国際化と地域密着が融合、日本のコンビニが持つ魅力
観光客のオアシス
観光立国を推進する日本政府は、2030年までの目標として、訪日外国人旅行者数6,000万人を掲げている。東京を訪れる外国人観光客は、すでに記録的な数に到達。そうした中、日本が誇るコンビニは、その便利さとユニークさで世界的な知名度を高めている。
外国人観光客にとってのコンビニの魅力は、言うまでもないかもしれない。雨の日には傘を買えるし、暑い日にはエアコンで涼むことができ、トイレも使える。どんなホテルであっても、近く(あるいは施設内)に必ずコンビニがある。日本語がほとんどわからなくても利用でき、店頭にはかわいい商品や季節限定品、一風変わった品など、インスタ映えやTikTok映えのする品々が並ぶ。たまごサンドはその代表格だ。
「日本に来てコンビニに行かなかったという人には、ここしばらく会ったことがないですね。むしろ、彼らにとっては日本で絶対にしたいことの一つです」。こう語るのは、社会文化人類学者で、米ハーバード大学エドウィン・O・ライシャワー日本研究所のエグゼクティブ・ディレクターを務めるギャヴィン・H・ホワイトロー氏だ。
しかし、そうしたコンビニが「クール・ジャパン」の極みとして観光客の関心を集める一方で、そのような固定観念によって、日本人にとってコンビニが持つ意味や文化的意義の理解が妨げられるかもしれないと、ホワイトロー博士は警鐘を鳴らす。
「私にとってコンビニは、古くからの商慣行の継続が、新しい特性や機能、緊張感と融合したものです。だからこそ、研究対象として魅力的なのです」
コンビニという事業形態
ホワイトロー氏によると、日本のコンビニは1970年代、米国のフランチャイズモデルに基づいて導入された。通商産業省(現・経済産業省)と企業各社が、大きな店舗を出せない小規模地域への出店を推進したことがきっかけだったという。
このビジネスモデルでは、家族経営の米屋や酒屋などが、コンビニフランチャイズ傘下の店舗として新装開店。店舗オーナーの多くは、この新しい小売形態が、独立した専門店よりも将来性のあるモデルだと信じ、フランチャイズに参加した。
「コンビニのフランチャイズ契約では、オーナーは10~15年間にわたり年中無休で24時間営業することが義務付けられます。オーナーが亡くなっても、家族は店を経営し続ける義務があるのです」とホワイトロー氏。「本部は、店舗が出す利益の一定の割合を受け取り、その代わりにブランディング、マーケティング、流通システム管理といった面で店舗経営者を支援します」
営業担当者は、オーナーが自社チェーンの最新商品と店の顧客データを理解できるようにサポートする。顧客データは店が利益を上げるために重要な情報であり、決済1件ごとに顧客の年齢や性別、その日の天気や気温といった情報がレジで収集される。
しかし、重要なのはバーコードやチャート、グラフだけではない。コンビニのオーナーは、地域の祭りや学校行事、夜間の工事など、売り上げ増加につながる可能性のある予定を把握しておかなければならない。土地勘や地域との関係構築は、今でも大切なのだ。
近年では、同じオーナーが複数の店舗を所有したり、個人ではなく企業がフランチャイズに加盟したりと、オーナーモデルの多様化が、都市部を中心に進んでいる。日本で成功したチェーンが海外にフランチャイズを展開することも増えた。
日本のコンビニが現在直面している最大の課題は、オーナーと従業員の確保だと、ホワイトロー氏は指摘する。ただ、これは必ずしも新しい問題ではない。
ホワイトロー氏は、2000年代初頭に博士課程でコンビニの研究をしていた際、東京と山形で自らコンビニ店員として働いた。東京の店舗では、従業員の約半数が外国人で、そのほとんどが日本語学校に通う中国人学生だった。「その店のオーナーは、学生たちをとてもありがたく思っていました。一番大変なのは、働き手を見つけることだったからです」とホワイトロー氏は回想する。「誰か従業員が辞めても、学生たちを頼れば、代わりの人材となる友人を紹介してもらえたのです」
コンビニは日本の国際化を象徴する存在であり続けており、そこで働く人々の多様化が進んでいる。
地域に寄り添うコンビニ
コンビニは飲食物や日用品を売るだけでなく、地域社会でさまざまな役割を果たしている。
自治体と協力して、過疎地で銀行関連のサービスや移動販売を行ったり、高齢者を支援したりする店もある。さらには、店員が善意で自発的に始めたサービスもある。ホワイトロー氏が働いていた山形県の地方のコンビニでは、店長が近隣地域の高齢者や体の不自由な人から注文を受けて商品を届けていた。
「このような関係や交流は、店に入って商品を手に取りピピッと会計を済ませていくだけでは見えないものです。コンビニは合理的で効率的な業務形態である一方で、人間的な要素も保持しています」とホワイトロー氏は強調。ただ、すべてのコンビニがそうとは限らず、単なるビジネスとして経営している店もあるという。
「これは日本に限ったことではなく、どこにでもある中小企業文化の一部です」
コンビニチェーンの多くは、災害発生時の物資・サービス提供にも協力している。例えば東京都では、一部のコンビニチェーンや都立学校、その他の企業が、災害時に徒歩での帰宅が困難となった人に対してトイレや飲料水、災害情報を提供する。
東京にはコンビニが街の至る所にあるが、ホワイトロー氏は、そんな中でも各店舗が「その場所の非常にローカルなミクロ環境に順応している」と指摘する。都内のコンビニで働いていたとき、数ブロック先のコンビニで以前働いていた同僚から、今の店舗は前の職場と「全く違う」と言われたことがあるという。
ホワイトロー氏は、日本のコンビニが今後、事業形態の面でも提供する商品の面でも、近隣地域や社会全体の変化を反映し続けると予測。自動化と人間の労働者の必要性のバランスを取りながら、国際化がさらに進むことなどが予想される。
旅行者にとって東京は、大都会から郊外まで変化に富んだ地域が存在し、日本の経験とライフスタイルの多様さを知ることができる素晴らしい場所だとホワイトロー氏はいう。「そしてもちろん、どこに行ってもコンビニがあります」
ギャヴィン・H・ホワイトロー
翻訳/遠藤宗生





