東京では2300人が「隊員」、自然を守るレンジャーズプロジェクト

 地域の自然保全団体と、環境ボランティアをしたい人をマッチングする取り組み「レンジャーズプロジェクト」。10年前に東京都で立ち上げられ神奈川県や大阪府にも広まり、いまや約4500人が登録するほど人気が高い。
レンジャーズプロジェクトの立ち上げ初期から関わってきた東京都板橋区の「サンシティの森」。現在も保全活動に参加している。

自然保全を「手伝いたい人」と「手伝ってほしい団体」をマッチング

 「もうこの森を守りきれないから伐採しようと思っているんだ」――レンジャーズプロジェクトが創設されたきっかけは地域から聞こえてきた、ある嘆きの声だった。森とは、1980年に完成した東京都内の大規模集合住宅に付随する大きな緑地のこと。裸地区域に入居者が植樹し、住民有志による長年のていねいな管理でまさに「森」となったが、中心グループの高齢化により継続が困難に。その苦境や思いを知ったNPO法人「自然環境復元協会」の職員が手伝いを申し出たという。その後、同協会は都市部にも人手不足に悩む自然保全団体がほかにもあることに着目し、2012年にボランティアを派遣する取り組み、レンジャーズプロジェクトを立ち上げた。

 レンジャーズプロジェクトの仕組みはシンプルだ。都市の自然保全活動を行う団体と環境ボランティアに興味がある人の双方を専用ホームページで募ってマッチングさせるというもの。自然保全団体の内容や人手の必要性をレンジャーズプロジェクト事務局が調査し、ボランティアの派遣先を選定。ボランティアは登録制で「隊員」と呼ばれ、募集情報が「出動要請」としてメールで送られる。隊員は参加したい活動に申請し、各自然保全団体とともに作業を行う。

自然と触れ合いたい若い世代が、続々と参加

 立ち上げから10年、東京から始まったレンジャーズプロジェクトは神奈川県横浜市のほか、埼玉県、大阪府にも活動の輪が広がった。隊員の登録者数(202261日現在)は、東京で2320人、全国で4500人。毎年約500人のペースで増え続けているが、コロナ禍の外出自粛期間を経て自然と触れ合いたいという傾向が強まっているためか、特に最近は希望者数が多いそうだ。

 主なターゲットは若い世代。ホームページやSNSでは、「隊員」「出動要請」「ミッション」という言葉を使い、参加したくなるような案内文を心がけているという。それらが功を奏し、実際の参加者は2030代が中心。週末に自然と触れ合いたいという会社員や環境について学んでいる大学生のほか、親子連れで参加する人もいる。口コミやインターネットの検索で知ったという人が大半だ。

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杉並区の柏の宮公園で除草作業をするレンジャーズプロジェクトの隊員たち。

初心者も参加できる仕組みを

 フィールドでの作業は、河川敷での外来植物の駆除や里山での倒木の片付けなど多岐にわたるが、環境ボランティアの初心者でも参加できるよう、安全性をはじめ、活動内容に工夫がこらされている。活動時間は午前中の3時間以内に設定し、用具や装備は団体側に用意してもらう。さらに、各現場のリーダーを作業に慣れた隊員の中から任命。リーダーは、1015人の隊員を率いて現地へ行き、作業中の安全管理や交流の促進などを担う。同協会の島村雅英理事長は次のように説明する。

 「レンジャーズプロジェクトは、自然環境保全の入り口だと思っています。自然に少しでも興味のある人々が、最初に関わりをもつきっかけになればと。ゆくゆくは自然保全活動団体に入るなど、身近な自然を守る活動を継続していくという次のステップへ進んでもらいたい。それが狙いですね」

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江東区の荒川では、繁殖する外来植物アレチウリの引き抜きを行った。
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八王子市の宇津貫緑地で実施した、ナラ枯れで倒れた木々の片付け。ナラ枯れは木の伝染病で全国的に問題視されている。

当たり前の自然を、未来の当たり前に

 順調に広がりを見せているレンジャーズプロジェクトだが、課題もある。隊員の数が増える一方で、フィールドやリーダーの数が少なく、活動頻度を増やせない。安全管理の面から、ひとつのフィールドで活動できる隊員は15名程度が最大で、募集からすぐに定員オーバーになるケースも多いという。人手を求める団体は数多くある中、派遣体制の整備が求められている。資金不足も大きな課題で、助成金のほか、法人参加や企業スポンサーによる寄付を募っている。島村理事長は都市の自然保全の難しさをこう指摘する。

 「かつての開発優先の時代から環境を守ることが優先される時代になってきたのは非常に嬉しいことです。けれども都市の身近な自然や里山は、いまも目を向けられにくい。当たり前に私たちの身近にある地域の自然を、また当たり前のものにしたい。生活の身近にある自然が人々の心に与える影響は大きいのではないでしょうか」

 暮らしのそばにある自然を次の世代に残すというミッションを掲げ、汗を流すレンジャーズプロジェクトの隊員たち。その重要性はますます高まっている。

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世田谷区の目黒川遊歩道で行ったオレンジコスモスの花がら摘み。都心にもフィールドは随所にある。

レンジャーズプロジェクト https://rangersproject.jp/

取材・文/一ノ瀬 伸 
写真提供/レンジャーズプロジェクト