MISIAが語る―多彩なアフリカを「知る」ことから始めてみてほしい(Part 2)

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 アフリカの子どもたちの絵画展『MISIA HEART FOR AFRICA』(2022年8月8日~9月30日)に携わった、歌手のMISIA氏。音楽を通して出合ったアフリカはアーティストに何を気付かせたのか。
2012年に訪れたナミビアで人々と交流を深めるMISIA氏。

--MISIAさんがアフリカに関心を抱いたきっかけは、やはり音楽だったそうですね。

 私が影響を受けたソウル・ミュージックのルーツがアフリカにあるので、もともと強い関心を持っていました。また1980年代にヒットしたバンド・エイドの「ドゥ・ゼイ・ノウ・イッツ・クリスマス?」やUSAフォー・アフリカの「ウィ・アー・ザ・ワールド」といったチャリティ・シングルを通してアフリカの貧困問題も知っていました。それらの問題は自分が大人になる頃には解決すると思っていたんですが......。

 でも関心を持って学ぶ中で、アフリカだけでなく世界の貧困問題や紛争問題、そして環境問題もすべてつながっていると考えるようになりました。ただ自分に何ができるのかはわからなくて。そんな風に悩んでいた時にU2のボノさんとお会いし、「僕は何回もアフリカに行っているよ。君も行くといい」とアドバイスを頂いて2007年にケニアを訪れました。

 ではそこで答えを見つけたかというと、余計にわからなくなった部分もあります。優れた文化があり、自然環境が豊かで、音楽も素晴らしくて、なぜこうした問題があるのかわからないほど奥深い地だったからです。

 それでも、一つ見つけたのは「学ぶこと」。教育は命を生きることと、人生を生きることにつながると、スラムにある小学校を訪れて強く感じ、子どもたちの教育サポートをしようと思いました。同時に私たち自身ももっとアフリカについて学ぶ、「学び合う」ことから始めようと。私たちが知っているのはアフリカのほんの一部。しかも飢餓や貧困といった悲しい面が多かったので、素晴らしい部分も多くの人に知ってほしいと感じたのです。

--以来マラウイやマリ、南アフリカなど多数の国に足を運ばれていますね。

 どの国もまったく違っていました。経済や貿易の面で日本とつながりが多いことも知りました。チョコレートやコーヒーは有名ですが、日本のタコ輸入量の約7割はアフリカから入ってきています。ルイボスティーが南アフリカでしか栽培できないことや、十円玉などに使う銅などの鉱物もアフリカから輸入していることを知る人は少ないです。

 2008年にTICAD4(第4回アフリカ開発会議)が横浜で開かれた時、久保田利伸さんと、「アフリカを知ってもらおう、TICADに関心を持ってもらおう」と『TAKE ACTION! 2008 MISIA Africa Benefit Live Yokohama』というライブを行いました。セネガル出身のユッスー・ンドゥールさんも参加してくださって。あの時のユッスーさんの「Music is a language(音楽は言葉)」という言葉は忘れられません。どの国に行く時もこの言葉を胸に抱いています。

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2009年に訪れたマリで。

--MISIAさんがミュージシャンであることは、アフリカの方々との交流に役立っていますか?

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2022年春の『MISIA CANDLE NIGHT LIVE 2022 PEACE OF MIND』には平和への願いが込められていた。「CANDLE NIGHT」は2011年の東日本大震災を機にMISIA氏が2012年より断続的に続けているライブシリーズ。Photo: SANTIN AKI

 はい。アフリカの国々では、音楽とサッカーを好きな方が多いなと実感しています。たとえば、小学校を訪れて子どもたちと歌ったり踊ったりすると、それだけでもコミュニケーションがとれますし、自分の気持ちを話してくれるようになります。歌も教わるんですが、コール&レスポンスのスタイルだとリーダーのメロディを追ってすぐに歌えるわけです。歌を知らなくても、みんなで歌えてしまう魔法の方法です。

 また、ユッスーさんに加えて、同じセネガル出身のパーカッショニストであるドゥドゥ・ンジャエ・ローズさんともコラボさせていただきましたが、現地での彼らへのリスペクトは本当に深いものがあります。アフリカに行った時に、「ユッスーと歌ってたよね?」と街中で声をかけられることもありますよ。

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2013年、セネガルにて。MISIA氏は人々から話を聞くことを大切にしているという。

--アフリカのために何かしたいと考えている方に、どんなことを伝えたいですか?

 やはり重要なのは、アフリカについて知ること。知ることによって、自分に何ができるか、わかっていくと思います。偏見を持たず、既成概念にとらわれずに学ぶこと、さらに身近なこととして考えることができたらなおいいと思います。私が書いた『ハートのレオナ』という絵本を使って大学で講義をしたことがあって、先ほどのタコの話のようなつながりを話すだけで大きな反応がある。「答え」は自分で探し出さないと本当の納得ができないものだと思うので、ぜひ、学んで探してほしいです。

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TICAD7の名誉大使を務めた際にザンビアを訪れたMISIA氏。

--コロナ禍による影響も心配されています。現地から何か聞いていますか?

 私が支援に関わっているケニアのマゴソスクールに状況を問い合わせたら、仕事を失った人が多くて大変だと教えてもらいました。けれど、こうも言われました。「私たちはこれまでも予防薬もなくてワクチンも打てない、消毒薬もきれいな水も手に入らない、そんな中でも感染症と闘い、助け合って生きてきた。今と昔と何が違うの? 変わったのは先進国が感染症と闘う必要が出てきてパニックになっていることだけ。だから先進国の人たちも冷静になって、協力し合って今の状況を解決してほしい」と。

 ハッとさせられました。いろんなものが「ない!」という時期だったのですが、日本には安全な水も石けんもある、医療にもアクセスできる。それにアフリカでは、村々が離れているためにリモート診療を以前から実施していたところもあるそうです。学ぶべきところを学んで、とにかく知恵を出し合って協力して、今を乗り越えることが大事だと。

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2008年、ケニアにて。2022年に開催したアフリカの子どもたちの絵画展『MISIA HEART FOR AFRICA』には、2007年から関係を築いてきたマゴソスクールの子どもたちも参加している。

--アフリカとの関わりにおいて、思い描いていることをお聞かせください。

 アフリカの素晴らしいところ、音楽やアートも含めてもっと世界中に広がってほしいですね。既にアフリカ音楽は世界に、またファッション界でもアフリカ出身の方が活躍しています。日本にもアフリカから素晴らしいものがもっと伝わって、人々の心が豊かになればと願っています。そのお手伝いができたらうれしいし、歌で何かできれば最高ですね。アフリカでもライブをやりたいし、アフリカの人に日本の音楽を知ってほしい。音楽で世界平和を実現できたら素晴らしいと思います。

Part1: MISIAが語る―アフリカの子どもが描いた絵を通して心に触れること

MISIA

m_p_s_risize.jpgPhoto: ©︎Rhythmedia
1998年デビュー。国民的歌手として東京2020オリンピック競技大会開会式で国歌を斉唱。社会貢献活動にも積極的でアフリカで子どもたちの教育支援等を実施。アフリカ開発会議などの国際会議の名誉大使も歴任している。2023年にデビュー25周年を迎え、2022年秋から全国ツアー「25th Anniversary MISIA THE GREAT HOPE」を開催予定。https://www.misia.jp/
取材・構成/新谷洋子
写真提供/一般財団法人mudef