東京で、自分らしいスタイルをまとう

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 東京の街は唯一無二のランウェイである。さまざまなスタイルやサブカルチャー、個性的な人々があふれる東京は、世界有数のファッション都市とされている。米国生まれのミーシャ・ジャネット氏は、その様子を熱心な読者に向けて発信している。ファッションを学んだ後にブロガーに転身したジャネット氏は、現在、クリエイティブディレクターとして、多様な要素が交錯する東京のファッションシーンで活躍している。
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ミーシャ・ジャネット氏は、20年間にわたりスタイリスト、デザイナー、ブロガーとして活躍し、現在は自身が設立した制作会社のクリエイティブディレクターを務めている。東京のファッションシーンにおける第一人者である Photo by 藤島亮

新たな視点の発見

 ワシントン州スポケーンで生まれ育ったジャネット氏は、2001年に初めて来日した。ワシントン州が兵庫県と姉妹州の関係にあったため、西宮市に留学する機会を得たのだ。留学中に短期間東京を訪れたところ、新しいスタイルとの出会いが待っていた。「街行く女の子たちが鮮やかな色のタイツをはいていました」と彼女は振り返る。「アメリカではカラータイツを見たことがありませんでした。当時は流行していませんでしたからね。それが東京では、緑色のタイツにオレンジ色のストライプのシャツを合わせている人がいるのです。こういう奇抜な色の組み合わせを、どうしたらあんな風にうまく着こなせるのだろうと思いました」。ユニークなスタイルが大好きな彼女は自分でも試してみたが、「私には似合いませんでしたね」と笑う。

 それでも東京のファッションシーンに対する彼女の関心は衰えなかった。「大学でファッションを学びたかったのですが、ファッションに限らずクリエイティブな分野で成功するには、周りの人と異なる視点を持たなければなりません。自分の生まれ育った所で勉強や仕事をしていると、他の人と同じようなものの見方をすることになりがちですが、私のアメリカ的な視点と日本の視点とを融合させれば、今までにない新しいものが生み出せるかもしれないと考えました」。ジャネット氏は粘り強く日本語を勉強し、東京にある名門、文化服装学院を受験して入学を果たした。

 2004年、再び東京にやって来たジャネット氏は、高田賢三氏、山本耀司氏、渡辺淳弥氏をはじめとする世界的なファッションデザイナーを輩出した専門学校で学び始めた。

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伊勢丹とコラボレーションしたポップアップイベントにて。ジャネット氏は、大胆で若々しい浴衣のスタイリングを提案した

東京の穏やかなカオスを知る

 東京に移り住むと、そこには「穏やかなカオス」があった。「東京は、驚くほど秩序のある都市です」と彼女は話す。「巨大な都市なのに、それほど混沌としていません。ニューヨークやベルリンには、人々が生み出す自然発生的なカオスがありますが、東京では穏やかな中に思いがけない発見があります。例えば、何気なく通りを歩いていて角を曲がると、ユニークな建物が1軒、他の建物に挟まれるように建っていたりします。向こうが主張してくるというより、こちらがそれを見つけるという感じです」

 仲間たちの助けもあって、町田市の寮を拠点に都内のあちこちを見て回ることができたものの、ジャネット氏には東京の中心により近い所で暮らしたいという思いがあった。そこで次の一歩として、学校に徒歩で通える南新宿に転居することにした。「人脈をつくり、キャリアをスタートさせるために、あらゆることの中心となる場所にいたかったのです」と彼女は話す。「引っ越した先が気に入って、結局そこで13年暮らしました」

 卒業後は多方面で才能を発揮した。スタイリストやデザイナーとしての活動のほか、原宿のKAWAII MONSTER CAFE(2026年2月にKAWAII MONSTER LANDとして再オープン)のコスチューム制作、鮮やかな色使いで知られるデザイナー山本寛斎氏とのコラボレーション、ミュージシャンのニッキー・ミナージュによる日本ツアーでのスタイリングも手掛けた。さらに、ファッションジャーナリストとしても活躍し、ジャパンタイムズ紙のファッションコラムニストを務めたほか、Numéro TokyoやVogue Girl Japanなどで執筆・翻訳にも携わった。

東京を舞台にしたストーリー

 ジャネット氏は「従来の」キャリアパスを追求せず、自身のパーソナルブランドを築き上げてきた。その世界観を発信する場となったのが、2011年に開設した人気ブログ『東京ファッションダイアリー』だ。同ブログは英語と日本語で書かれており、彼女の観察や洞察は、国内外の読者の共感を呼んだ。「自分の意見を率直に述べたブログ記事は、大変好評でした」と彼女は言う。「異文化理解というテーマでクールジャパンを取り上げたブログ記事は、大きな注目を集めました」

