東京2020大会の熱戦の舞台、国立競技場を知る

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 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)で熱戦が繰り広げられた国立競技場。2025年世界陸上競技選手権大会の舞台となることも決まり、東京の新名所として注目を集めている。
東京2020大会でメインスタジアムとして使用された国立競技場。周囲の自然環境と調和するよう木材を多用したデザインになっている。

アスリート気分を味わえるトラック&フィールド

 2022年41日より、国立競技場の指定エリア内を自由に見学できる「国立競技場スタジアムツアー」が開催されている。現在、国立競技場では、陸上競技の大会やサッカーの試合などが行われているが、ツアーでは普段、一般客が「入れない」「見られない」場所を見学できる。

 ツアーの見学者は外苑門側Eゲートから入場。最初に向かうのは、東京2020大会で陸上競技の舞台となったトラック&フィールドだ。選手が走ったトラックを、実際に歩いたり走ったりできる。このトラックを走ってみると、確かによく弾む。足を着いた瞬間に押し返すような反発があり、スピードの出やすさを実感できるはずだ。

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トラックは、イタリアのモンド社製のゴムを使用しており、トップアスリートも「スピードが出やすい」と高く評価したという。芝生への立ち入りは禁止。

 トラックにはオリンピックマークとパラリンピックマークが残されており、東京2020大会の雰囲気を感じられる。スターティングブロックとハードルが設置された撮影スポットもあり、選手になりきって記念撮影も楽しめる。

 また、トラック&フィールドの一角では「ビクトリーサイン体験」ができる。試合後に勝者がカメラに向かってサインをする光景を見たことはないだろうか。それと同じように、カメラの数メートル手前から走ってきて、カメラレンズにサインをして、最後にポーズをする。撮影した動画は二次元バーコードを読み込んでダウンロードできるので、ツアーの記念としてもおすすめだ。

通常は入ることのできないエリアを見学!

 続いて、フラッシュインタビューゾーンと選手ロッカールームの見学へ。フラッシュインタビューゾーンは、試合後に選手や監督がインタビューを受けるスペース。建築家の隈研吾氏が行燈をイメージしてデザインした照明が印象的で、「ANDONホール」とも呼ばれている。入場前に待機する場所でもあり、選手のロッカールームに直結している。

 ツアーの際には、素材の一部に東日本大震災の復興仮設住宅のアルミ建築廃材を再利用した聖火リレートーチや、再生プラスチックを使用してつくられた東京2020大会の表彰台などが展示される。

 フラッシュインタビューゾーンを抜けた先は、フィールドの周囲を一周する車両通路「リングロード」と、選手が乗る大型バスなどの駐車場になっている。リングロードの一角にあるサインウォールでは、東京2020大会に出場した陸上競技選手が書いたサインやメッセージを見ることができる。

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フラッシュインタビューゾーンに置かれている表彰台は東京2020大会で使用されたもの。実際に登壇して写真を撮ることができる。壁には大会の写真パネルも展示。
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桜の花びらをモチーフにデザインされた、アルミ製の聖火リレートーチ。長さ71センチメートル、重さ1.2キログラム。
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木材を多用した、選手ロッカールーム。チームスポーツで選手の一体感が高まるという楕円形のつくりになっている。
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サインウォールには、競技終了後にアスリートたちが残したサインが約300ある。

 そして最後に向かうのは、4階の展望エリアだ。下層から上層に向かって淡い色へとグラデーションするアースカラーの観客席と、トラック&フィールドを一望できる。国産の木材と鉄骨を組み合わせたハイブリッド構造の大屋根の梁も間近に見られる。大屋根先端のガラス部分にはシースルーの太陽電池が設置されている。

快適に見学できる工夫がたくさん

 国立競技場スタジアムツアーは、国立競技場での大会やイベント開催日などを除く指定日に開催。インターネットでの予約購入が基本で、当日枠が余っている場合のみ窓口で販売する。

 解説員等の同行や引率はなく、各見学スポットに日本語と英語が併記された案内板を設置。案内板の二次元バーコードを読み取ると、日本語または英語の音声案内も聞ける。順路に沿って自分のペースで見学できる。

 写真撮影スポットには、スマートフォン用の撮影台も設置。撮影台を利用することでベストなアングルで撮影できるだけでなく、撮影をほかの人にお願いする必要がないため、スタッフやほかの見学者との会話、接触を避けることもできる。さまざまな人々が快適に過ごせる工夫が施されている。

 スポーツ観戦だけでなく、周辺の景観に調和し、環境に配慮した建築物としても楽しめる国立競技場。スタジアムツアーでは、東京2020大会で実際に使われたトラックや表彰台などを見学でき、大会当時の雰囲気や熱気を追体験できるだろう。

取材・文/今泉愛子
写真提供/独立行政法人日本スポーツ振興センター