グローバルな意識の形成において、既成概念を問い直すものだ。国際交流を特別な体験と捉えるのではなく、日常生活に取り込むことができる、取り込むべきものとして扱う。
コミュニティや組織ネットワークが何層にも重なる東京は、この考え方を実証するための最適な場となっている。HelloWorldは、そこから徐々に活動範囲を広げている。有意義なつながりをつくるには、移動した距離よりも、どれだけ機会を創出したかが重要だという信念があるからだ。
高橋氏は、「子どもたちが国際交流を当たり前のものとして育てば、世界に対する見方も、その中での自分の位置づけも変わります」と語る。
高橋優
HelloWorld株式会社
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Sustainable High City Tech Tokyo = SusHi Tech Tokyo は、最先端のテクノロジー、多彩なアイデアやデジタルノウハウによって、世界共通の都市課題を克服する「持続可能な新しい価値」を生み出す東京発のコンセプトです。
SusHi Tech Tokyo | Sustainable High City Tech Tokyo
写真/藤島亮
翻訳/伊豆原弓




