CO2削減に貢献 下水汚泥をグリーンエネルギーに

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 本来は捨てるはずの廃棄物を有効活用しながらCO2削減に大きく貢献するバイオマスエネルギー。東京都下水道局が地球温暖化対策として推進する、資源循環型の下水処理に注目する。
iStock.com/Surasak Suwanmake

汚泥を活用したバイオマス発電

 各家庭や工場などから排出された汚水を処理し、きれいになった水を川や海に戻すことで健全な水循環に貢献する下水処理場。毎日の暮らしに欠かせない公共インフラだが、下水道事業の維持と推進にはエネルギーが大量に必要であり、多くの温室効果ガスが排出されている。

 なかでも影響が大きいのが汚泥焼却時に排出される温室効果ガスだ。汚泥とは水中の浮遊物質が沈殿または浮上して泥状になった廃棄物のことで、多くは焼却・埋め立てにより処分される。環境配慮の観点から、下水道事業者には汚泥焼却時の二酸化炭素(CO2)や一酸化二窒素(N2O)の排出量、および焼却灰の埋め立て処分量の削減が求められてきた。

 そんななか、東京都下水道局が行う汚泥を資源として再利用する方法が注目されている。東京都大田区にある森ヶ崎水再生センターは、東西二つの施設からなる日本最大の下水処理場。ここでは下水処理の工程で発生した汚泥を汚泥消化槽で温め、汚泥中の有機分をメタンガス化することで、汚泥量の減量に成功している。

 さらに、そのメタンガスを発電設備の燃料として活用。森ヶ崎水再生センターで使用している電気の2割に相当する年間約2,000kWhの発電を行い、メタンガス活用による温室効果ガス削減効果は年間約1万トンに及ぶと言われる。

汚泥消化槽内を約50℃に保ち、20日間程度かけて汚泥を発酵させ、メタンガスを発生させる

発生したメタンガスはタンクに貯蔵。汚泥消化槽内の加湿用燃料としても活用する

温室効果ガスを28%削減

 東京都下水道局では、地球温暖化防止策として2004年、2010年、2017年に「アースプラン」を策定し、計画的にエネルギー対策を推進。「目標達成に向け、エネルギーを大幅に削減する技術開発などを積極的に行ってきました」と東京都下水道局計画調整部計画課 エネルギー・温暖化対策推進担当課長の宗吉統氏は語る。

 「アースプラン2017」では、温室効果ガスを2020年度までに2000年度比で25%削減、2030年度までに30%以上を削減することを目標として掲げてきた。そして、2020年度の実績では28%削減を実現。目標を3ポイント上回った。

 森ヶ崎水再生センターでは消化ガス発電や小水力発電、太陽光発電などの再生可能エネルギー創出にも努めており、それらの利用拡大を含めた取り組みを加速する方針だと宗吉氏は言う。

 「森ヶ崎水再生センターと近隣の汚泥焼却施設『南部スラッジプラント』で協力し、今後も着実に温室効果ガス排出量を削減していきます」

東京都下水道局の宗吉統氏

 バイオマスエネルギーがなかなか普及しない背景に、運搬や収集にコストがかかる点が一因に挙げられる。しかし、下水汚泥は処理場に集積されているので、収集・運搬システムを新設する必要がないのがメリットだ。

 さらに、森ヶ崎水再生センターはメタンガス発電事業に下水道事業として国内初となるPFIPrivate Finance Initiative)を導入。民間事業者の資金や技術力を活用することで、コストの削減と質の高い公共サービスの提供を実現している。

 バイオマスエネルギーの利用拡大は、産業廃棄物とCO2排出量の削減、さらには日本の未来の産業を育てることにもつながる。行政と民間が一体となった事業の推進から今後も目が離せない。

写真/松田麻樹