都内のCO2排出がゼロに!? カーボンオフセットを実現した官民の連携

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 2050年までに世界のCO2排出実質ゼロを目指す上で、世界的な大都市である東京都の責任は大きい。その一環として、東京2020オリンピック・パラリンピックの開会式・閉会式では、都内のCO2排出実質ゼロを達成。計4日間ではあるが、脱炭素社会に向けた大きな一歩となった。

東京2020大会の開閉会式のCO2排出量をゼロに

 世界が脱炭素社会の実現に向けて歩みを速める昨今、大都市のひとつに数えられる東京は、201912月に「ゼロエミッション東京戦略」を策定した。2021年1月には、マイルストーンとして、2030年までに都内温室効果ガス排出量を50%削減(2000年比)、再生可能エネルギーによる電力利用割合を50%程度まで引き上げることを表明した。

 「ゼロエミッション東京」が掲げる目標達成に向けて、省エネや再生可能エネルギーの拡大施策に加え、食品ロス対策やプラスチック削減対策など、都市活動に関わるあらゆる分野での取り組みを加速させている。また、都自らも都施設の省エネ・再エネ化をはじめ、都庁プラスチック削減方針をもとにした取り組みや、EVなどのゼロエミッションビークルの導入拡大を実践している。

 その一環として、東京2020大会の開会式と閉会式の計4日間の都内全てのCO2排出量を埋め合わせる(カーボンオフセット)ため、独自に「東京ゼロカーボン4デイズ in 2020」を実施。さらに、東京2020組織委員会は、大会の開催に伴い排出されるCO2をゼロにする「東京2020大会のカーボンオフセット」を目指していた。東京都は、東京2020大会のホストシティとしてこれに協力した。

 カーボンオフセットとは、企業の事業活動で排出されるCO2について、自助努力のみでは削減しきれない量を、他の事業者の取り組みによる削減量で埋め合わせる方法だ。事業者の対策によって削減したCO2量はクレジットと呼ばれ、都の認定を経て第三者との取引が可能になる。

 東京都は、かねてより大規模事業所(前年度の燃料、熱、電気の使用量が、原油換算で年間1,500kL以上の事業所)にCO2排出量の削減義務を課す、キャップ&トレード制度を実施してきた。東京2020大会では、このキャップ&トレード制度の対象事業者からクレジットの寄付を受け、目指すカーボンオフセットに充当した。

目標を50万トンあまり上回るカーボンオフセットを達成

 「東京ゼロカーボン4デイズ in 2020」と「東京2020大会のカーボンオフセット」に関連するクレジット提供の呼びかけに対し、153の事業者が4188,815トンにのぼるクレジットを提供。目標として掲げていた約365万トンを大きく上回る成果を挙げた。

 その結果、「東京ゼロカーボン4デイズ in 2020」に72万トン、「東京2020大会のカーボンオフセット」への協力に3468,815トンを充当した。提供されたクレジットのうち、「東京2020大会のカーボンオフセット」の充当分は、2021年6月の式典で小池百合子都知事から東京2020大会組織委員会の橋本聖子会長に引き渡された。

 小池都知事は「オリンピック・パラリンピック大会で排出されるCO2を、開催都市との連携でオフセットするということは、史上初の取り組み。クレジットを提供いただいた事業者の皆様方には、心から感謝を申し上げたい」、橋本会長は「皆様からの協力により、想定した排出以上のオフセットが実現できる見込みとなった」という主旨のコメントを発表した。

 官民一体となってCO2削減目標を達成したことは国際的にも大きな意義をもち、より効果的な地球温暖化対策に向けた契機になることが期待される。だが、東京2020大会で得たカーボンオフセットの成果は、あくまでもひとつの通過点。東京都は次の目標に向けて、「ゼロエミッション東京」を強く推し進めていくつもりだ。

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東京都では大会のレガシーをわかりやすく発信するため、「都内CO2排出量実質ゼロ実現」のインフォグラフィックを作成
文/末吉陽子