子どもたちが描く「2100年の未来予想図」

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 100年後の東京の街は、一体どうなっているのか。未来の都市の主人公である子どもたちの自由な発想に注目した。

自由なアイデアで未来のベイエリアを創造

 気候変動と感染症という地球規模の危機を前に、東京都が打ち出した都市構想「東京ベイeSGプロジェクト」。世界のCO2排出実質ゼロに貢献する「ゼロエミッション」の実現と先端テクノロジーを融合させ、人にも地球にも優しい持続可能な都市づくりを目指すという壮大なプロジェクトだ。

 100年先を見据えた未来のモデル都市を創造するためには、未来を担う子どもたちの視点が欠かせない。そこで、2021年6月から9月にかけて、東京都では小学生を対象に「未来のベイエリア」をテーマとした絵画コンクールを開催。子どもらしい自由なアイデアが多数寄せられた。

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小学生1・2年の部優秀賞、昭島市立富士見丘小学校1年太田めるさん作『かいてい トレインで ゴー!!』

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小学生5・6年の部優秀賞、江東区立毛利小学校5年釣島和奏さん作『便利で仲良し!カラフルベイエリア!』

 さらに同年11月、この絵画コンクールで優秀賞を受賞した子どもたちを東京都港区の「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」に招待。カラフルなレゴブロックを使って、未来のまちを制作するイベントが行われた。

 ブロックを使うことで子どもたちの自由な発想を引き出し、絵画コンクールで描かれた「未来のベイエリア」を立体的に表現。子どもたちに楽しみながら未来のまちを創ってもらうことが都の狙いだ。

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イベント当日の様子

各学校で広がるSDGs教育

 デンマークの玩具メーカー、レゴグループは、教育や環境配慮に力を入れていることでも知られている。子どもたちが将来必要になるスキルを身につけられるように、創造的な遊びを通じてSTEAM教育(科学、技術、工学、芸術・教養、数学の観点を重視する教育)を推進。さらに、持続可能な素材を使った商品の開発を始めるなど、未来の世代のためにより良い地球環境を築くことに努めている。

 211122日、デンマーク王国大使館はレゴグループとの共催により、渋谷区のデンマーク王国大使館で対話フォーラムを開催。日本・デンマーク両国の若者、学校、教育者、有識者、政策立案者、企業など循環経済に関わるマルチ・ステークホルダーが国際的知見を共有し、議論を進めることが目的だ。

 東京都は、100年後を見据えた未来のまちづくりとして、東京湾から日本の未来を創り出す展望「東京ベイeSGプロジェクト」について紹介。続いて、日本国内の4つの学校が、各校における環境行動の取り組みを発表した。

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デンマーク王国大使館。ビデオ会議を併用して議論が行われた

 発表を行った一校の東京都世田谷区立用賀中学校では、海への知識が十分でない生徒が多いことから、SDGsの目標14「海の豊かさを守ろう」に関する取り組みを実施。講師を招いてカツオや昆布を取り巻く海洋環境について学んだり、日本財団が推進する「海と日本プロジェクト」の一環として大阪の水族館「海遊館」との遠隔授業を行ったりして、海への理解を深めてきた。

 プレゼンテーションを担当した生徒は、「海洋環境はこのままだとさらに悪化します。学んだだけで終わらせず、次の行動に移すことが大事。マイバッグを持ち歩く、ポイ捨てをしない、など身近なことに目を向けていきたいです」と締めくくった。

子どもたちの環境への関心は高い

 世界7か国の8歳から18歳までの子ども6,000人以上を対象に行われた調査によると、気候変動に関心を持つ子どもは非常に多いという。特に、日本の子どもの37%は「環境に対して自分たちは将来何ができるか」に不安を感じており、他国と比べて高い数字であることが特徴だった。つまり、日本の子どもたちは、SDGsは一過性のブームではなく、自分たちが大人になっても引き継がれる問題であることを肌で感じ取っているというわけだ。

 小学校では2020年度、中学校では2021年度、高等学校では2022年度から実施される新学習指導要領では、「持続可能な社会の創り手」の育成が掲げられている。こうしたESD(持続可能な開発のための教育)は今後、教育現場で重視されることになる。

 レゴグループ政府関連・公共業務部門(アジア・パシフィック)部門長、リズム・ミシュラ氏も、デンマーク王国大使館の対話フォーラム内で「子どもたちが未来に希望を持てる道筋をつくる。ポジティブな変革を起こせるようなチャンスに関わることができる機会を提供する。子どもたちの声が政策の意思決定に反映されるようにしていくことが重要です」という旨の発言をしている。

 地球の未来にとって、最も大切なステークホルダーは子どもたち。持続可能な世界をつくるためには、2030年以降に社会の主役となる子どもたちの声に耳を傾けることが求められている。

 東京都は、大きな可能性を持つ子どもたちの自由な発想やアイデアを引き出せるよう、デジタルの活用を検討するなど、取り組みを加速させていく考えだ。

東京ベイeSGプロジェクト

東京・ベイエリアを舞台に、50年・100年先までを見据えたまちづくりを構想するプロジェクト。2021年4月に「Version1.0」を策定。2022年2月には、取り組みを加速させるためのバージョンアップを公表し、世界最先端の実現に向けた今後の展開を明示。

日本・デンマーク対話フォーラム

1 概要
2021年11月22日 於:デンマーク王国大使館(オンライン併用)。循環経済に関わるマルチ・ステークホルダーがこれからの循環経済のかたちや、必要な対策・政策の枠組みについて、次世代を担う若者たちの声や意見を取り入れながら話し合いを進めていくことを目的とし、デンマーク王国大使館とレゴグループの共催により実施。

2 各参加者が以下の取り組みを発表したのち、パネルディスカッションを実施。
・デンマークならではの循環経済への取り組みについての発表(ピーター タクソ-イェンセン駐日デンマーク王国大使)
・次世代を担う子どもたちと循環経済の関わりについての最新の国際的調査からの知見共有(レゴグループ)
・100年後を見据えた未来のまちづくり~東京湾から日本の未来を創り出す~東京ベイeSGプロジェクトについての発表(東京都)
・各学校での子どもたちの取り組み事例の紹介(国内の中高4校)

文/網代奈都子