スマホで遊べるバーチャルミュージアム、「ハイパー江戸博」がスゴイ!

 現在、東京都江戸東京博物館は2025年度まで大規模改修工事に伴い長期休館している。その間も収蔵品を楽しんだり、江戸・東京の歴史や文化を学んだりできるコンテンツとして開発されたのがアプリ「ハイパー江戸博」だ。
ハイパー江戸博は博物館が提供する、ゲームエンジンを本格利用した国内初のスマートフォンアプリ。隅田川の川開きでにぎわう、夏の両国橋周辺が舞台。

リアルに再現された江戸の町を散策

 ハイパー江戸博東京都江戸東京博物館(以下、江戸博)とゲーム制作会社が共同で開発したアプリ。「誰もが、いつでも、どこでも芸術文化を楽しめる環境」の実現を目指す「TOKYOスマート・カルチャー・プロジェクト」の一環として企画制作された。

 テーマは「江戸をさがす・みつける・あつめる」。ユーザーは江戸に暮らす「えどはくん」になって、江戸の町を散策しながら、あちらこちらに隠されている江戸博の収蔵品100点を探し集める。ゲームを通して、当時の人々の暮らしや文化を学ぶことができるといった内容だ。

 ゲームの舞台は江戸(東京)・両国橋周辺で、江戸博で常設展示されていた「両国橋西詰模型」や、浮世絵、歴史資料をもとに町を再現。長屋、両国橋、回向院、隅田川の4つのステージに分かれており、それぞれのステージテーマに沿ったアイテムを510点見つけると、次のステージへと進める。すべてのステージをクリアした後は、ステージを自由に行き来して残りのアイテムを探す。

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たくさんの人や物が行き交う両国橋では、回向院の相撲や見世物小屋の興行など、江戸の名物イベントも発生。

 本アプリを企画・監修した同館の学芸員、春木晶子氏は「江戸博の展示や資料をもとに江戸の町、町民の髪型や服装を再現しました。キャラクターの動きも日本舞踊の先生の所作をモーションキャプチャし、リアリティを追求しています。アイテムをすべて集めた後の町中探索も見どころが尽きることがないので楽しいと思います」と話す。

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左は江戸博所蔵の団扇売り(鈴木春信/画、1765年頃)、右は作品をもとにデジタルで再現したもの。

ゲームならではの楽しくわかりやすい解説

 1993年に開館した江戸博は現在約37万点を収蔵している。その中から各ステージのテーマに合っていること、パッと目を引き興味を持ってもらいやすいことを基準にアプリに登場する収蔵品100点を選んだ。

 アプリの開発で苦労した点は収蔵品の解説だという。博物館の企画展であれば作品に興味のある人が訪れるため、詳しく丁寧な解説が一般的だ。しかし、ゲームでは作品をあまり知らない人に興味を持ってもらえるような内容と流し読みされない文章量が重要となる。

 春木氏は、「ゲーム制作会社の方にも意見をいただきながら、アプリのユーザーがどんなことに興味をもつのかを考えました」と話す。歴史好きの人はもちろん、江戸の歴史や文化の知識があまりない子どもや海外の人も楽しめる解説になっている。アプリは英語版もリリースされているほか、日本語版でも言語設定を英語に変更できる。

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和漢百物語(月岡芳年/画 大黒屋金之助・金次郎/版、1865年)の中の一枚。見出しが面白く、最後まで解説を読みたくなる。

収蔵品のデジタル化で可能性が広がる!

 これまでのデジタル・コンテンツは、空間を3Dスキャンした360VRや、施設に展示・収蔵されている資料をウェブ上で見られるデジタル・アーカイブなどが主だった。しかし、今回ゲームエンジンを本格利用したことにより、メタバースやVRへと拡張する下地が完成。物ではなくデータであるため、出張博物館のような形で教育現場への貢献も可能になったのだ。

 さらに春木氏は「当館は国内ではある程度知られていますが、海外での知名度はほぼありません。このアプリが新しい広報ツールとなり、江戸博の知名度アップにつながることを期待しています」と言う。ゲームで見たアイテムの実物を見に行きたいと、再オープン後に江戸博を訪れる人も多いかもしれない。

 収蔵品のデジタル化によって、自分のパソコンやスマートフォンから資料を見ることができたり、ゲーム内で収蔵品に触れられたり、さまざまな鑑賞体験が広がり始めている。

ハイパー江戸博

プラットフォーム:iOS / Android
配信開始日:2022年4月22日(iPhone)、2022年6月30日(Android)
https://hyper.edohaku.jp

東京都江戸東京博物館

住所:東京都墨田区横網1-4-1
TEL:03-3626-9974
※2022年4月1日より2025年度(2025年4月~2026年3月)中(予定)まで、大規模改修工事のため全館休館。
※施設の情報は2022年7月15日現在のものです。
https://www.edo-tokyo-museum.or.jp
取材・文/安倍季実子
写真提供/東京都江戸東京博物館