「『未来の東京』戦略」と東京ベイeSGプロジェクト|TMCトーク Vol.3

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 本記事は2021年7月28日に 東京都メディアセンター(TMC)が実施したTMCトークでの東京都知事、小池百合子氏の講演を書き起こしたものです。動画はこちら
「未来の東京」戦略と東京ベイeSGプロジェクト|TMC Talks Vol.3

 皆様、こんにちは、東京都知事の小池百合子です。東京大会では、アスリートの皆さんの素晴らしい演技に、連日感動を新たにしているところです。オリンピック、そしてパラリンピックは、開催都市に大きなレガシーを遺します。今日は、この熱戦の舞台、東京が今後、どんな都市になっていくのか、私たちが目指す未来の東京の姿について、お話ししたいと思います。現在、私たちは、新型コロナウイルス感染症と、そして気候危機という2つの大きな危機に直面をしています。しかし、危機にある今だからこそ、これを乗り越えた先にある未来の都市像を構想して、戦略的に手を打っていくことが重要だと考えています。東京都は2021年3月、『未来の東京』戦略」を策定して、2030年までの戦略をまとめております。戦略の軸ですが、「サステナブル・リカバリー」という考え方です。これは、コロナ禍からの復興に際して、ただ元に戻るのではなくて、持続可能な回復を成し遂げ、より良い未来を創り上げていくというものです。

 そのシンボルプロジェクト、今日ご紹介する「東京ベイeSGプロジェクト」なんです。日本には「温故知新」という言葉がありますけれども、過去の歴史の中に、新しい課題に対処するヒントが眠っている。そこで、東京の歴史を振り返りまして、2人の人物をご紹介したいと思います。1人目は、渋沢栄一。2024年から日本の紙幣、これは1万円札ですが、その顔となる人物です。この渋沢氏は、「日本資本主義の父」と言われています。また同時に、彼は多くの社会貢献活動に尽力をいたしました。国連のSDGsが進める「誰一人取り残さない社会」の先駆けでありましょう。そしてもう1人は、後藤新平。第7代東京市長です。今から100年ほど前、東京は関東大震災という未曽有の災禍に襲われました。この時、後藤は、「大風呂敷」、Big mouth(ビッグ・マウス)とも言われる壮大な復興計画を立てて、現在の東京の骨格を築き上げたのです。

 2人に共通するのは、50年先、100年先を見据えて、「持続可能」な東京を残そうと、その行動を起こしたことです。こうした先人たちの精神を受け継ぎ、私たちは、本来の「ESG」の概念に、新たな意味を加えました。スライドにある通り、「e」には、ecology(エコロジー)、economy(経済)、epoch-making(新時代を切り拓く画期的な技術)といった想いを込めています。これに渋沢・後藤の名前の頭文字を合わせて、「eSG」というわけです。     

 さあ、それでは具体的なプロジェクトの中身を、お話ししていきましょう。「東京ベイeSGプロジェクト」が展開される舞台は、名前のとおり、東京のベイエリアです。

 さて、この場所ですが、水辺空間という「自然」に恵まれ、高いポテンシャルを持つ、2つのエリアからなります。1つめは、商業施設、エンターテインメント施設が多く、多様な魅力を持つ「臨海副都心」です。この「臨海副都心」は、東京2020大会関連施設が多いため、大会のレガシーが色濃く遺る地域となります。2つめは、将来的には約1,000ヘクタールの広大な土地となる「新しい埋立地」です。

 このポテンシャルを活かし、世界の大都市のモデルとなるような、「自然」と「便利」が融合した持続可能な都市を創っていくのが、このプロジェクトの目的です。

 それでは、ここで、サステナブルな未来の都市のイメージをご覧ください。

 いかがでしたでしょうか。SF映画の近未来都市よりも、もっと暮らしやすい、そして毎日が心地よく、それでいて機能的だと感じていただければ幸いです。

 このサステナブルな未来の都市像には3つの理念があります。1つめは、豊かな緑に囲まれ、水を身近に感じられる、生物多様性にも富んだ、人間中心の空間が創出された都市。2つめは、世界最高の人材・知能の集積によって、新たな価値が次々と創造されていく都市。そして、3つめが、感染症の脅威に打ち勝ち、自然災害に強く、強靭な都市です。

 そして実現に向けて、私たちは4つの戦略を立てています。

 1つめは、ゼロエミッションの実現と、水と緑溢れる都市づくりです。2つめは、最先端のデジタルテクノロジーの実装です。3つめは、グリーンファイナンスを活用したプロジェクトの展開。4つめは、サステナブルな都市の実現に向けた、交通ネットワークの充実です。

 東京の前身、それは「江戸」と呼ばれた都市で、世界最大の都市でありました。こちらは、日本の伝統的な木版画の技術を用いて描かれた浮世絵ですが、江戸時代の人々の生活が描かれていますね。江戸では、衣食住のあらゆる場面でリサイクル・リユースが行われる循環型社会が成立して、「自然」と調和した豊かな街が育まれました。こうした東京という都市が持つ「伝統」が、現代の最先端のテクノロジーが生み出す「革新」と結びつくところに、新しい東京を創り出してまいります。そして、私たちの未来をより良いものにしていきたいと考えています。

 ご清聴ありがとうございました。

記事中の文言は、実際の発言内容と必ずしも一致するものではございません。