イルミネーションの中で社会実験!? 光でつなぐ人との絆

丸の内仲通りに輝くクリスマスイルミネーション。期間中は訪れた人が季節を感じ、居心地良く過ごせるような様々なプログラムを用意している
多様化するライフスタイルに合わせたまちづくり
日本有数のビジネス街・丸の内のメインストリートである丸の内仲通り。ここで、不動産ディベロッパー・三菱地所、大丸有エリアマネジメント協会(リガーレ)、大手町・丸の内・有楽町地区まちづくり協議会が社会実験「Marunouchi Street Park 2021 Winter」を実施中だ。
目的は、「クルマのための道路」を公園空間にすることで「"人"中心の空間」を創り出し、自由で豊かな都市生活を提供すること。東京都が推進する「パーク・ストリート東京」への参加プロジェクトだが、丸の内エリアの観光都市としての発展や、ビジネス創発の場としての促進も狙いの一つだ。
「Marunouchi Street Park」は「通りの役割や季節ごとの可変性、多様化するライフスタイルへの適応を探る社会実験」と位置づけられ、2019年からスタート。Afterコロナを見据え、基本的な感染対策はもちろん、人流の計測や混雑状況の情報発信なども実証実験に取り入れてきた。
2021年は季節ごとの変化も検証するため、春・夏・冬の計3回実施。春と夏の運営では、屋外空間におけるワークプレイスを設置し、緑豊かな都市公園で働くことの快適性や生産性、健康効果などを検証した。
「リモートワークの促進により人々が働く場所を自由に選ぶ時代となってきた今、屋外も選択肢の一つになり得ると考えたからです」と、三菱地所兼リガーレの中嶋美年子氏はその理由を語る。

障がいのある人も楽しめるイルミネーション
2021年12月1日から25日まで実施される「Marunouchi Street Park 2021 Winter」では、丸の内仲通りの冬の風物詩であるイルミネーションを、どうしたらより居心地の良い空間で見てもらえるかが追求された。
高さ4m超のクリスマスツリーやイルミネーションを活かしたフォトスポットスペース、炎を囲んで暖を取るラウンジ空間、近隣ホテルの食事が楽しめるキッチンカーの出店、それを暖かな空間で味わうことのできる「グラスハウス」などが創り出されている。
さらに今冬は「あらゆる人に開かれた空間」を目指し、視覚障がい者に向けたイルミネーションツアーも試みた。
「視覚に訴えるイルミネーションを、どうしたら目の不自由な人たちにも楽しんでもらうことができるのか。専門家の意見を聞くとともに、生まれつき視覚障がいのある人に実際に丸の内仲通りを歩いてもらい、ヒアリングを行いました」と中嶋氏は語る。
ヒアリングにより、目の不自由な人は視覚以外で得た情報から想像を広げ、豊かな感性で楽しむ力が常に優れていることを再認識。そこで、樹木やライトに直接手で触れてもらい、通りの木々にそのライトが120万個飾られていることなどをボランティアガイドが具体的に案内するツアーを組んだ。「トライアルの参加者からも好評で、今後につなげていきたい試みの一つです」(中嶋氏)

大手町・丸の内・有楽町地区では、1990年代後半から地域の人々と一緒に、歩道幅や街路樹の種類の見直しなど、快適な空間づくりに取り組んできた。イルミネーションの輝く「Marunouchi Street Park 2021 Winter」からも、人が人を想い、つながりを大切にしたいという思いが感じられる。
丸の内仲通りから生まれるコミュニティが、丸の内エリアの発展を牽引する原動力となっているのは間違いないだろう。Afterコロナの象徴的な街として丸の内が存在感を放ち続けるためにも、「Marunouchi Street Park」の取り組みに今後も期待したい。