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Vogueの元編集長で、現在はCondé Nastのチーフ・コンテンツ・オフィサーを務めるアナ・ウィンター氏と並んでポーズをとるジャネット氏

 東京独自のファッション・サブカルチャーにも大きな関心が集まっていたが、それが非常にデリケートな話題になり得ることはすぐにわかった。「実は、サブカルチャーについて記事を書いた際に、一部の日本人から多少反発があったのです」とジャネット氏は話す。「サブカルチャーについて、部外者の立場で論じたり、意見したりすることはできませんからね。そのことについては少々後悔していますが、おかげで情報源に直接当たることの大切さを学びました」

 2004年に東京にやって来て以来、ジャネット氏はこの街のスタイルが年々変化していく様子を見てきた。「私が来た当初と比べると、少し落ち着いてきました」と彼女は言う。「人々のファッションがやや画一的になっています。ソーシャルメディアの影響で、皆同じような格好をするようになった気がします。だからといって、今もとびきりおしゃれで個性的な人がいないわけではありません」。東京のファッションの拠点も変化している。「今では、ファッションを求めて訪れる場所が色々あります。人々がよく訪れていた定番のスポットは今も健在ですが、そうした場所が飽和状態になるにつれて、新たなスポットが次々と登場しています」

 東京のファッションシーンを掘り下げ、世界に向けて発信することが、20年以上にわたりジャネット氏のキャリアの中心となってきた。こうした実績により、彼女は2023年に東京観光大使の一人に任命された。ファッションの表現という点で、東京が自由に感じられるのは、どんなファッションでも受け入れられる安全さ故だと彼女は感じている。「東京では自分らしくいても安全です。安心して自分らしく振る舞い、好きな服を着ることができ、他人にずけずけと踏み込まれる心配もありません。だからこそ、街中で素晴らしいファッションが生まれるのです」

自分を表現できる都市

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東京の都会の風景をバックに、デザイナー小泉智貴氏の作品の着用モデルを務めるジャネット氏

 オンライン環境が変化し、人々がブログからソーシャルメディアへと移行する中、ジャネット氏は何かしらの手を打たなければならないと考えた。「自分の知識とノウハウを総動員してコンサルティングに生かす必要がありました」。2017年、ジャネット氏はクリエイティブコンサルティング・制作会社Totteoki Proを設立し、執筆中心の活動から日本の化粧品ブランド、シュウ ウエムラのデジタルブランディングへと軸足を移した。自身が切り拓いたキャリアや生み出した機会について、彼女はこう語る。「運が良かったのか賢かったのかわかりませんが、多分両方でしょうね」

 ブロガー時代ほどパーティーやイベントに出ることがなくなったかもしれないが、東京の今について常にアンテナを張っている。今はどこからインスピレーションを得ているのか尋ねると、彼女はこう答えた。「自転車に乗って東京の街を走るのが好きなんです。東京は自転車で移動しやすいですし、大通りの間の細い道を探検して、それぞれに個性のある小さな家々を見るのも好きです。マンションの部屋を出てコンビニに行ったり、中目黒の川沿いを歩いたりするだけでもたくさんのインスピレーションが得られます」

 東京のファッションスポットを巡りたい観光客に、いくつか彼女のお勧めの場所がある。「私は麻布台ヒルズをぶらぶらするのが好きです。少し気取った感じがありますが、景観が素晴らしいです」。6年間暮らしたことのある思い出の場所、下北沢もお勧めだ。「東北沢駅から下北沢、さらに世田谷代田駅まで歩くのがいいですよ。そこで富士山が見えます」

 東京を訪れるファッション好きに向けた彼女の最後のアドバイスはこうだ。「ファッションに興味があり、東京を訪れる予定のある皆さんには、ぜひ思い切って一番個性的な服を荷物に入れてきてほしいです。そしてためらわず、街でそれを堂々と着てみましょう。服装や自己表現を通じて自分らしさをアピールする姿は、きっと好意的に受け止めてもらえるはずです」

Movie: 東京都

ミーシャ・ジャネット

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米国ワシントン州出身。文化服装学院を卒業後、ジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、国内外のメディアに寄稿。2011年、日本と世界をつなぐ人気の2カ国語ブログで知名度を上げ、インフルエンサーとして活躍するようになる。そのファッションにも関心が集まり、ニューヨークファッションウィークでのブランドショーからアーティストの衣装制作まで各方面でスタイリングを手掛けるようになる。2017年にはクリエイティブスタジオTotteoki Proを設立。Photo by 藤島亮
取材・文/ローラ・ポラコ
写真提供/ミーシャ・ジャネット
翻訳/喜多知子