東京都のコロナ対策:物心両面、24時間対応の「自宅療養者フォローアップセンター」

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 東京都は2020年11月、「自宅療養者フォローアップセンター」を開設した。新型コロナの自宅療養者を、健康観察、食料品の配送、24時間対応の相談窓口、パルスオキシメーターの貸与、などを通して物心両面から支援する。

 新型コロナウイルスに感染しても、症状が軽い、あるいはほとんどないといった場合も少なからずある。軽症・無症状の場合には原則として「宿泊療養(ホテル療養)」となるのだが、感染者数の増大に伴って「自宅療養」となるケースも増えている。

 あなたが新型コロナに感染して、自宅で療養することを求められたと想像してみてほしい――。

 「食料の買い出しはできるかな?」
 「家族に感染させてしまわないだろうか?」
 「症状が急に悪化したらどうしよう?」

 といった疑問や不安が浮かび上がってくるのではないだろうか。

 そこで東京都福祉保健局では202011月、「自宅療養者フォローアップセンター」を開設した。新型コロナの自宅療養者を物心両面から支援するためだ。具体的には、以下のようなサポートが提供されている。

 (1)LINEまたは電話による毎日の健康観察
 (2)自宅療養中に必要な食料品の配送
 (3)24時間対応の自宅療養者専用相談窓口
 (4)パルスオキシメーター(血中酸素飽和度測定器)の配布

 東京都福祉保健局感染症対策部の本間義崇東京感染症対策センター担当課長に「自宅療養者フォローアップセンター」を開設した目的を聞いた。

 「自宅療養の対象となるのは、65歳未満で、基礎疾患がなく、重症化のリスクが低いと判断された方々です。とはいえ、新型コロナに感染すれば、不安でいっぱいになるものです。そうした都民の皆様をしっかり支援すべく、2020年9月から準備を進め、同年11月に開設しました」(本間課長)

 自宅療養者の健康観察をはじめとする支援は、保健所が担ってきたものだが、保健所もコロナ対応で超繁忙な状態が続いている。保健所の業務負担を軽減する観点からも、東京都が自ら「自宅療養者フォローアップセンター」を開設するに至ったという。支援の基本は、毎日の健康観察だ。

 「自宅療養中に症状が悪化する可能性はゼロではありません。健康観察はいち早く変化をキャッチするために実施しています。自宅療養中の方に対して1日に2回、LINEで自動的にメッセージを配信し、体調を確認しています。LINEを活用することで、職員の負担も軽減されました。もちろん、LINEの操作が苦手という方のために、お電話での健康観察も行っています」

 そして、自宅療養者が直面する大きな問題が「食事」である。本間課長は言葉に力を込める。

「自宅療養の場合は外出できませんから、買い物に行くこともできません。家族と同居していたり、近くに知り合いが住んでいたりすれば、頼ることもできるでしょうが、一人暮らしの方も多くいらっしゃいます。そうなると毎日の食事もままなりません。そこで、自宅療養中に必要な1週間分の食料品を無償で配送するという支援を提供しています」

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 さらに、24時間対応の「自宅療養者専用相談窓口」では、常に看護師が医療相談に対応する体制を整備。2021年4月からは、地域医療との連携を進め、体調が悪化した自宅療養者と地域の医師をつなぎ、オンラインや電話、往診による診療ができるところまで支援策を拡充。健康面、生活面、診療面で自宅療養者を多面的に支援する体制を整えた。2020年11月の開設から2021年5月5日までの約半年間で、健康観察者の累計は8,132人、食料品等の配送実績は10,948件に達しているという。

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 東京都が専門家とともにまとめた『新型コロナウイルス感染症 自宅療養者向けハンドブック~自宅療養をする方へ、同居の方へ』には、「自宅での感染予防 8つのポイント」など自宅療養の留意点が分かりやすく説明されている。

自宅療養者フォローアップセンターを利用した方からは、「電話でアドバイスや励ましをいただき、日に日に良くなっていくのを実感できた」などの感謝の言葉が寄せられている。一方で、食料品の配送支援を希望してから本人に届くまで2日程度を要するので、「もっと早く届けてほしい」といった声も寄せられるなど、多様な利用者の要望に応える難しさも垣間見られる。

 自宅療養者やその家族の不安や苦労を少しでも減らし、療養に専念できるようにする――。そうした東京都の取組を、多くの都民の皆さんに知ってもらいたいと思う。

取材・文/赤坂 匡介