子どもたちが自発的に考え行動!都内小・中学校のSDGsへの取り組み
中央区立月島第二小学校「カンボジアへ文房具を送る活動」
中央区立月島第二小学校では、一校一国運動(*1)としてカンボジアについて学んでおり、使わなくなった文房具を回収してカンボジアに寄付している。SDGsの目標1「貧困をなくそう」、目標4「質の高い教育をみんなに」、目標16「平和と公正をすべての人に」などに貢献しようと考えた取り組みだ。
また、同校では毎年ユニセフ募金活動を行っている。SDGsの学びが浸透していくほど、募金に参加する児童たちの意識にも変化が表れた。「世界の総人口の約26%もの人が基本的な衛生施設(排せつ物を衛生的に管理・処理できる基本的なトイレ)を使えない(出典:日本ユニセフ協会 世界トイレの日プロジェクト)」という事実に衝撃を受け、「一人ひとりの力は小さくても、必ず大きな力になる!」との思いで、募金活動に尽力するようになったという。
*1 オリンピック開催地の学校が応援する国や地域を決め、当該国・地域の文化や言語を学ぶとともに、その国・地域の人々との交流を通して相互理解を深める活動。
さらに、プラスチックごみなどによる海水汚染の現状を知った児童たちは、魚のすみかを守るため、臨海学校で海水浴場の清掃活動を企画・実行。ペットボトルやビニール袋を使うのではなく、マイボトルやエコバッグを持ち歩くなど、海を汚さないための日々の取り組みも重要だと学んだ。
同校の副校長を務める野々村麻奈氏は、「本校では4年生の時からSDGsに関する調べ学習を行っているため、児童から自発的にSDGs活動のアイデアが出てきます」と語る。
多摩市立聖ヶ丘中学校「インドネシアの中学生との国際協働学習」
多摩市立聖ヶ丘中学校では、2020年から2021年まで第2学年(当時)の生徒たちが「アートマイル」を実施。アートマイルとは、世界共通の課題について世界の同世代と学び合う国際協働学習のこと。同校ではインドネシアの中学生と交流を行った。
生徒たちはインドネシアの中学生と協働学習する前に、まずインドネシアの歴史や文化などを学び、理解を深めていったという。その上で、SDGsの目標4「質の高い教育をみんなに」をテーマに設定し、インドネシアの中学生と話し合い、共同で壁画を制作。聖ヶ丘中学校の生徒が壁画の右半分を、インドネシアの中学生が左半分を描き、完成に至った。
ほかにも、1~3学年をクラス単位で縦割りにして、1組、2組、3組とグループごとにSDGsの目標を決めて、それを達成するための取り組みを考えて実行。自分たちで花や野菜を生産し、その売り上げをユニセフに寄付したり、「フェアトレードへの理解と地域社会とのコラボレーション」をテーマに、フェアトレード商品の認知度を上げる活動をしたりした。
同校の指導教諭を務める三浦摩利氏は、「SDGsの学びは総合的な学習の時間だけでなく、道徳や社会などさまざまな時間にも関わり、生徒自身が"考える"ように導いています。そのため自発的なSDGs活動につながっていると思います」と言う。
同校の校長、麻生隆久氏は、「いきなり『SDGs活動をやろう』と言って、形だけの活動では続きません。私たちは生徒たちのハートを普段から耕し、自発的なSDGs活動を促したいのです。それが学校の伝統を築き、国際社会に貢献する人材を育てることになるからです」と話す。
中央区立月島第二小学校と多摩市立聖ヶ丘中学校のSDGsの学習の成果報告は、2022年8月20日に東京国際フォーラムで開催された東京都のイベント「【わかる!今日からできる!】夏のSDGsの集い」で発表されたもの。
2校の発表から、東京都の小・中学校では普段から、授業に限らずあらゆる場面で世界中の人々との交流や協働も取り入れたSDGsの学びが展開されていることがわかるだろう。児童・生徒たちは自ら興味をもって調べ、課題を見つけ、解決のために「自分たちにできること」を考え、それを世界も視野に入れたSDGsへの取り組みにつなげている。
*2 ESD(Education for Sustainable Development)とは「持続可能な開発のための教育」のこと。
写真/殿村誠士