スマホで遊べるバーチャルミュージアム、「ハイパー江戸博」がスゴイ!
リアルに再現された江戸の町を散策
ハイパー江戸博は東京都江戸東京博物館(以下、江戸博)とゲーム制作会社が共同で開発したアプリ。「誰もが、いつでも、どこでも芸術文化を楽しめる環境」の実現を目指す「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」の一環として企画制作された。
テーマは「江戸をさがす・みつける・あつめる」。ユーザーは江戸に暮らす「えどはくん」になって、江戸の町を散策しながら、あちらこちらに隠されている江戸博の収蔵品100点を探し集める。ゲームを通して、当時の人々の暮らしや文化を学ぶことができるといった内容だ。
ゲームの舞台は江戸(東京)・両国橋周辺で、江戸博で常設展示されていた「両国橋西詰模型」や、浮世絵、歴史資料をもとに町を再現。長屋、両国橋、回向院、隅田川の4つのステージに分かれており、それぞれのステージテーマに沿ったアイテムを5~10点見つけると、次のステージへと進める。すべてのステージをクリアした後は、ステージを自由に行き来して残りのアイテムを探す。
本アプリを企画・監修した同館の学芸員、春木晶子氏は「江戸博の展示や資料をもとに江戸の町、町民の髪型や服装を再現しました。キャラクターの動きも日本舞踊の先生の所作をモーションキャプチャし、リアリティを追求しています。アイテムをすべて集めた後の町中探索も見どころが尽きることがないので楽しいと思います」と話す。
ゲームならではの楽しくわかりやすい解説
1993年に開館した江戸博は現在約37万点を収蔵している。その中から各ステージのテーマに合っていること、パッと目を引き興味を持ってもらいやすいことを基準にアプリに登場する収蔵品100点を選んだ。
アプリの開発で苦労した点は収蔵品の解説だという。博物館の企画展であれば作品に興味のある人が訪れるため、詳しく丁寧な解説が一般的だ。しかし、ゲームでは作品をあまり知らない人に興味を持ってもらえるような内容と流し読みされない文章量が重要となる。
春木氏は、「ゲーム制作会社の方にも意見をいただきながら、アプリのユーザーがどんなことに興味をもつのかを考えました」と話す。歴史好きの人はもちろん、江戸の歴史や文化の知識があまりない子どもや海外の人も楽しめる解説になっている。アプリは英語版もリリースされているほか、日本語版でも言語設定を英語に変更できる。
収蔵品のデジタル化で可能性が広がる!
これまでのデジタル・コンテンツは、空間を3Dスキャンした360度VRや、施設に展示・収蔵されている資料をウェブ上で見られるデジタル・アーカイブなどが主だった。しかし、今回ゲームエンジンを本格利用したことにより、メタバースやVRへと拡張する下地が完成。物ではなくデータであるため、出張博物館のような形で教育現場への貢献も可能になったのだ。
さらに春木氏は「当館は国内ではある程度知られていますが、海外での知名度はほぼありません。このアプリが新しい広報ツールとなり、江戸博の知名度アップにつながることを期待しています」と言う。ゲームで見たアイテムの実物を見に行きたいと、再オープン後に江戸博を訪れる人も多いかもしれない。
収蔵品のデジタル化によって、自分のパソコンやスマートフォンから資料を見ることができたり、ゲーム内で収蔵品に触れられたり、さまざまな鑑賞体験が広がり始めている。
東京都江戸東京博物館
住所:東京都墨田区横網1-4-1TEL:03-3626-9974
※2022年4月1日より2025年度(2025年4月~2026年3月)中(予定)まで、大規模改修工事のため全館休館。
※施設の情報は2022年7月15日現在のものです。
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp
写真提供/東京都江戸東京博物館