金工と紅、職人技の融合が生んだアートピース。

出典元:「江戸東京きらりプロジェクト」
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 唇に紅をさす。着物や食料を紅で染める――紅花から作られる天然の赤い色素"紅"は、日本人の人生のハレのシーンや女性たちの美しい日常に彩りを添えてきた。江戸時代から続く伝統の"紅"文化を、未来へと繋げていきたいと、現存する唯一の紅屋である伊勢半本店は、紅花を原料とした昔ながらの口紅「小町紅」をつくる口伝の技を守りながら、紅の歴史や文化を伝えるミュージアムの運営を始めとしたグローバルな情報発信も積極的に行ってきた。

 若手アーティストとのコラボレーション企画もそのひとつだ。これまで、磁器、漆器、和紙など、さまざまな分野の工芸作家が小町紅を入れる器を制作し、紅の世界を華やかに彩ってきた。5回目となる2021年春の企画のつくり手は、金工作家の中島ゆり恵氏。江戸時代には紅板(べにいた)と呼ばれた携帯用紅入れを、優美な彫金細工を施したリップパレットとして4月中旬に発表する。

 企画展で展示販売される作品は、すべて1点もののアートピース。四季折々の草花9種類をモチーフに、それぞれ正方形と長方形の2タイプがつくられる。梅をモチーフにした作品では、色の違う金属を接ぎ合わせて一枚板にした後、花模様の部分を切り出して、その凹みに違う色の金属パーツを嵌め込むなど、どの作品も細やかな彫金の伝統技法が駆使されている。葉を象った蝶番や鏡の周りの縁飾りまで手作りという、隅々までこだわりが行き届いた作品だ。

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 施された巧みな技にほれぼれしながらケースを開けると、そこには玉虫色の紅。肌に触れた瞬間、その色は身に着けた人独自の赤を発色する。まさに自然界がもたらす魔法だ。職人技を纏った、江戸時代から変わらぬ製法で作られる小町紅。時代がかわり、世の中で未来をつなぐサステナブルなものへの価値観が高まっているなか、これら作品の存在は、大きく、大切なメッセージを発信している。

作品展『未来の匠-きらめく彫金-』 ※本作品展は終了しています。
金工作家の中島ゆり恵氏と四季折々の日本の草花をテーマにコラボレートして生み出した、小町紅の紅板18点が展示、販売されます。

開催期間:2021年4月17日~5月22日 
開催場所:紅ミュージアム
住所:東京都港区南青山6-6-20 K's南青山ビル1F
TEL:03-5467-3735
営業時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:日曜日・月曜日
https://www.isehanhonten.co.jp/museum/gallery/2021nakashimayurie/

※作品展開催中に営業時間や休館日に変更が生じる場合があります。
事前にミュージアムにご確認ください。

Photos:©Ryoichi Toyama
※本記事は「江戸東京きらりプロジェクト」(2021年3月31日)の提供記事です。